野良パーティーの経験
冒険者ギルドから立ち去った俺はソロ効率が高い稼ぎ場で、《
《
俺は試行錯誤を繰り返し《
ふぅ……久しぶりのソロは集中出来るな。
もっとだ……もっと強くならないと……【天下布武】のメンバーと合流したときに足手まといになってしまう。
マイ、ツルギ、メグ、ミント、セロ、マックスと再びパーティーを組んだとき……俺はどう立ち回る?
今の俺は、ソラじゃない。
今の俺は、ソラのような圧倒的な火力を持っていない。
今の俺でも仲間たちは温かく迎え入れてくれるだろう。でも、その優しさに甘える訳にはいかない。俺は対等な立場で……一戦力として共に肩を並べて戦いたい。
今の俺にしか出来ない戦い方もあるはずだ。
俺はかつての仲間たちの強さを思い出しながら、一心不乱に狩りを続けた。
〜♪
軽快な電子音と共に目の前にメールの受信を告げるシステムウィンドウがポップアップする。
『送信者:ヒナタ
大丈夫ですか? 私とメイはヒロさんと合流しました。冒険者ギルドで待っていますね(ノ◕ヮ◕)ノ*.✧』
ん?
時刻を確認すると21:40。
待ち合わせの時間は21:00。ソロ狩りに集中し過ぎていたようだ。
『すまない。22:00までには戻る』
ヒナタにメールを返信し、冒険者ギルドへと向かった。
「リクさーん!」
冒険者ギルドに入ると、俺の姿を確認したヒナタが笑顔で手を振ってくれる。
「すまない。遅れてしまった」
「大丈夫ですよー」
「うんうん。リクもパーティー組めたの?」
「いや、ソロで稼いでた」
「ソロなのに遅刻したんかい!」
「すまん」
「まぁまぁ……リクさんの分の食事も買いました! 基地に戻りますか?」
「ありがとう。助かる」
俺たちは冒険者ギルドを後にして、基地を展開すべく町の外へと向かった。
「それで、どうだった?」
俺はヒナタの用意してくれた夕飯――紙の容器に入った焼きそばを食べながら、今日の成果を聞くことにした。
「えっと……いい人たちですよ」
「んー……IGOでリクたち以外とパーティーを組むのは初めてだったから新鮮で楽しかったけど……」
ヒナタに続いてメイが答える。
「けど……?」
「何か不思議な感じだったかなぁ」
「ですねー……慣れていないというのもありますが……リクさんに一つ質問してもよろしいですか?」
「ん? 何だ?」
「風属性のトリックスターは……特別に攻撃力が優れているとかではないですよね?」
「そうだな。攻撃力だけなら、闇属性の忍者――メイの方が上だな」
「ですよね……。えっと、火属性のウォリアーの女性とパーティーを組んだのですが、その女性は私たちよりもレベルが高くて攻撃力はリクさんよりも上だと思うのですが……リクさんよりも弱く感じました」
「だね。DPSはリクの方が圧倒的に上だと感じたよ」
DPSとはDamage Per Secondの略で「1秒あたりに与えるダメージ」を意味するゲーム用語だ。
「その女性プレイヤーの武器は?」
「大剣だったよ」
「火属性のウォリアーで大剣なら……上級クラスの中では最高峰のアタッカービルドだな」
「だよね。うちもどんな感じなんだろ? と期待していたから、少し拍子抜けだったよ」
「多分だが、攻撃するタイミングが未熟で……攻撃する回数も俺より劣っていたんだろ」
「回数は分かりますが……タイミングですか?」
「ノーガードの状態の方がダメージは通りやすい。例えば、敵が攻撃する直前とか攻撃した直後や体勢を崩したとき、後は単純に不意打ちだな」
「確かに……がむしゃらなパワープレイだったかも」
「ふぁ〜!? 気付きませんでしたが、リクさんは常に高度なテクニックを使っていたのですね!」
「高度なテクニックと言うか……慣れだな」
上階層では適度なタイミングで攻撃しないと、雑魚を倒すのにも苦労する。テクニックというよりも、身体に染み付いた慣れだった。
「後は、タンクの女性もヒロさんと比べると安定しませんでした」
「うんうん。攻撃しなくていいのに攻撃するんだもん! 変に敵がバラけるから大変だったよ!」
「むむ……それを言うならこちらも苦労しましたぞ! 敵がバラけるからガードが大変でしたな。ヒナタ殿のように随時回復が飛んで来ないのでハラハラしましたな」
三人は野良で様々な経験が積めたようだ。
「逆に言えば、向こうも鎖鎌の忍者とパーティーを組む機会なんてほとんどないだろうから、戸惑っただろうな。プレイヤーごとに最適解の行動がある。組んだプレイヤーに合わせてスタイルが変更出来て、初めて一流のプレイヤーと言えるかもしれないな」
一緒にパーティーを組んだプレイヤーのクラス、装備、性格を把握して、相手の短所を補う……あるいは長所を伸ばせるスタイルが理想型だ。
「どうすればいいの!」
「例えば……大剣のウォリアーだと足が遅い。だから、メイは先駆けて遠くにいる遠距離攻撃をしてくる敵を倒すとか……何て言えばいいんだ? 組んだ相手が苦手としている敵から倒すとか、ターゲットが被らないように動くとか、逆にターゲットを合わせて一匹ずつ確実に仕留めるとか……そんな感じだな」
「んー……うちが合わせればいいの?」
「別にガンガン指示を出して、メイの中の最適解の行動にパーティーを導くやり方もあるが……メイの場合は合わせた方が楽だろ?」
「んー……そうかも」
「まぁ、今は経験を積み重ねることだな」
「りょーかい」
「はい! 私も頑張ります!」
「成長した姿を……お見せしますぞ!」
その後も野良パーティーでの経験を話し合い、翌日に備えて就寝するのであった。
◇
第三一階層に到達してからは、メイとヒナタとヒロアキは野良パーティーで、俺はソロで経験値を稼ぎ続けていた。
メイたちの話を聞いて、野良パーティーに参加したくなった俺は野良パーティーへの参加を数回試みたが、残念ながらパーティーへの参加は一度も受け入れられなかった。
第三一階層へ到達してから9日後。
4回目となる死神を討伐した。
「それじゃ、宝箱開けるぞ」
俺は死神がドロップした宝箱を開放する。
さてと、今日は何が出たかな。
期待することなくドロップ品を確認していると……
――!?
「へ? ちょ……ま、マジ……」
俺は驚きのあまり間の抜けた声をあげてしまった。
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