女神の落日
※頭の悪いお話の〆になります。
DHAなどを補給しながら、ご高覧下さい。
ファルミタ、ダフネ、ミュスティ、そしてシンシア。『クレセント・アルテミス』の最高戦力は呆気なく敗北し、残った冒険嬢は三十名にも届かない。
「……」
ディミトラーシャは沈痛な面持ちで倒れた娘達を、狼藉者のムネヒトを見る。
いや、実際は自分達こそが狼藉者であり、彼は自衛のため反撃したに過ぎない。返り討ちにあった自分達にこそ非がある。
それを承知して、ムネヒトという一人の男を求めたのだ。綺麗事だけでは欲しいモノは手に入らない。正しいだけでは幸福はやってこないと、三日月の女神達は知っている。
非道とも外道とも言われようと、私達はもう二度と奪われないように、二度と壊されないように、突き進んだのだ。
「……ケジメを付けなきゃならないのは、わっちの方でありんしたか」
もう引き返す事はできないと分かっている。
「オリオン……最後はわっちが……『クレセント・アルテミス』のギルドマスター、このディミトラーシャが相手になるでありんす!」
ならば突き進むしかない。最後の最後まで自分の選んだ自分を貫く。非道は非道のまま、最悪は最悪のまま、彼を手に入れる。
「マスター……!」
「ディミトラーシャさん……!」
その言葉にどんな感情が含まれていたのか、彼女達にも分からなかった。
祈りでもない、悲嘆でもない、ただ感情が冒険嬢達の口を突いて零れていた。
もう信じて見守るしかない。自分達の命運は、ディミトラーシャに委ねられた。
「……」
「……」
約八メートル程の距離を置いて見つめ合う二人。互いの性空権が擦れ合い、チリチリと空気をヒリつかせる。
先に動いたのはディミトラーシャだ。真横に落下するような、初動を悟らせない高度な体術移動。
ムネヒトには手を使わずに相手を倒す術がある事を知っていた彼女は、長期戦は不利と判断した。
先手かつ短期決戦以外に活路はない。おっぱいを触らせないように、ムネヒトの肉体を奪う。
相手だって無傷では無い。その証拠は彼の胴体下部に表れていて、少しの刺激で暴発するだろう。
(アレを取れば勝てる……!)
仲間達も倒れ、向こうから自分達に手を出させる大前提は破綻、シスターズ・メイカーも失敗した。
残された武器は、我が
この肉体が武器であり、相棒であり、ディミトラーシャの命だ。
一瞬遅れて動いたのはムネヒトだ。
身体技能ではなく、筋力に依る単純な動き。互いの神速の踏み込みは彼我の距離を一瞬で潰す。
それは達人同士の居合いに似ていた。
ディミトラーシャの手がムネヒトを握るか、ムネヒトの手がディミトラーシャのおっぱいを掴むか、早さだけが勝敗を司る。
「――!?」
だが二人は激突することはなかった。ムネヒトが急に方向を反らし、ディミトラーシャの横を通りすぎたからだ。
彼女もおっぱいも無視して、後ろにある出口へ疾駆する。
――また、わっちだけを無視するんでありんすか!?
