聖職者の楽園、エルクラウン
第103話 罪人で決まり
「さあ、張りきって進もうじゃないか!」
「引き返しませんか?」
引き返しません。
「リスさんがいっぱいなの!食べ物には困らないの!」
「おい!リス共早く散れッ!逃げるんだ!」
うちのパーティーは基本寝起きが良いのか皆が朝からピンピンしている。
少しハクヤが足を捻ったがエルスのスキルで元通りとなり今はエルクラウンに向けて荷物の整理中だ。
「うぅ…本当に行くんですね……」
「決まったことだろ?何か理由があるんだったら話してくれれば――」
「……着けば分かるんじゃないですかね」
何とも奇妙な返しだ。
これ以上問いただしても意味が無いと感じた俺はリュックを持ち上げ、皆が立ったことを確認して歩き出す。
目的地はすぐそこだ。
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「でっけえ教会…」
「こうも大きいと燃やしたくなるね」
えー、始めに寄るのは警察署です。
俺とハクヤが取っ組み合いをする中、イブは目を輝かせて街へと入っていく。
「おい!あんまり走るなよー!」
その横には急に覆面を被り始めたトンデモシスターがいるがもうツッコむ気は無い。
「お、凄え!町の人皆修道服じゃねえか!」
門を抜けると横に見えるのはもちろん教会やその他聖職者らしき人々。
「流石聖職者の楽園と言われるだけあるね」
「エルスおねーちゃんみたいな人がいっぱいなの!」
「よし!テンションが上がってきたところで早速呪いを解呪出来そうな人を……」
辺りを見回してみるもあちらこちらに教会は立っており何処にすればいいのやら…。
「取り敢えず何処か攻めようじゃないか」
攻めんな野蛮人。
「今すぐこの街を出ましょう!」
「…ったく…またかよ。一体何があったらそんな覆面してまで…ほら、特に掲示板に指名手配されてるわけでも――」
近くにあった掲示板を指差し俺はエルスを改めて問い詰めようとし、それを見つけてしまった。
『この顔にピンと来たら聖女アリアスまで』
地獄のような空気が流れる中、俺はボソッと呟く
「……二重指名手配犯」
「……正直に言いますともう一回も二回も変わらないと思いますね」
「目指せ世界一の指名手配犯ってとこだね」
「人気者なの!」
取り敢えずその場から逃げようとしたエルスを捕まえ取り調べを行う。
「話せ」
「私のセリフです。離して下さい」
「犯罪か?」
「犯罪…では無いです…」
「ならどうして指名手配なんか――」
犯罪でなければこんな大事になるはずがないのだが。それに聖女アリアスまでとは?
「ワタルさん達が気になるのも分かりますがこれは私の問題です!どなたかに危害を加えたわけでも罪を犯したわけでもないので気にしないで下さい!」
「そう言われてもな……」
「なら話を変えます。私がそんな問題を起こすような人に見えますか?」
見えるな。これもう罪人で決まりだろ。
「ま、待ってください!そ、そうです!呪いの王冠解呪がまだじゃないですか!それが終わったら話します!」
「……本当か?」
「はい!約束します!」
ふむ、やや誤魔化された気もするが言質は取った。俺も何も本気でエルスが犯罪をするとは思ってないからな。少し事情が気になりはする。
「ま、そういうことなら先に呪いの王冠の解呪から行くか。取り敢えず一番近いそこから入ってみようぜ?」
俺はエルス達を引き連れ一番近くに立っていた教会へと足を運ぶ。
中には数名のシスターさんがおり、奥には一人の神父様。
「どうされました?」
入口付近にいたシスターさんが笑顔を浮かべこちらへ近付いてきた。
「あの…この王冠のことなんですけど…」
「これは……呪い…ですね。解呪をご希望でしょうか?」
「はい!出来ますか?」
「はい、ではこちらへ――え?」
向きを変え、歩き出そうとしたシスターさんが突然立ち止まった。奥には手招きをしている神父様が…
「……何かあったのか?」
「勇者である僕のオーラを感じ取りそれ相応をおもてなしをしてくれるに違いないね」
こいつも解呪出来たりしねえかな。
結局大した時間は掛からず、シスターさんは小走りで戻ってくると少し困ったような顔で言った。
「すみません…、この教会ではその解呪は出来なくて……。代わりと言ってはなんですが本部の方へ招待状がありますのでこちらを」
渡されたのは金色の帯が付いた真っ白な封筒。
「え、さっきは――」
「またのお越しを」
半ば強引に追い出された俺達は呆気にとられその場に立ち尽くす。
「本部…?俺達何かしたか?」
「怒られる前提もどうかと思うがね。まあ、いいさ。一度聖女様とやらにも会いたかったところさ」
「あのおっきい教会なの?」
「そうだな、本部って言うぐらいだからデカいんだろうとは思ってたが城みたいだな」
まるで複数の教会が連なっているかのような本部とやらは街の中心にある。あんな場所に招待された理由は分からないが行ってみるしかない。
「わ、私は行きませんよ!二度と!」
「はいはいそうだな、楽しみだな」
それから約数分後、本部の警備員が見た光景は三人がかりでエルスを運ぶ俺達だった。
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