今後の予定(中階層編)

 上級職の試運転を兼ねたレッドキャップ狩りを終えた俺たちは基地を展開して、今後の予定を話し合うことにした。


「さてと、今後の予定を話し合うとするか……と、言ってもクロ以外は何をすべきかはピンとこないよな」

「私はリクさんの予定に合わせます」

「リク殿の進むべき道に付いていくだけですな」


 ヒナタとヒロアキが早々に自主性を手放すが、今回ばかりは主体性がないとは責めることは出来ない。遮断される前だったらネットなどで様々な情報を目にすることによりやりたいこと――目標が芽生える。


 よくある目標と言えば、欲しいスキルがあるから経験値を稼ぎたい。欲しい装備があるから、マラソンをしたい……従魔が欲しいから該当のクエストをしたい……などなど。


 しかし、俺やクロのようなセカンドキャラでもなければ、目標以前に何があるのか、何が出来るのかも不明な状況だ。


 このパーティーの最終的な目標は第五一階層への到達だが、俺としては第五一階層に到達するまでの道中も充実した冒険にしたかった。


 幾つか候補を挙げるか……。


 俺が直近の階層で体験出来そうなことを思い返すそうとすると……


「はーい! うちはリクの短剣みたいな鎖鎌が欲しい!」

「俺の短剣みたいなって……魔法の触媒になる鎖鎌ってことか?」

「うん! だって毎回借りるわけにもいかなしい……うちはリクみたいな手品も使えないからね!」

「いや、風縛剣と風塵刀は俺のメインウェポンだから貸さないけどな」

「うぅ……うちも杖とか装備すればいいのかな?」

「それも一つの選択肢だが……忍者は杖の適正がないからなぁ……魔法の触媒になりそうな鎖鎌か……」


 第五一階層まで行けば店売りしているミスリルシリーズの武器は全て魔法の触媒になるが、それでは遠すぎる。


「魔法の触媒になる鎖鎌って何かあったか?」


 俺と同じセカンドキャラであるクロに話を振る。


「んー……鎖鎌となると……しかも中階層だと何があったかにゃ? ボクのレベルが上がれば魔改造で風威を魔法の触媒にすることも可能だけど……少し遠いにゃ」


 鎖鎌と言えば……セロがサブウェポンで使ってたな。あいつは中階層だと何を装備していたかな……?


幽冥ゆうめい……? って魔法の触媒になったか?」

「あぁ! 幽冥は魔法の触媒になるし、闇属性のメイねぇには最適の武器にゃ!」


 俺はソラだった頃にドロップし、セロに押し付けた鎖鎌の存在を思い出した。


「ユウメイ……? ってなに?」

「第三〇階層の主がドロップする鎖鎌だな」

「闇属性と隠密性が強化されるからメイねぇの最適な武器になるにゃ!」

「おぉ……! でも、第三〇階層かぁ……」

「とある条件を満たせば、一ヶ月程で到達出来るだろ」

「とある条件って?」

「基地――いや、馬車の運用だな」


 第二一階層からはフィールドが第二〇階層以下と比べると段違いに広くなる。徒歩で攻略することも可能だが、その場合は一階層あたりの攻略に費やす時間が10日ほどになる。


「と言うことは馬をレンタルするか、従魔と契約する必要があるにゃ」

「他にも基地は移動を考えていなかったから、タイヤとかサスペンションの交換も必要になるな」


 今俺たちが利用している基地の正式な用途は馬車だ。しかし、あくまで寝床としての機能性を重視していたので移動力は皆無に等しかった。


「あの、従魔と言うのは……?」


 首を傾げるヒナタに、先程の待ち時間でメイに話した内容と同じことを説明した。


「なるほど……! 従魔と言うのは馬車を牽引する魔物ですね!」

「まぁ、従魔には馬車を牽引する以外にも用途は沢山あるが……そうなるな」

「それで、どうするにゃ? 従魔を入手する方法は幾つかあるにゃ」

「どんな方法があるのですか?」

「一つは、『卵』をドロップする魔物でマラソンするにゃ。ここだと、一番近くて第二五階層の魔狼にゃ。メリットは従魔が魔狼確定だから、ガチャをしなくてもいいにゃ」

「ガチャと言うのは?」

「プレイヤー間の専門用語にゃ。えっと……ガチャと言うのは……次の方法がそれなのでそれを説明するにゃ!」

「はい! お願いします!」


 クロはガチャの説明に詰まり、次の方法を伝えることにしたようだ。


「第二六階層の従魔ガチャクエストで『卵』を入手するにゃ! メリットは『卵』が確実に入手出来ることにゃ。デメリットは、『卵』の中身がわからないからお目当ての従魔が出るまで何度も繰り返す必要があるにゃ。このランダムドロップのことをガチャと言うにゃ」

「お目当ての従魔と言うと……?」

「従魔は沢山いるにゃ。ハズレの筆頭格だとゴブリン、スライム、コボルトにゃ。これらの従魔はSサイズだから馬車の牽引は出来ないにゃ」


 馬車の牽引が出来るのは4足歩行でMサイズ以上の従魔のみだ。Sサイズでもレアな従魔はいるが、今回の目的にはそぐわない形となってしまう。


「馬車を牽引出来るタイプの従魔はレアなのでしょうか?」

「んー……一概には何とも言えにゃいけど……どうかにゃ……体感で20%くらいにゃ」


 クロは困った顔をしながらも、目安となる確率を答える。こればっかりは、公式で発表されていないので体感でしか答えることは出来ない。ちなみに、俺だったら10%と答えていた。


「20%ですかぁ……厳しい数値ですね」

「何でもサクサククリア出来たら、コンテンツが死んじゃうにゃ。今はゲームじゃなくて現実に近い世界だけど……元はゲームの世界だからしょうがないにゃ」

「クロちゃん、方法はその二つですか?」

「オススメは出来ないけどもう一つあるにゃ」

「何でしょうか?」

「プレイヤーから『卵』を購入するにゃ」

「魔狼の『卵』だったら高いし、他の『卵』なら中身は不明だから……確かに推奨は出来ないな」


 俺はクロの最後の選択肢を除外する方向で賛同するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る