第二六階層を目指して
「えっと、リクとクロちゃんは『卵』の購入には反対なんだよね?」
「反対だな。『卵』を購入するとなると莫大な金がかかる。そうなると、馬車の改造費が足りなくなるから金策が必要になる。結果として、第三〇階層への道のりは更に遠くなる」
「ボクはメイねぇとヒナねぇの豪運に賭けるのも面白いと思うけど、堅実に行くならリクにぃの言うとおりだにゃ」
メイの質問に俺とクロがそれぞれの考えを答える。
「と言うことは……第二五階層の魔狼マラソンか、第二六階層の従魔ガチャクエストのどっちかになるね!」
「でも、そうなると……そこまでの道中はどうするのですか? 今まで通り徒歩でしょうか?」
メイに続いてヒナタが新たな疑問を投げかける。
「第二六階層までは馬をレンタルかな……出費は大きくなるが、幸いにもクロのお陰でお金には多少の余裕があるからな」
クロのお陰で装備品に費やす出費がかなり抑えられている。馬車を改造して、馬をレンタルするお金は十分に捻出可能だった。
「なら、リクとクロちゃんのオススメはどっち?」
メイは経験者である俺とクロに選択を迫る。俺はクロと顔を見合わせて、同時に答えた。
「「従魔ガチャクエストだな(にゃ)」」
共にセカンドキャラである俺とクロの答えは一致。
「それじゃ、従魔ガチャクエストに決定! うちの幽冥ちゃんを目指してレッツラゴー!」
俺たちの進むべき道が決まった。
その後、第三の町に戻り全員で出し合ったお金で馬車を改造。タイヤとサスペンションの他に馬を操作する為の御者席に、臀部を保護するクッション制の椅子などを取り付けた。
馬車を改造してくれた大工のNPCが馬をレンタルしてくれる業者を紹介してくれたので、思ったよりも安上がりで急場しのぎの馬車が完成したのであった。
◆
御者は経験者である俺とクロが交代で担当。道中でメイ、ヒナタ、ヒロアキも御者をやりたがっていたので、コツを指導しながら、第二六階層を目指した。
第二一階層に到達してから7日目。俺たちは第二三階層を馬車で旅していた。
「馬車の旅は快適ですが、このまま進んでもいいのでしょうか?」
「このままと言うのは?」
「第二一階層に到達してからほとんど敵と戦っていないのでレベルは大丈夫なのかな? と」
「第三〇階層までは上級職のチュートリアルみたいな感じだから、このまま突っ走れるはずだ。それに従魔ガチャクエストを受けるならそこで存分に経験値稼ぎも出来るはずだからな」
従魔ガチャクエストは第二六階層のヴィレッジに存在するNPCの依頼を受けるクエストだ。依頼される内容はランダムとなっており、多くのパターンが『○○を△匹倒せ』と言う討伐依頼だった。稀に『○○を△個集めろ』と言う採取クエストもあるが、この場合はそのアイテムが事前に揃っていれば即完了となるのでラッキーパターンだった。
「第二五階層の主も平気なのですか?」
「魔狼は弱くはないが……このパーティーなら苦戦する相手ではないな」
「それなら安心ですね!」
俺の答えを聞いたヒナタが笑顔を浮かべる。
「経験値稼ぎや金策は、定められた場所――稼ぎ場で集中してやった方が効率はいいからな」
「効率重視のプレイスタイルだね!」
「この世界を楽しみたいのなら……寄り道をしてもいいが、どうする?」
「んー、うちは早く幽冥ちゃんが欲しいからいいかな」
「私もリクさんとの旅を楽しんでいるので、このままで大丈夫ですよ」
今御者をしているヒロアキに聞いても「リク殿に任せます」と言うだろうし、クロも元々効率寄りのプレイスタイルだ。
いつか落ち着いたら……この5人で非効率的な楽しさ重視のクエストを楽しむのもいいかもな。
俺は馬車の窓から見える流れる景色を見ながら、リクとなって以来初めて戦闘から離れた冒険を楽しむのであった。
◆
第二一階層に到達してから18日後。
俺たちは第二六階層のヴィレッジへと到達した。
「魔狼のドロップイマイチだったねー」
「魔狼の素材からメイねぇの防具を作れるから後で作成するにゃ」
「わぉ! クロちゃん大好き!」
メイが嬉しそうにクロを抱擁する。
「リクにぃも魔狼の牙から短剣作った方がいいかにゃ?」
「魔狼の短剣は風属性だよな?」
「そうにゃ」
「なら、別にいいかな。そろそろ火属性の短剣が欲しいな」
「火属性の短剣だと、第三五階層のサラマンダーまで我慢するのがいいかにゃ?」
「他にも水属性、地属性、闇属性、光属性の短剣も欲しいな」
「にゃはは。リクにぃのスキルを活かすなら必須だけど、中々大変な道のりなのにゃ」
この階層まで来ると、まともに使える武器は風塵刀と風縛剣だけだ。
武器の更新をしたいが、上の階層に行けば行くほど良い武器が出る。毎度思うが、武器の更新をするタイミングは本当に難しい。
「武器の更新は追々考えるとして……今は従魔ガチャクエストに集中するか」
俺たちは従魔ガチャクエストを受注出来るNPCの元へと向かったのであった。
―――――――――――――――――――――――
(あとがき)
いつも本作トプセカをお読み頂きありがとうございます!
先の展開に悩みながら執筆しているので、ボリュームが少し足りない話が続いておりますが、ご容赦願いますm(_ _)m
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