第一八話 おでんかカレーか
――四月二三日。
「あいつら、なんで外に出てるんだ?」
レイは風成に気付くと声を掛ける。
「
「ちげーよ」
「なんだと!」
「俺は
「その能力、気持ち悪すぎるぜ」
「おいっ」と言って風成は手の甲でレイの肩を軽く叩いた。
「結局、風成は何処だ」
「頭いかれてんのか」
「あんたがややこしい事言うからでしょ」
と啓子が口を挟んだ。
とりあえず風成は二人が何故、外に居るのかを聞くと啓子が答える。
「お遣い頼まれたのよ」
「そうか、いってらっしゃい」
「私は行くとはいってないわよ」
「オレもだ」
「まさか……お前らお遣い押し付けあってんのかよ」
風成は呆れたのでお遣いを申し出る。
「俺が行ってやるから、買う物を教えてくれ」
啓子とレイは顔を見合わせて「「え?」」と言うと風成は、
「なに驚いてんだよ」
と不思議そうに答えると啓子は戸惑いを隠せないまま言葉を返した。
「だって、あんた、え? なにそれかっこつけないでよ」
「なに言ってんだこいつ」
「押し付けあってた私達が馬鹿みたいじゃん」
「そもそも誰に頼まれたんだ」
「瑠那さんに晩御飯の買い出し頼まれたのよ。私かレイ、どっちか行って来てくれって」
「なるほど、にしてもお前ら、くだらない事で揉めるなよ」
「うっ」
啓子は風成に思いもしない事を言われて落ち込み、地面に手を突いて項垂れる。
「まさか……あんたにこんな事言われるなんて」
「オレもショックだぜ……十月にこんな事言われたら生きていける自信がないぜ」
レイは体操座りで項垂れて落ち込んだ。二人の様子を見て風成は、
(俺をなんだと思ってんだ)
と平静を装いながら内心落ち込んだ。
レイは立ち上がりズボンのポケットから買う食材が書いてあるメモとお金を風成に渡した。
「ほらよ、これ」
「ありがと、えっとなになに……玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、牛肉、隠し味用にりんご」
風成がメモを読み上げてると、啓子も立ち上がり口を開く。
「なんの料理か分かる?」
「どう考えても、おでんだろ」
「そんなわけないでしょ!」
と彼女は否定したが風成の発言を聞いた金髪の少年は、
「ふっ……言われてみればおでんの可能性もなくはないぜ」
と言った。当然、啓子は否定する。
「おでんにりんごの隠し味はないでしょ」
しかし、風成は自信を持って鼻高々に発言する。
「よく考えてみろ、りんごはまろやかさを引き出す事が出来る。おでんの隠し味になってもおかしくはないだろ」
「くっ、否定できない……あ、あんたにしては説得力あるわね」
「よっしゃあああ! 勝った‼」
「うるさっ」
風成が両腕を挙げて叫んで喜ぶ姿が鼻についた啓子は右手のひらから炎を放って黙らせようとした。
「うおっ!」
放たれた炎を避ける為、風成は地面を蹴って倉庫の屋根の上に飛び乗った。ちなみに炎が当たった地面は焼け焦げていた。
「こ、殺す気か!」
と風成は啓子を非難した。
「その程度じゃ死なないでしょ!……あと」
啓子は後ろに手を組み恥ずかしそうに
「私も買い出し一緒に行ってあげてもいいわよ。なんか気が変わった、みたいな」
と言った。すると、
「オマエは一緒に行きたいだけだろ」
横に居たレイが啓子だけに聞こえるように呟いた。彼女は「そ、そんなわけないでしょ!」と言って彼にも炎を放った。
「あぶねっ!」
レイは全身に流れてる生体電流を増幅させ、底上げした身体能力で速やかに手足を地面に突け、うつ伏せになって放たれた炎を避けた。
「本条やる気か」
「ちっっがうわよ、あんたが変な事言うから」
「ほんとの事だろ」
「ほんとじゃないから! 気まぐれよ気まぐれ!」
「それはそうと、十月はもういないぜ」
「え?」
屋根の上に居た風成は既に場を離れていた。
――時間は少し進み、日が沈んだ後。
何時も通り、『神戸特区能力所』の面々は集会所で晩御飯を食べていた。
「珍しい色のおでんだな! ご飯に茶色のテイスト! まるでカレーみたいだ!」
と椅子に座って、皿に乗っている料理を見た風成が言った。
「現実を見なさいよ、どうみてもカレーよ」
同じテーブルに居る啓子は言葉を返した。
「これ……おでんなの?」
風成の言葉聞いた別のテーブルに居る
「なんでやねん」
ちなみにおでんの隠し味にりんごを入れるのは一般家庭でもやっている事でもあり、珍しい事ではない。
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