緊急クエスト(S2)一日目①
※※アイリス視点※※
「アイリスさんの命により! 『風の英雄』と『闇の戦乙女』出陣する!」
『風の英雄』――リクさんが、仲間の女性を伴って最前線へ飛び出しました。
今回リクさんに先陣をお願いした理由は、プレイヤーの士気を高めるためです。
私の意図は伝わったと思うのですが……あの女性と対比させることで強さをより際立たせるのが狙いでしょうか?
仲間想いのリクさんがそのような仲間を貶めることはしないと思うのですが……。
私は飛び出したリクさんの動向を見守ることにしました。
――!
す、凄い……。
一陣の風と化し、目にも止まらぬ速さで飛び出したリクさんは一対の短剣を巧みに操り、次々と
その常軌を逸した速さは、一人だけ違う時間の流れの中に存在するかのようです。
リクさんはまるで踊るように軽やかなステップを刻み、次々と弱点である連結部分に短剣を突き刺して、
あぁ……凄い……。
圧倒的な存在感で
「すげぇ……」
「なんだよ……アレ……」
「アレが……『風の英雄』……」
「相手は
事実、私でなく全てのプレイヤーが舞いながら
「ってか、『風の英雄』もだが……あの子も凄くねーか?」
「鎖鎌ってあそこまで強かったか?」
――?
私はその声に釣られるように、リクさんと共に飛び出した仲間の女性に視線を移します。
――!?
「ローズ、セリア……あの女性は?」
「メイさんだ。ハハッ……笑えるほどつえーな」
「リクさんと固定パーティーを組んでるお仲間ですね」
リクさんの仲間の女性――メイさんも、他のプレイヤーとは一線を画した存在でした。
巧みに間合いを取りながら、風を帯びた分銅を振り回し、
「メイ、任せた! 弱点はわかるな?」
「うん! 胸のアレでしょ?」
「ハッ! ロックゴーレムをワンキルかよ!」
「にはは! 風威はクロちゃんに最大強化してもらってるからね!」
リクさんとメイさんは無数の
「アイリスさん、もうリクにぃたちは役目を果たしたんじゃないかにゃ?」
「――!」
リクさんとメイさん、踊るように
「総員! 攻撃を開始します! 『風の英雄』と『闇の戦乙女』に続きましょう!!」
「「「おぉー!」」」
圧倒的な演舞を目にして興奮冷めやらぬプレイヤーたちと共に、英雄と同じ舞台――戦場へと身を投じるのでした。
◆
リクさんに先陣を任せたのは正解でした。
私の狙いどおり……いえ、狙い以上に士気の高まったプレイヤーたちが果敢に
私の率いるアルファグループは160小隊――1920人のプレイヤーで形成されています。
小隊にはそれぞれ1〜160の番号を割り当て、11〜60は中央、61〜110は左翼、111〜160には右翼を任せています。1〜10の小隊は私の直属とし、臨機応変に動きます。
小隊をナンバリングし、適材適所に配置。
これは全て先人――初めて緊急クエストでSランク達成へと導いた伝説の旅団【天下布武】の戦略でした。
私を含めた多くの後発プレイヤーは先人の軌跡をトレースすることにより、この世界を生き抜いてきました。
私ではリクさんのように個の力で状況を打破し、周囲のプレイヤーに影響を与えることはできません。
だから、私は与えられた役目を全うします。
「中央は余裕があるので陣形を変更します! 41から50の小隊は左翼を援護して下さい! 51から60の小隊は右翼の援護をお願いします!」
中央はリクさんたちの活躍もあり、余裕が生まれていました。陣形を変更し、より早く敵を殲滅できれば、それだけ休息時間を増やすことができます。
一般的にSランクを達成するためには、一日目を6時間で終わらせるのが必要と言われています。
このペースでいけば……6時間は余裕そうですね。
リクさんとその仲間たちは本当に凄いですね。
今でも耐久の高さが特徴である
初日の
事実、私の仲間の中で
あぁ……凄い……。
本当に貴方はあの日から何一つ変わらない。
貴方は私の憧れです。
私は指にはめた指輪に視線を落とし、微笑む。
『風の英雄』……いえ――『炎帝のソラ』様。
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
いつもお読み頂きありがとうございます!
今回はリクの強さを際立たせるために、アイリス視点でお送りしましたが、いかがだったでしょうか?
リク以外の視点を初めて書くのが……メイでもヒナタでもなく、アイリスになるとは私も驚きです(笑)
今回のリクとメイの強さの秘密は……純粋に属性による相克関係のみです。いきなり強くなったとかではないので、ご安心?下さい。
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