従魔ガチャクエスト②
西の森へと辿り着いた俺たちは馬車を降りて、今回の獲物――レッサーデーモンの捜索を開始した。
西の森を散策すること3分。
視界の先に二本の角を生やし、全身が紅く染まり翼の生えた異形の魔物――レッサーデーモン3匹を発見した。
「うわっ……結構大きいね」
初めて目にしたレッサーデーモンの姿にメイの身体が
現在の俺――リクの身長は170cmで設定してある。俺の身長よりも頭一つ分以上大きいことからレッサーデーモンの全長は200cm超えだろう。
「注意事項はそうだな……離れて戦うと魔法を使ってくるから、分銅で戦うときは魔法に注意が必要かもな」
「んじゃ、接近戦を挑めばいいの?」
「接近戦となると、爪による攻撃が当たれば痛いかな」
「えー……どっちがいいの?」
「魔法を誘発させてから接近戦かな?」
俺は何となくでイメージした戦い方をメイに伝える。
「むむ? 私はどうすれば?」
「ヒロは、俺とメイが接近戦を始めたら盾を鳴らしてくれ」
「了解しましたぞ!」
「ヒナタは出来るだけ巫女スキルを使いまくって、巫女のレベルを上げてくれ」
「はい! と言っても今は《結界・快》しかないですよ?」
「巫女の熟練度が上がれば、有用なスキルを沢山習得する。そうしたら、忙しくなるぞ」
「分かりました!」
俺は続けてヒロアキとヒナタに指示を出した。
「ボクはどうすればいいにゃ?」
「クロは俺の助言が無くても、適切に動けるだろ?」
「うにゃー……それはそれで寂しいにゃ」
「適度に頑張れ!」
「むぅ……了解にゃ」
クロは不満げな表情を見せながらも、斧を構える。
「んじゃ、サクサク狩りますか」
俺がレッサーデーモンの前に飛び出すと、メイも同じく飛び出す。
「メイ、左側を任せた!」
「了解!」
「――《ウィンドカッター》!」
「――《夏撃》!」
メイに攻撃することを告げるため、声に出し中央のレッサーデーモンへと風の刃を放つと、メイも分銅を左側のレッサーデーモンへと投擲する。
「「ウルォォォオオ!」」
攻撃を食らった2匹のレッサーデーモンが怒りの咆哮を上げると、両手を掲げ魔法を放つ予備動作に入る。
「3、2、1――迂回しながら走れ!」
俺の合図に合わせてレッサーデーモンが両手に生み出された炎球をこちらに投擲。しかし、火球は同じタイミングで疾走した俺とメイの脇をすり抜け、先程まで立っていた地面に着弾する。
迂回した為、一番近くになった無傷の右側にいたレッサーデーモンが俺へと鋭い爪を振り下ろす。俺はサイドステップを刻んで振り下ろされた爪を回避。そのまま、目線の先まで下がったレッサーデーモンの顔面に一対の短剣を振るった。
――《ファング》!
流石に硬いな……。
手に伝わるから感触から致命傷にはほど遠い手応えを感じていると、中央にいたレッサーデーモンと今ほど切り付けた右側のレッサーデーモンが俺に殺意を込めた視線を向ける。
2匹のレッサーデーモンが俺を切り刻もうと、凶悪な爪の生えた腕を振り上げたその時……
カーンッ! と、ヒロアキの打ち鳴らした盾の音が響き渡り、レッサーデーモンの注意――ヘイトが俺からヒロアキへと移行する。
俺は注意が逸れたレッサーデーモンの背後へ回り込み、短剣を振り下ろす。
――《バックスタブ》!
注意も逸れ、完璧な不意打ちとなった一撃は致命の一撃となりレッサーデーモンの首筋に突き刺さる。
お? まだ、倒れないのか……。
――《ウィンドカッター》!
至近距離から放たれた風の刃がレッサーデーモンの首を跳ね飛ばす。
メイの方へと視線を向けると、左側にいたレッサーデーモンがメイの風威の餌食となり地に倒れていた。
ここまで来れば後は楽勝だ。
俺は残った一匹――ヒロアキへと向かうレッサーデーモンへ《バックスタブ》を見舞うと、メイが投擲した分銅がレッサーデーモンの命を刈り取った。
「ふぅ……結構硬いね」
「今の俺たちは適正レベル未満だからな」
大した苦戦もすることなく、勝利を収めた俺とメイは互いにハイタッチを交わした。
「あの……どこで《結果・快》を使えば……」
「あ……次回からわざと少しダメージを食らうか?」
「えーあの爪食らったら痛そうだよ」
「ほんの少し掠らせる感じで受ければいけるだろ?」
「にゃはは! リクにぃもメイねぇも格上の雑魚なのに余裕なのにゃ」
「頼もしい限りですな」
ヒロアキのヘイトコントロールが勝利の決め手となったとは言え、メイと二人でレッサーデーモンを倒した形となった俺は苦笑を浮かべた。
「大変なのはここからだぞ」
「そうなの?」
「このクエストで一番キツイのは……」
「レッサーデーモン100匹を倒すことじゃなくて、レッサーデーモン100匹を見つけることにゃ」
俺の言葉の続きをクロが告げる。
「レッサーデーモンを探しながら、採取クエストになった時に要求されそうな素材も採取しつつ……頑張るとするか」
「「「おぉー!」」」
残り97匹のレッサーデーモンを求めて、俺たちは西の森を散策するのであった。
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