新たな従魔②

 ヒロアキがアイテムインベントリーから取り出した淡く輝く卵に全員が注目。そして、淡い光が収束すると、卵の殻にヒビが生じ――一匹の従魔が産まれた。


「にゃーぉ」


 白い毛皮に包まれた、可愛らしい魔獣が産声をあげる。


「え? え? ウソ! めっちゃカワイイー!」

「カワイイ猫ちゃんですね。はじめまして、ヒナタと言います」

「これが……我が子……私とリク殿の熱き絆の結晶……」

「いや、俺は関係ないだろ……」

「おぉ! 白虎にゃ! ヒロにぃ、おめでとうにゃ! 当たり従魔にゃ!」


 産まれたばかりの従魔――白虎の可愛さにメイとヒナタはメロメロだ。


「白虎……? 白猫じゃないの?」

「虎ですか……?」

「四聖シリーズの当たり従魔――白虎にゃ!」

「ユニークではないが、出現率はかなり低く、マイのカイザーペガサスと同じ大当たり枠だな」


 四聖シリーズは2年ほど前に実装された従魔だ。IGOは後発のキャラクターが強い……と言う理不尽な仕様ではないので、安心して育てられる。


「四聖シリーズ?」

「力の白虎、耐久の玄武、魔力の朱雀、万能の青龍……の肩書で実装されたシリーズにゃ」

「万能……? 敏捷の肩書はないの?」

「当時は……というか今もだけど、敏捷――AGIは不遇の代名詞にゃ。その辺を考慮して、そうなったという説が有力にゃ」

「まぁ四聖シリーズはすべてが万能だけどな」

「そうなの?」

「四聖シリーズは、すべてが戦闘○、騎乗○、牽引○と使い勝手は最高だからな」

「ユリちゃんと一緒ですね!」

「ユリコーンと違って、ぶっ飛んだ個性はないけどな」

「ユリリ……!」

「ハッハッハ。いてーよ……馬刺しにすんぞ?」

「ここまで来るとリクとユリちゃんって実は仲良しなんじゃない?」

「は? あり得ないな!」

「ユリリィィィィィン!」


 白虎をいち早く育成して、この駄馬はずっと帰還モードにしようか……。


「騎乗できるとなると、は大きく成長するのですな」

「ハク?」

せがれの名前ですな。――!? リク殿はやはり、の方が良かったですかな?」

「リキ……?」

「リク殿の『リ』と、ヒロアキの語尾『キ』を合わせて――」

「却下! ハク……最高の名前じゃないか」

「やはりそう思いますか、私もこの子を一目見た瞬間にその名前が浮かびましたな」

「まぁ、白虎は超当たり従魔だ。大切に育てろよ」

「――!? リク殿! 不肖ヒロアキ!! 初めて主君であるリク殿に異論を唱えることをお許し下さい!!」

「お、おう……」


 突然激高するヒロアキに俺は後退りする。


「『大切に育てろよ』ではございませぬ!! 『大切に育てような』と訂正願います!!」

「いや……白虎は――」

「ハクです!」

「は、ハクはヒロの従魔だろ……」

「腹を痛めて産んだのは私かも知れませぬがっ!」


 いや、腹は痛めてないだろ……。


「我々は仲間――否! 家族です! ならば、育児放棄をするでなく! 共に育てようと言うのが家長であるリク殿の務めではございませぬか!」


 ……。


 俺はヒロアキの言葉を何度も頭の中で理解しようと試みる。


 俺たちは仲間――○。


 俺たちは家族……プレイヤーの中には旅団或いは長年連れ添った固定メンバーを家族と呼ぶ者もいる――△。


 ここままでは、問題ない。


 その後の台詞が問題だな。


「なるほど。こんな世界だ……俺たちは家族のような絆で結ばれた仲間というのは受け入れ、ハクの育成には協力は惜しまない。しかし、ハクの所有権は――ヒロにある。よって、もう一度言おう。大切に育てろよ」

「つ、伝わらぬ……我が想い……」


 地に膝をついて崩れ落ちるヒロアキに、ハクは拙い歩みで近寄り……顔をぺろぺろと舐めた。


「ハク! ハクゥゥゥウウ! こ、これが父性……! お主は……お主だけは……お父さんのすべてを賭して立派に育てますぞぉぉおお!」


 ヒロアキはハクを抱きしめ号泣するのであった。


「さてと、大切な家族――メイが待っているぞ」

「むむ…………見苦しき姿……申し訳ございませぬ!」

「大丈夫だよ! ヒロからみたら、ハクは大切な子供だもんね! 次はうちの子供に期待してもらおうかな♪」


 俺たちは狩りを再開するのであった。



  ◆



 狩りを再開してから15分。


 思ったよりも早い時間でメイの卵に異変が生じた。


「わわわっ! 産まれる! うちの子供も産まれるよー!」


 ヒロアキに感化されたのか、メイも従魔を子供として認識する。


 メイがアイテムインベントリーから取り出した淡く輝く卵に全員が注目。そして、淡い光が収束すると、卵の殻にヒビが生じ――一匹の従魔が産まれた。


「キィ! キィ!」


 小さな黒い翼をバタバタと動かしながら産声をあげる。


「こ、コウモリ……?」

「これは……ひょっとして……ひょっとするのでしょうか……」


 産まれたての従魔を見たメイは首を傾げ、ヒナタはハズレと思ったのか……狼狽する。


「んー……バット系の従魔の可能性もあるが……」


 蝙蝠バット系の従魔であれば、正直ハズレなのだが……MVPの報酬で蝙蝠バット系が産まれるのは考えづらい……。


 と、なるとコイツの正体は――


「メイねぇ、その子の種族はなんて書いてあるのにゃ?」

「んっと……――!? きゅ、吸血鬼(幼体)って書いてあるよ!!」

「多分……大当たりにゃ」

「そうだな、大当たりだな」


 俺とクロは複雑な表情を浮かべるのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――

(あとがき)


いつもお読み頂きありがとうございます!


という訳で、乱数の女神が選んだ従魔は1と2で白虎と、5と3で吸血鬼でしたー! (最初の一振りが1だったときは……ゴブリン来るのか……と震えましたw)


あと、お気付きとは思いますが……本作のタイトルを変更しました!!


タイトルは連載当初からずーっと変更したいと、悩んでいました。しかし、素敵なタイトルが思い付かず……

(と、あとがきにこれ以上書くのはしつこいですね……あとで近況ノートをご覧下さい)


タイトルは変わりましたが……今後も『無限世界のトップランカー〜気分転換にセカンドキャラを作ったらゲームの世界に閉じ込められました〜』をよろしくお願いします!!

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