昨晩の屈辱が脳裏に甦る。
抱く価値も無い女とムネヒトに捨てられた自分を幻視し、ディミトラーシャは般若の如き形相で彼を追う。
抱擁でもなく技でもなく、激情そのままに振り返った。
「え!?」
ムネヒトは走り去っていなかった。
彼はディミトラーシャの直ぐ後ろに回っており、彼女の間合いより更に内側にいたのだ。
「――――くっ!」
超接近戦。慮外の位置を陣取られていたディミトラーシャは、無意識にバックステップしようと床を蹴った。
しかし、その蹴り足と床の間にムネヒトの足が滑り込む。踏み込みの打点をズラされたディミトラーシャは、それで大きくバランスを大きく崩してしまった。
体勢を整えようとするが軸足までもムネヒトに払われ、ディミトラーシャの身体は一瞬、宙のものになる。
落下する彼女を支えたのもまたムネヒトだった。
仰向けになって倒れそうになったディミトラーシャを、ムネヒトはふわりと受け止める。
回りから小さな歓声が上がったのは、それが俗にいうお姫様抱っこだったからだ。
「ぁ……っ」
五年振りのお姫様抱っこは、ディミトラーシャから平静さと先の憤怒を一遍に奪いさってしまう。
逞しい肉体に受けて止められ、乙女のように顔を赤らめてしまった。
その時だった。
首の後ろにある結び目がほどけ、ドレスが独りでに脱げていく。
水が高きから低きに流れるように滑らかな布が落ち、何の抵抗もなく自然に彼女の裸体を晒した。
磨き抜かれたディミトラーシャの肉体。かつて金貨二掴みと讃えられ、王都中の男の憧れだった乳房がムネヒトの為だけにその姿を見せた。
柔乳質のバストは呼吸に合わせて小さく震え、汗が一粒、先の桃色に流れて止まり朝露のように浮いていた。
ディミトラーシャが纏っていた黒のドレスは、
竜は気位の高いモンスターとしても知られている。
例外はあるが竜として格が高いほど、また強い個体ほど聡明で理性的だ。苛烈ではあっても、卑怯でも卑劣でもない。
自分が認めた相手には礼節を忘れぬといった、高潔な騎士にも似た精神も持ち合わせている。
また古来より、真の強者に対しては素直に兜を脱ぎ、護っていた宝を分け与えると言われている。
偶然かもしれないが、その竜のドレスがムネヒトの前で結いを解いたということは――。
真珠のように艶めく豊満な乳房をムネヒトは愛しそうに見つめる。この目に見つめられると、羞恥と共に自尊心や征服欲が沸いてきた。
ディミトラーシャも例外ではない。熱の籠った視線を浴び、肌が火照り両の先端がピリピリと疼く。
無視からは最も遠い感情が、ムネヒトの面に現れていた。
(ああ……)
ディミトラーシャは敗北を受け入れた。もしかしたら、最初から負けていたのかもしれない。
自分達はジョエルの依頼で彼という男を計り、恩を踏み倒して奪おうとした。全てはムネヒトの価値を知ってからだ。
だがムネヒトは、このギルドに来る前からおっぱいを愛していたのだろう。
おっぱいを味わう為に三日月の女神達に逢いに来たのではない。彼の歩む道の途中に『クレセント・アルテミス』が在ったのだ。
(やっぱり、馬鹿にしていたのは、わっちの方でありんしたか……)
諦めたように力なく笑う。
おっぱいに対する心構えが違っていた。ムネヒトにとっておっぱいは欲情の材料ではなく、生き様だったのだ。
ムネヒトの顔が近づいてくる。半口を開けて、左の乳首へ。
「……ぬしら」
ディミトラーシャは首を傾け、愛する冒険女性達へ顔を向ける。倒れた者にも、泣きそうな顔で心配している者にも等しく笑いかけた。
自分の失敗に付き合ってくれた家族に、感謝しかなかった。
「……ありがとう――」
アメジスト色の瞳に、涙が溢れた。
「ディ、ディミト――」
・
あぁぁぁあぁぁぁあっ!
「ま、マスタぁぁぁあぁぁぁっ!」
やぁ♡ やめっ、ぁぁぁあーーっ!
「ちくしょう……! マスターを放せぇぇぇー!」
な、なんでありんすかその超振動……!? それで一体どこに触れ、イヤァァァ!
「バカ行くな! お前まで巻き沿いを喰うぞ!」
ひぃぃいいっ♡ この世にこんな揉み方がー!?
「でも、でもぉっ! このままじゃ、ディミトラーシャさんが……!」
「もう、手遅れよ! 私達にはもうどうしようも出来ない! 私達はオリオンに負けたの!」
らめええええ……♡ 左右に架け橋を造らないでぇ……♡ 補給塔を掘削するのもらめぇぇぇ!
