レアドロップ
「ヒロ、分配条件はランダムでいいか?」
ヒナタとメイと共にボスドロップを獲得するのは二回目となるが、ヒロアキは初となるので一応確認する。
「リク殿にお任せします」
ヒロアキは俺の予想通りの返答をする。
「それじゃ、ランダム配布のままで開けるぞ」
「オッケー! ちなみに、当たりは何?」
「当たりのアイテムか……『蛟の加護』ってアクセサリーかな?」
「どんな効果なの!」
「毒を完全に無効化する指輪だな。毒を完全に無効化出来るアクセサリーは希少価値が高いから、第五〇階層まで使えるアイテムだな」
「お! イイネ!」
「ドロップ率はかなり低いけどな」
「ヒナ、期待してるよ!」
「え、えぇー!?」
「レアドロと言えば、ヒナでしょ!」
メイがヒナタに無茶振りをする。
「それじゃ、開けるぞ?」
俺は仲間たちに断りを入れ、宝箱を開放した。
宝箱の中に納められていた無数のアイテムが光の粒子となって俺たちの中――アイテムインベントリーへと収納される。
ボスドロップを確認する瞬間は、何度経験してもワクワクする。俺は期待を込めてアイテムインベントリーを確認した。
……。
見事なまでに素材と換金アイテムのみだな。
爬虫類系のモンスターは素材アイテムをドロップしやすく、装備品はドロップしづらい。
知ってはいたが……これは落ち込む。
せめて、レアな素材は……お!
素材の中にレアドロップ品である、『蛟の牙』が確認出来た。『蛟の牙』は部位破壊しないとドロップしないアイテムだ。蛟の部位破壊を狙うのは難易度が高いため、希少価値の高い素材であった。
確か、この素材で剣か短剣を作製出来たよな?
今から向かう第十一階層には工房もあるから、タイミングとして申し分ないな。
俺がレア素材にほくそ笑んでいると……
「あー! って!? ん? これ何だろ?」
メイが大声を出したかと思えば、蛟の鱗の柄とよく似た円形のアイテムを手にしている。
――!?
「は? え? ちょ!? それ……おま!?」
メイの手にした円形のアイテムを見た俺は語彙力を失い、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「り、リクさん?」
「え? リク、どうしたの?」
「リク殿、大丈夫ですか? 辛いようなら私の肩をお貸ししますぞ」
普段とは違う俺の態度に仲間たちが心配する。
「いや……すまん……少し、驚いてな……。えっと、メイ。そのアイテムは?」
「んっと……『蛇王戦輪』ってアイテムだよ。武器なのかな……?」
「――! やはり、『蛇王戦輪』か……」
「有名なアイテムなの?」
「超レアアイテムだな」
「え? そうなの? でも、リクが言っていたレアドロップは『蛟の加護』じゃなかった?」
手にしたモノの価値を知らないのは恐ろしい。
メイは特に喜ぶことなく、俺の反応に首を傾げる。
「蛟のレアドロは何か? と問われたら100人中99人が『蛟の加護』と答えるだろう。『蛇王戦輪』の名を挙げない理由は……その存在自体が都市伝説だからだ」
「そんなに凄いアイテムなの?」
「そんなに凄いアイテムだな」
「おぉー! やったね! ってことは、強いの?」
「強いか……と問われたら、べらぼうに強い訳ではない」
「そうなんだ……」
「メイ、この世界にある武器の種別を全部言えるか?」
「えっと……片手剣、刺突剣、大剣、刀、槍、薙刀、斧、棍棒、鎖鎌、短剣、杖、ナックルガード、弓、ボウガンの14種類だったかな?」
メイはスラスラと武器の種別を答える。
「一般的な武器の種別はメイの言う通り14種類だが、実は他にもシークレット種別と言うべきか……後2種類存在する」
「へぇ、そうなんだ」
「シークレット種別と言われる所以は、その種別の武器は買うことも、造ることも出来ないからだ。入手手段はドロップのみ。しかも、ドロップ率が異常なまでに低い」
「へぇ」
「シークレット種別と呼ばれる武器の種別が――銃と投擲武器。そして、『蛇王戦輪』は投擲武器だ」
「おぉー!」
「しかも、投擲武器を得意とするクラスが――忍者系のクラスになる」
「おぉー!! 本当に? ウソ? やったぁ!」
メイは忍者系のクラスを目指している。こんな低階層で忍者系の得意武器の一つである投擲武器を入手出来たのは、将来的にも大きな強みになる。
俺の言葉の意味を理解したメイは飛び跳ねて喜ぶ。
「リクさん、メイの拾ったアイテムはそんなにも珍しいのですか?」
俺の話にイマイチピンときていないヒナタが問いかけてくる。
「んー……そうだな……。『天下布武』は知ってるよな?」
「はい! もちろん!」
「『天下布武』のメンバーの中でも、投擲武器を持っているのはセロだけだ。しかも、セロは投擲武器を拾ったから、それに合わせてキャラを作り直した」
自分のクラスに合ったレアドロップ品を引ける者は乱数の女神に選ばれた者だけだ。プレイヤーの中にはドロップしたレアアイテムからキャラクターを作り直す者も少なくなかった。
「ほぇ〜……リクは何でそんなこと知ってるの? 書籍版でも語られなかった裏エピソードだよ!」
「ん? それは、アレだ……ある程度のレベルのプレイヤーの中では有名な逸話だからかな」
「と言うことは、リクさんは『天下布武』のメンバーと肩を並べるレベルのプレイヤーだったのですね!」
「まぁ……そうなるのかな?」
俺は口が滑った迂闊さに苦笑を浮かべる。
「まぁ……アレだ! 俺が『蛇王戦輪』のことを言わなかったからメイの物欲センサーが働かなかった……! ってことだな!」
俺は話題を変えるために早口で捲し立てる。
「えぇー! なにそれ!」
「あはは! メイは欲張りさんですからね」
「つまり、リク殿の計算通りと言う訳ですな」
「もぉー! 何でそんな話になるのよー!」
仲間たちの俺の他愛のない話に笑顔で応じる。
「それじゃ、第十一階層に行きますか!」
「「「おぉー!」」」
思わぬレアドロップを入手した俺たちは第十一階層へと続く扉をくぐり抜けるのであった。
――――――――――――――――――――――
(あとがき)
いつも本作をお読み頂きありがとうございます!
少し駆け足となりましたが、第三章はこれにて閉幕となります。次回から新たな展開が始まります!
お手数だとは思いますが、本作をお気に入り頂けたなら……広告の↓にある『小説関連情報を見る』から☆やフォローなどで応援よろしくお願いします!
明日からも毎日更新を続けられるように頑張ります!
今後もリクの冒険にお付き合いの程、よろしくお願い致しますm(_ _)m
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