第四五階層攻略②
「パーティー編成だが、役割を考慮して……ヒーラーのヒナタとイセを別にするのは確定として、」
「イセたんと呼んで欲しいですぞ」
「次にタンクだが、ヒロアキは確定として……カナメだと少し不安が残るから、サブタンクとして俺がペアを組むとするか」
「「「――!?」」」
俺の言葉にクロを除く全員が驚愕する。
「不安って……私だって結構成長したんだぜ!」
「違いますわ! 反応するのはそこじゃないですわ!」
「リクがタンク……なんてできるの?」
「ヘイトスキルはあるから、いけるだろ」
「いやいや、そうじゃなくてリクってペラッペラの紙装甲でしょ?」
「ペラッペラの紙装甲って……まぁ事実だが……」
「うぉぉぉおおお! いけませぬぞ! リク殿がタンクは危険ですぞ!! 私が……! 私がリク殿をお守りしますぞ!!」
「傷付くリクたんを拙僧が癒やして芽生えるストーリー……なるほど、理解しましたぞ!」
「あの……大丈夫なのでしょうか?」
一部の変態を除き、それぞれが様々な思惑で俺がタンクをすることを否定する。
「
俺は装備している『水精霊の軽鎧』を指して、答える。
「あ! そういえば、なんでリクっちたちはお揃いの格好なの?」
「ぐぬぬ……ついにそこに触れましたか……羨ましくは……決して羨ましくは……ない……ですぞ……グハッ」
「ハッハッハッ! イセたん、どうしたのですかな? この装備こそが我々の……私とリク殿の絆の証ですぞ!」
戯れるバカ二人は放置して、カナメの質問に答えることにした。
「時間があったから、クロにお願いして火属性対策の装備一式を作ってもらったんだよ」
「えー! いいなー! いいなー!」
「にゃはは。カナメさんも材料を用意してくれれば、
「材料ってなにー?」
「銀鉱石とウンディーネのコアと魔粉にゃ。一式揃えるなら、それぞれ100もあれば、余裕にゃ。強化もするなら――」
「無理! 無理! そんなにないよー!」
「残念にゃ」
クロは悪びれることなく答える。
固定メンバーや、一部の旅団メンバーのようにアイテムを共有できる家族のような仲間ならまだしも、フレンドに対してはこの対応は普通だ。
下手に甘やかしても、互いのためにならない。
「と言うわけで、道中の火蜥蜴の攻撃はほとんど無力化できるから、俺でもタンクは務まるってことだ」
「なるほど。固定メンバーに凄腕の鍛冶職人がいるのは羨ましいなぁ……」
「にゃはは……その代わり戦闘で足を引っ張ってしまうにゃ」
「えぇー! そんなことないよ! クロちゃんは十分に戦力になってるよー!」
「うんうん。クロちゃんは戦闘でも頼りになってますよー」
「メイねぇ、ヒナねぇ、ありがとにゃ」
クロは謙遜しているが、メイやヒナタの言うとおり、実際には戦闘でもかなり役立っている。生産職故に、攻撃力は乏しいが……ある時にはサブタンク、ある時には倒しきれなかった敵のトドメ……と、そこは抜群の立ち回りでカバーしていた。
「そろそろチーム分けをするが、希望がないようなら俺が決めてもいいか?」
「フッ……拙僧は実績がある故、リクたんにお任せ致す」
「ぐぬぬ……今回に限って言えばリク殿もタンク……嫌な未来しか見えませぬな……」
「リクに任せるよー」
「お任せします」
「お任せしますわ」
「とりあえず、私はリクっちとニコイチなんだよな?」
「お任せするにゃ」
これ以上チーム分けで時間が取られるのは避けたいので、俺が決めることにした。
「左の雄火龍ルートは俺、カナメ、メイ、ヒナタ」
「――な!?」
「お! メイっちにヒナっちか!」
「おぉ……意外な組み合わせ!?」
「はい!」
「右の雌火龍ルートはヒロ、クロ、アケミ、イセ」
「承知しましたぞ!」
「了解にゃ!」
「カナメと別行動なのはいつ以来かしら? 了解ですわ」
「な、何故……」
約1名を除いて、今回のチーム分けに異論はないようだ。
このまま進んでもいいが、絶望感に包まれているイセをこのまま放置するのはさすがに気が引ける。
「今回のチーム分けの理由だが、タンクのヒロが倒されることはないと思う。従って回復力に最も優れるヒナタはこちらのチームに編成した。そうなると、自動的にもう一人のヒーラーであるイセがそちらのチームになる。風属性の俺と火属性のカナメでは火力に不安が残るので、最も火力に優れるメイをこちらのチームに編成。すると、自然とアケミとクロがそっちのチームになった……と言う訳だ」
推奨レベルは超えているが、油断は禁物。
火属性対策をしたヒロアキが落ちることは絶対にないという信頼から、今回のチーム分けを決断した。
属性を考慮すれば、火力も含めて良いバランスになったと思う。
「つまり、試練ですな!」
つまりの意味も、試練の意味も不明だが……
「そうなるな」
俺はとりあえず同意した。
「離れ離れになるのはかなり先にゃ! まずはそこまで進んでみるにゃ!」
「だな」
俺たちは第四五階層の攻略を開始したのであった。
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