火蜥蜴狩り①
「ここの敵はどんな敵なの?」
「
「ちなみに、ここの
「火龍の眷属?」
「
「色違いモンスターってこと?」
「身も蓋もない言い方だとそうなるにゃ」
「ここのモンスターは相克関係にある風属性に強いのは勿論だが、火属性の耐性も高いから注意な……って、ここのメンバーに火属性は関係ないか」
狩りを行う前に、クロと二人で恒例となったレクチャーを始めた。
「んー……『ウンディーネのコア』はいくつくらいあるにゃ?」
『ウンディーネのコア』とは、第四四階層に生息するモンスターであるウンディーネがドロップする素材だ。
「俺は18個だな」
「うちは21個かな」
「私は17個です」
「19個ですな」
「にゃるほど。リクにぃ、提案にゃ」
全員が数を申告すると、腕を組んだクロが口を開いた。
「なんだ?」
「今回レベル上げができる期間は8日間もあるにゃ」
「そうだな」
「最初の一日を第四四階層のウンディーネ狩りにして、水属性の装備を整えてから、火蜥蜴狩りをした方が効率は良くなると思うにゃ」
「一理あるな」
火蜥蜴と竜人は風属性と火属性に高い耐性を持っているが、反面水属性に対しては極めて弱かった。一日犠牲にしても、水属性の装備品を揃えたほうが8日間トータルで考えれば、得られる経験値は相当多くなるだろう。
「当然、制作費は無料だから安心して欲しいにゃ!」
「少しは多めに取ってもいいんだぞ?」
「にゃはは。このメンバーで一番お金を持ってるのはボクにゃ。リクにぃはともかく、ヒナねぇたちからはお金は取れないにゃ」
「必要経費は出しますからね!」
「うんうん! そういう約束だもんね!」
俺たちの装備品はすべてクロが作成したモノか、ドロップした後クロが格安で強化してくれたモノしかなかった。宿代は基地があるし、嗜好品も買っていないので、かなり裕福だった。
とはいえ、金策手段があるクロに総資産で勝てる道理はなく、結局クロの厚意に甘えることになる。
クロと出会えたことは本当に大きかったのだ。
「んじゃ、クロの厚意に甘えてウンディーネ狩りをするか!」
「ボクの鍛冶熟練度も稼げるからウィンウィンにゃ!」
こうして俺たちは第四四階層に戻り、
◆
12時間後。
クロの指定する数の素材を集めることに成功。水属性の装備品一式を作成して貰った。
「わぁ! お揃いだね!」
「少し恥ずかしい気もしますが、嬉しいですね」
「感無量ですな」
「重装備、軽装備、ローブと形式は違うが、同じシリーズだからデザインは似通ってるな」
「最低限の強化もしたから、これで第四五階層は怖くないにゃ」
水をモチーフにデザインされた水精霊シリーズを身に着けた仲間たちがはしゃいでいる。
「休息を取ったら第四五階層に向かうか」
「「「おー!」」」
この日はタウンの宿屋で疲れた身体をじっくりと癒やすことにした。
翌日。
転移装置を使って第四五階層に到着。
万全の準備を整え、火蜥蜴狩りを開始した。
ところどころから燃えたぎる溶岩が流れ出るゴツゴツとした岩場を進むと、炎の鱗に覆われた全長3メートルを超える巨大な大蜥蜴――
遭遇した火蜥蜴の数は、6匹。
ファーストコンタクトからこちらの数を上回るとは、さすがは小レイド用の階層といったところだ。
「爪による攻撃だけ気を付けろ! それ以外の攻撃は大したことない!」
対峙した火蜥蜴が口を大きく開ける。
本来、火蜥蜴の最も厄介にして最大の攻撃は大きく開かれた口から放たれるファイヤーブレスだが……、
「む? 熱くないですな」
水精霊シリーズの重装備で固めたヒロアキはほぼノーダメージだった。
「にゃはは。改造で炎耐性を強化してるにゃ!」
「少し物足りないですな」
「爪による攻撃は普通に物理攻撃だから、油断はするなよ」
「ハッハッハッ! 任されよ」
ヒロアキは喜び勇んで爪の射程圏内となる火蜥蜴の中心に向かう。
「さてと、うちも頑張ろうかな♪ ――《パワーシュート》!」
メイは水属性最強の投擲武器――蛇王戦輪を投擲。
俺も久しぶりに蛇王の短剣を手にし、ヒロアキに群がる火蜥蜴へと疾駆。
――《バックスタブ》!
火蜥蜴はヒロアキに夢中だから、背後は取りたい放題なのだが……、
硬いな……。
水属性の武器によるプラス補正があるとは言え、燃え盛る鱗を数枚剥がすのがやっとだ。
苦戦する俺に対して、メイの放った蛇王戦輪は次々と火蜥蜴の命を刈り取っていく。
火力が低いの知っていたし、属性も不利なのは承知していたが……今回ばかりは本当に戦力外になりそうだ。
メイの半分以下の殲滅速度に俺は苦笑を漏らすのであった。
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