「そんな、じゃあ、このまま見とく事しか出来ないの……? マスターが、オリオンにヤられてるのを、黙って見とくっての……!」
くひぃぃぃいんっ!? ぬしの舌はまるで
「……ディミトラーシャさんの戦いを、イき様を、最後まで見守るの。それが私達に出来る、唯一の――」
アカン! ホンマにアカンでありんすって! 手加減してくんなんしぃぃぃぃ! こぉっ、これ以上はホンマにぃぃぃぃぃ、くぃぃぃぃぃうぅぅっ♡♡
「……っ、マスター……!」
あ”あ”あぁぁぁあっ♡、ひぐぅっ♡♡ イ♡♡ ぅぅぅぅぅぅぅうううううう”う”う”ッ♡♡
冒険嬢達はディミトラーシャとムネヒトの一方的な戦いを見守り続けた。
涙を呑み、歯を噛みしめ、股と乳房を自ら弄りながら、二人の男女を見つめ続けた。
ぴちゃぴちゃと湿った水音、何かが回転している音、振動音、啜るような吸引音、そして彼女達のマスターが鳴き叫ぶ声。
極めて長く感じる、しかし実際は三分弱の後に音が止む。残ったのは、ディミトラーシャの荒い息遣いのみだ。
「はあーっ……はあーっ……はあーっ……はあーっ……」
解放されたディミトラーシャは、何もかも弛緩しきっていた。
全身の骨格を失ってしまったのか、長い手足が溶けたチーズのように垂れ下がっている。光彩を失った瞳からは涙が溢れ、頬へ川を作っていた。唇もまた同様だ。
ピクンピクンと痙攣し、誰もが羨むような白肌は絶頂の証としてピンク色に染まっている。美しく豊満な双丘には汗粒がびっしりと浮かび、淫靡ながらも清廉な印象を皆に与えた。
両頂上の乳豆は濃い桃色に硬く膨らみ、ディミトラーシャの痙攣に併せてごく小さく震えていた。見ている自分までが乳首に疼きを覚えてしまうほど卑猥に尖っている。
「……っ、うそ、うそよ、そんな……!?」
呆然と敗者と勝者の姿を見ていた冒険嬢達の内、一人が何かに気付いた。
何名かが視線をそちらに向けるが、向けられた方はディミトラーシャのバストから目を離さない。いぶかしむ様に見ていたが、やがて他の皆も彼女の理解に追いつく。
「ま、マスターのおっぱい、全然汚れていない……!?」
ギルドマスターのバストは確かに汗に濡れていたが
それが意味する事は只一つ。ムネヒトはディミトラーシャの乳房に指一本も触れていないという事。
馬鹿なと、その発言を叱り飛ばしたかった。だってムネヒトは、あんなに激しくディミトラーシャの乳房に襲い掛かっていたではないか。獣のような愛撫の余音が此方まで聞えてきたのだ。一切の手付かずであるはずがない。
そういえば彼はディミトラーシャをお姫様抱っこしていたままだった。口を付ける事はできても、両手は塞がっていたはず。では本当に? ムネヒトはおっぱいに触らなかったと?
