外伝 アカリ②
IGOのベータテストでPKの楽しみを見出したのだが、待望の製品版ではPKは廃止されていた。
本当にクソ運営だ……。
運営に何度も質問と要望を送った結果、将来的にPKシステムは実装されるとの回答を得て、安堵する。
私は、PKシステムの解放を夢見てIGOの攻略を進めた。
IGOのサービス開始からリアル時間で2年目――IGOの中では6年目となる節目の年。
第五一階層への道が解放。同時にレベルキャップも上がり、最上級クラスが解放。
そして、待望のPKシステムも解放された。
PK――言い替えるならPvPは、AIでコントロールされたモンスターとの戦闘で味わえない、スリルと快感を与えてくれた。
最初は肩慣らしに初心者や格下のプレイヤーをPKしていたが、すぐに修正が入りPKは第五一階層以降のフィールドでしか出来なくなった。
相変わらずクソな運営だ。
PKを続ける内に、私と同じプレイスタイルのプレイヤーたちと知り合い、この世界で初めて心から楽しく話せる仲間たちができた。
今までは私は1人だったので、PKの対象はソロで稼いでるプレイヤーだったが、仲間が出来たことでパーティーを組んでいるプレイヤーを襲うことも可能になった。
時には返り討ちに遭うこともあった。命からがらに逃げ出したこともあった。
敗けることは腸が煮えくり返るほど悔しかったが、それも含めて仲間たちと共に過ごす日々は楽しかった。
しかし、そんな私の楽しいIGOライフを壊す存在が現れた。
少数精鋭のプロゲーマーたちによる
奴らは徒党を組んで、何度も……何度も……何度も……!! しつこいくらいに私たちを付け狙った。
「同意なきPvP――PKは金輪際やめろ」
【天下布武】の団長――ソラがゴミでも見るような冷たい視線を私に浴びせる。
「私は運営の決めたルールの中で遊んでいるだけだ! あなたにとやかく言われる筋合いはない!」
私はかつて匿名掲示板で浴びせられた言葉で反論した。
「つまり、PKをやめる気はないと?」
「プレイヤーのプレイスタイルを強要することは誰にも許されないはずだ!」
「なるほど。ならば、俺たちはPKKというプレイスタイルでお前たちを見かけるたびに、何度でもPKすることにしよう」
ソラはそう告げると、私の返事を聞くことなく炎を纏った大剣で私を両断した。
……なにだ。何なのだ……。何様なのだ……!!
大神殿で復活した私は激情した。
PKした動画を配信サイトにアップすれば、かなりの閲覧数が付き、閲覧数に見合った報酬を得られる。
今の私は無職だが、それだけで生活できるレベルだった。
PKは私の生きがいであると同時に生活を支える――ある意味仕事なのだ。
私はデスペナルティを消す――『輪廻の鳳凰』を課金にて購入。
いつか……絶対にあいつに復讐してやる……。
デスペナルティを消した私は、あの冷たい視線で見下したソラに復讐を誓うのだが、
「お? ステータスが下がってない。『輪廻の鳳凰』を課金したのか。これで、心置きなくPKできる」
フィールドに出ると再び、ソラたち――【天下布武】は有言実行と言わんばかりに、私たちをPKした。
「あぁぁぁぁああ!!」
再び大神殿送りにされた私は雄叫びを上げる。
課金してデスペナルティの消すのは容易だが、『輪廻の鳳凰』は安いアイテムではない。
私は共に大神殿で復活した仲間と共に、作戦を練ることにした。
敗因はなに……?
【天下布武】の面々は、プロゲーマー集団だ。
私たちほど対人に慣れてはいないが、プレイヤースキルはかなり高く感じた。
「一対一なら勝てるのか?」
私が独り言を呟くと、
「どうだろうな……。さっき一対一になった局面もあったが、かなり厳しいな」
「確かに化け物みたいに強かったが……それより問題なのは数だ」
「だな。タイマンなら勝てないまでも逃げれた」
「ちっくしょー! あいつら有名人の癖に徒党を組むとかはずかしくないのかよ!」
共にPKされた仲間たちが文句を吐く。
「あとよぉ……【天下布武】のクソ共もムカつくけど、俺はそれ以上に周りにいた取り巻きの雑魚どもがムカついたぜ!」
「おうよ! おうよ! てめーらまで強くなった気でいるんじゃねーっつーの!」
「アカリ、どうする? しばらくPKは控えるか?」
「そうだな。でも、このまま引き下がるのはシャクに触る。私たちも仲間を集めて旅団を作らないか?」
「仲間って……俺たちPK専門のプレイヤーのことか?」
「そうだ」
「んー、PK専門旅団か。悪くねーな」
「だな! 数で優れば、あんな失態はおかさねーよ!」
こうして、私は志を共にした仲間たちを集め旅団――【黒天】を結成した。
その後、しばらく鳴りを潜め……ほとぼりが冷めたらPKを再開。しかし、奴らも『クリーンアップキャンペーン』なんてふざけた名目で大規模なPKKを定期的に行った。
確実にPKを成功させるためには、プレイヤースキルのみならず、レベルや装備もアップグレードする必要がある。
そして、装備をアップグレードするためには上の階層を目指す必要がある。
こうして、私たち【黒天】はPKをするためにIGOの攻略を進める異質な旅団となったのであった。
◇
IGOがサービスを開始してから5年目。
私は定期的な『クリーンアップキャンペーン』にストレスを抱えながらも、気の合う仲間たちと共に楽しくIGOライフを満喫していた。
「ったく、あの脳筋偽善野郎ムカつくぜ!」
「お、どうした?」
「さっき脳筋偽善野郎にPKされた」
「脳筋偽善野郎って【黄昏】のゼノンか?」
【黄昏】は【天下布武】以上に『クリーンアップキャンペーン』に力を入れてる旅団だ。
何でも『クリーンアップキャンペーン』は閲覧数が稼げた金になるらしい。
つまり、私たちを出汁に金を稼いでいるということだ。
そういう意味では、【天下布武】以上にたちが悪いクソ旅団だ。
「おうよ! 【天下布武】のクソ野郎どももムカつくけど、ムカつき度で言えば、【黄昏】の方が上だな!! 数で押し切った癖して、あの脳筋偽善野郎は、『雑魚が』とか言いやがって!」
「ハッ! でも実際にタイマン張っても、お前じゃゼノンに勝てねーだろ?」
「そうかも知れねーけど、ムカつくだろ!」
王城の町外れにある旅団ホームで団員たちが愚痴をこぼしている。
「アカリ! あいつらどうにかできねーのかよ!」
ゼノンにPKされた団員が私に泣きついてくる。
「そうだな。正攻法でいっても厳しいから……そろそろ搦手でも使ってみようか」
「搦手……? 何をするんだ?」
「んー、上手く行けば楽しくなるだろうよ」
このまま自由気ままにPKを謳歌しながら、攻略を進める生活も悪くはないけど……やられっぱなしは癪に障る。
特に【天下布武】と【黄昏】には煮え湯を飲まされ続けていた。
勝てば官軍負ければ賊軍。
そろそろ反撃の準備を始めよう。
――――――――――――――――――――――
致命的なミス……
アカリは男性キャラなのに……何でか女性だと思って執筆していた……
口調をすべて修正しました(8/20 13:33)
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