誘い

 ハクとカゲロウを従魔として迎えてから3日後。


 俺たちは経験値を稼ぎながら、ゆっくりと上を目指し進んでいた。


「ハク、少し成長しましたかな?」

「従魔の成長は早いからな」

「親戚の家の猫もあっという間に大きくなりましたよー」

「ハクは猫じゃないけどな」

「ヒロにぃ! ハクちゃんはあっという間に成長するにゃ! 成長の軌跡をたくさん収めるのは親の責務にゃ!」

「むむ? 了解ですぞ!」


 クロはコンソールを操作し、ハクを次々とスクリーンショットに収める。


「こっちの世界に遮断されて一番不都合なのはスクリーンショットを印刷できないことにゃ」

「一番って……もっとたくさんあるだろ……」


 コンソールを操作すれば、撮影したスクリーンショットを見直すことはできたが、印刷することまではできなかった。


「うちもカゲロウの成長を……んん? メッセージだ」


 メイもクロに倣ってカゲロウのスクリーンショットを取ろうとするが、メッセージを受信したようだ。


「リク」

「どうした?」

「カナメっちからで一緒に第四五階層に到着したら合流しない? って誘いだけど、どうする?」

「第四五階層もスイッチダンジョンだったな。俺は問題ないが、みんなは?」

「問題ないにゃ」

「私もオッケーです」

「む? そうなると、イセたんも呼んだほうがいいですかな?」

「第四五階層は8人用だから、イセが空いてるなら呼ぼうか」

「承知。聞いてみますぞ」


 しばらく待つと、イセから二つ返事で承諾との返信が届いた。


「こっちが第四五階層に到達するのは最短で明後日だが、カナメたちはどんな感じだ?」

「んーっと、カナメっちたちは今第四三階層に着いたばっかりみたいだよ」

「四三階層か……」


 こちらは第四四階層を進行中だ。俺は自分のステータスを確認する。


 トリックスターの熟練度は8か……。


 緊急クエストを経て、レベル、熟練度共に大幅に成長したが、カンストには至らなかった。


「10日後に第四五階層の入口で待ち合わせはどうだ?」

「10日後? もうちょっと早く到着すると思うよ?」

「焦らせても悪いだろ」

「なるほど……で、本音は?」

「第四五階層へ挑む前にトリックスターの熟練度をカンストさせたいな……と」


 メイは俺の性格を掴んできているようだ。未だ、ソラは様付けなのに……リクの扱いは酷くないか?


「私は別にいいのですが……リクさんとクロちゃんはいいのですか?」


 ヒナタは目標――第五一階層を目前にスローペースとなっていることを不安に思ったようだ。


「ボクは構わないにゃ。一日でも早く到達したいって想いはあるけど、そもそもリクにぃに拾って貰わなかったら、もっと遅かったにゃ。それに、今の旅も楽しいにゃ」

「俺もクロと同じだが……急いでいないわけではないぞ? 急がば回れと言うだろ? 第五一階層に到達する前にレベルをカンストさせる必要があるからな」

「あ! 第二〇階層と同じ理由?」

「正解。上級職で第五一階層に到達しても、まともに敵は倒せない。第五一階層への到達と同時に最上級職へクラスアップする必要があるからな」


 【天下布武】のメンバーと合流できれば……パワーレベリングをしてくれるだろうが……そんなかっこ悪いことはできない。


「了解! うちも頑張ってレベル上げに励むよ!」

「私も頑張ります!」

「私も頑張りますぞ!」

「よし! その意気だ! 第四五階層に到着したらレベル上げに励むぞ!」

「「「おー!」」」


 第四五階層へ向けて再び馬車を走らせるのであった。



  ◆



 2日後。

 第四五階層に到達した。


「とーちゃく!」

「カナメさんたちとの約束の日まで後8日間ですね。どこで稼ぐのですか?」


 メイは両手を広げ達成感を味わっていると、ヒナタが俺に問いかけてきた。


「ココ」

「ココ……と、言いますとこの階層ですか?」

「一番稼ぎがいいからな」

「しかし、この階層――目の前のダンジョンはスイッチダンジョンなのでは?」

「途中から2組に別れるけど、途中までは2組――8人の小レイドパーティーを組んで攻略するんだよ」

「小レイドパーティーですか?」

「簡単に言うと、8人パーティー前提の数で敵が襲ってくるから……狩りの効率はかなりいいんだよ」

「そ、それは……大丈夫なのでしょうか?」

「緊急クエストのお陰で推奨レベルも超えているから、何とかなるだろ。一つ懸念材料があるとすれば――ここの敵って全部火属性なんだよな」

「火属性と言うことは……風属性に強く、水属性に弱い?」

「正解! って訳で、唯一の水属性――ヒナタ! 期待してるぞ! 俺は残念ながら戦力外だ」

「わわわっ! む、無理ですー! 私はそもそも攻撃手段がー!?」


 慌てるヒナタを見て、俺は笑いながら水属性の武器を用意するのであった。

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