もし、それが事実だとするのなら――。
「まさか、気のせいだった……!? 揉んでも吸ってもいないのに、マスターだけじゃなくて、私達にまでそう錯覚させたっていうの……!?」
劇場が趣味の冒険嬢は理解した。あれは超高次元の錯覚だったのだ、と。
熟練の役者は、実際には何も無いのに料理を食べているように見せ、剣で刺されたフリにも関わらず観客に血潮を幻視させたりできる。パントマイムとよばれる技法もある。
真の実力者には、卓越した技術はそれほどの威力がある。
ムネヒトも同じだ。
乳房に指一本も触れてないのに、彼は確かにディミトラーシャのおっぱいを味わい尽くした。
目、音、呼吸、鼓動すらを駆使し、ディミトラーシャにおっぱいを愛されたと錯覚させたのだ。
彼女にとっては現実と変わらない。
ディミトラーシャは間違いなくムネヒトに乳房を貪られた。彼女のその錯覚こそが現実となったのだ。
――神業。それ以外に形容できない。
だがそれだけではなかった。冒険嬢達には知る術もないが、原因は他にもある。
・
『
・不揉之揉。不舐之舐。不吸之吸。不触之触。
即ち手を使わずとも乳は揉め、口を使わずとも乳は舐め吸える。我、もはや乳を触るに
でも本当は直接おっぱいが触りたいのです。
威力はイメージに比例、おっぱいまでの距離に反比例し、併用した他スキルにも適応される。
ただし最大威力及び最大効率は、直接触れた場合の81%にとどまる。
・
ムネヒトは遂に手離し育乳をスキルとして確立させていた。
手始めにイメージで自分の腕を十本に増やし、次に指、次に口、舌と徐々にコツを掴んでいく。最終的に見えないムネヒトが十人程になってディミトラーシャを囲っていた。
いくらディミトラーシャといえど、十人同時に乳房を愛撫されたことは無い。多人数プレイの経験はあるが、その時は純粋におっぱいが足らなかった。
いくらJカップの豊満なバストとはいえ、数名の手で肌は埋まるし、乳首も2つしかないので男達はいつだって争奪戦をしていた。
しかしムネヒトの場合は例外だ。いくら指を増やそうが結局は幻影、混雑も渋滞もするはずない。
十人のムネヒト……つまりディミトラーシャは、百本の指と十の口と数えきれない大人のオモチャを同時に相手にしたことになる。
バストに備わった性感帯の全ての箇所を撫で回され、絶え間なく揉みくちゃにされ、よく分からない道具で責められ、十人同時に左右の乳首を舐めしゃぶられるという有り得ないような愛撫を味わった。
その間たった3分14秒。しかし、生涯忘れぬであろう3分14秒。
本番どころか実際の愛撫も皆無のまま、ディミトラーシャはおっぱいだけで完全に堕ちてしまった。
ムネヒトはディミトラーシャをソファに寝かせ、最後にもう一度彼女のおっぱいを見つけ、そっと手を伸ばす。しかし途中でイヤイヤと顔を振り、シーツを身体に女の肌に掛けた。
完敗だった。見るがいい、我らがマスターを。敗北の汚泥に身を浸し恨めしそうな顔でムネヒトを睨んでいる。
「……
おのれ、なんて悔しそうなんだ! 屈辱あまり、呪いの言葉をムネヒトに吐き捨てているではないか!
「――次のおっぱいは?」
狼藉者は立ち上がり、チョイチョイと手招きしてみせた。かぁっ、と血が頭と下腹部に集まる。
「……ぜったいに赦さないっ♡ オリオン、次はアタシが相手だ♡ 皆の仇をとってやる!」
「ここは私達に任せて皆は早く離れて♡ 大丈夫、逃げるくらいの時間は稼いでみせるから!」
「へへっ、アンタ達にだけ良いカッコはさせないっての! アタシらもヤってやる♡」
「イく時は皆一緒っす♡ 私達『クレセント・アルテミス』は、血よりも濃い乳の絆で繋がっているんスから!」
冒険嬢達は立ち上がり、己の敵を見据える。敵は一本、こちらは約六十房。ならば何を恐れる事があるか。
勝ち負けではない。これは弔い戦だ。先にイってしまった者達のイ志を、自分達も受け継ぐための戦い。
言っておくが、自分達も極上の快感が欲しいわけじゃない。本当だ。決して。マジマジ。
「脱ぐだけがセクシーじゃない! 濡れ透けシャツおっぱいの底力を魅せてやる!」
「カルテットヒンンヌー出撃! ノーブラチラリズム包囲網でヤツを骨抜きにするわ!」
「私達の挟み撃ちから逃れられるかしら?
「『クレセント・アルテミス』突撃ぃぃぃぃぃぃ――――ッ!」
わ――――――――――――――!
裂帛の気合とともに、おっぱいの大津波がムネヒトに殺到する。女神と神と戦い。おっぱいとおっぱい王国民による現代のティタノマキアが引き起こされた。
私達、三日月の女神の戦いはこれからだ!
冒険嬢達は征く。自分達の戦いが『クレセント・アルテミス』の未来を創ると信じて――。
・
・
・
『クレセント・アルテミス』は次の日から営業休止になった。
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