第84話 ゲームから排除
「……女体の夢」
「うるせえッ!さっさと部屋に帰れド変態シスターがッ!」
食後、ふざけた事を耳元で囁いてきたエルスと格闘しているとイブがもじもじと袖を引っ張って来た。
「ん…お部屋で遊ぶの」
「遊ぶ?……まあ、明日は早いしちょっとだけならいいぞ」
たまには交流も大切だ。先程まで眠っていた分、イブは今元気が有り余っているだろうからな。遊んで疲れたら寝てくれるはずだ。
「よし、風呂入ったら俺達の部屋に集合な」
「了解しました!イブちゃんお風呂に入れたらワタルさん達の部屋に突入しますね!」
「突撃!隣の無能冒険者だね」
お前だけ窓から捨ててやるからな。
この宿は決して高いわけでは無いので各部屋に風呂など付いていない。共用の男女別大浴場だけだ。
俺達は約束を交わすとすぐに別々の大浴場へと入って行った。
✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦
風呂から上がり俺とハクヤは部屋でのんびりと暫しの休憩をしていた。
「……遅えな」
「落ち着きが無いね。僕はあと何日、何ヶ月でも余裕で待てるさ」
日にち跨いだらちょっとは焦れよ。
「そうだハクヤ、今度でいいから中級魔法教えてくれよ。そろそろ俺も初級魔法は卒業で良いんじゃねえか?」
ギルドカードを見てみれば魔力の数値は以前見た時の205から少し上がって208となっている。
ハクヤ達といると自分の弱さが際立つからな、多分ギジンカして美少――っと…開放の杖イリステミスを手に入れたとは言えその差は歴然だ。
「俺のエレメンタルドライブは代償がでかいからな。ちゃんとした攻撃魔法も欲しいところなんだよ」
「ふむ…。それなら構わないさ。空いた時間にでも僕の完璧な指導を受けてくれたまえ」
「おう、よろしくな」
約束を取り付けたところで扉がコンコンと鳴った。
「何でもこなせる万能、有能、完璧な美少女シスターです」
開けたくねえな。
俺はハクヤと顔を合わせると互いに頷き少しの間無視を決め込んで見る。
「……ワタルさ〜ん、いますよね?あれ?もしかしていないんですか?あと5秒以内に開けないと泣きながらここで許して下さいと連呼し続けますけど」
蹴り破る勢いで扉を開けた俺は誘拐の如くエルスとイブを中へ引き入れるのだった。
さて、集まったものの何をするかは決めていなかった。荷物も殆ど無いため物を使う事も出来そうにない。
「よし、各々やりたい事言ってみてくれ」
「鬼ごっこなの!」
外じゃねえ。
「拷問ごっことか」
『ごっこ』付ければ許されると思うなよ。
「そんな君達の為にこんなものがある」
自分の番が回って来たハクヤはここぞとばかりに笑みを浮かべ、自身のアイテムボックスへと手を突っ込む。そして、
「人生ゲーム、これをやってみないか?」
そう言って何か大きなものを広げ始めた。
「なんだよ人生ゲームって?」
「この世界にも『すごろく』はあるだろう?その進化系だよ。いつか使うと思って以前知り合った商人に作っておいて貰ったのさ」
すごろくと言えば初代勇者が伝えたと言われるサイコロを使ったゲームだ。以前学校に通っていた頃にやったことはある。
「あの……私、すごろく?もやったことないです」
「イブもないの!」
「サイコロ振って出た数字の数進んでいくだけの簡単なゲームだからな。やってくうちに分かるだろ」
「そうだね。人生ゲームはすごろくをしながらお金を集めるゲームだと思ってくれて構わないよ。まずは始めるのが吉さ」
こうして始まった人生ゲーム。お手本と共にハクヤからのスタートだ。
真ん中にあるルーレットに手を掛け、勢い良く回す。
「……5だね」
数えながら進んでいくとあるマスへ辿り着いた。
「冒険者として依頼をこなす、2000ギルを獲得……と」
なるほど、本当に止まったマスによってイベントがあるのはすごろくと変わらず、そこにお金の存在が加わっているだけだな。
「なら次は俺だな、それ!…えっと2だな。内容は…無能な護衛を引き当てる500ギルの損失」
身に覚えがありすぎて辛い。
「ふふ、ワタルさんは当たりの護衛を引いていて良かったですね!」
もうこれ、高度な煽りだろ。
「次はイブなの!んーの!」
「よしよし…4だな。なになに…ダンジョンでお宝を発見!ラッキーカードを引く。何だこれ?」
「これだね、気張って引くといいよ」
ハクヤから渡された箱の中にはカードが何枚か入っているのかカラカラと音がする。
そしてイブが引いたのは魔法書の書かれたカード。
「お、追放の書だってよ。好きなプレイヤーをこのゲームから排除する……」
このゲームもう終わりだよ。
この後、俺がマイナスマスにしか止まらなかったり、エルスがスタートへ戻るをひたすら繰り返すと言う地獄が続き、挙句の果てにゲームから排除されたハクヤが窓から投げ捨てゲームは終了した。
✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦★✦
翌朝、俺達は朝食を終え、ギルド経由でダンジョンへと向かっていた。
「……忘れ物無しと」
歩きながら確認する俺を見て注意するエルスと手を繋ごうと周りをぴょんぴょんしているイブ。
(罠の……位置…は……知らせる…よ…)
雌豚も元気そうだ。
そんな順調な中、ハクヤが何かに気付いたのかギルドの前を指差す。
「今日は何故か人が多くないかい?」
「そうだな…。妙に多いような……」
ギルドの前には人だかりが出来ており、何かチラシのようなものが宙を舞っている。
そんな様子をぽつんと見ていると足元にそのチラシが飛んで巻き付いてくる。
「何だよ…、えっと―大発見、ダンジョンに見つかった隠し部屋!?おい、これっ!」
間違い無い。俺達が昨日見つけた隠し部屋の位置を記したチラシだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます