第49話 攻防戦
焔が政府に連絡してくれていたおかげで、刑務所の電気を止めてもらえた。少しでも、爆破されるのを防ぐためだ。
刑務所の周りには、無数の木が並んでいる。その木陰に身を隠すことにした。俺の左に一静、右に影、一静の前に彩予、そして俺の前には、焔がいる。瞬は別の場所で待機している。時刻は20時30分。
「奏、本当に無理だと思ったら言えよ」
俺の心配をしてくれているようだ。そんな焔に言った。
「大丈夫ですよ。その前に、気を失いますから」
「はぁ……そうかよ」
大きなため息を吐かれた。
「俺より、瞬の心配をしてください。1番危険なのは、彼ですから」
瞬だけが、今回犯人と顔を合わせるんだ。瞬の為にも、頑張らないとな。
「もう、来るよ」
彩予が静かに言った。時刻は、あと数秒で21時。遠くから足音が聞こえた。それは、徐々に近づいてくる。そして、1人の男性が姿を見せた。
「こんな所で、何をしてるんですか? 」
瞬が、男性の後ろに瞬間移動して、声をかける。その間に、男性にテレパシーを繋いだ。精神を集中させる。
「
影の声を合図に、男性の脳に信号を送る。男性も異変に気が付いたのか、抵抗してきた。
飴を口に入れ、目を閉じる。全ての集中力をテレパシーに集め、何度も信号を送る。俺の意識が引っ張られないだけ、マシだ。暴走した能力を止めた、あの時よりは。
「うぐ……っ」
男性がうめき声を出す。もう少し、なのか? そう思った時、テレパシーを伝って静電気が、こっちに流れてくるのを感じた。頭の中がビリビリする。でも、負けるわけにはいかない。口の中の飴を噛み砕く。
抵抗されながらも、強い信号を送る。頭が
「かはっ……」
何があったのか分からないが、男性が息を吐きだした。それと同時に、抵抗が弱くなるのが分かった。やれる。そう確信し、一気に信号を送ると、ぷつりとテレパシーが切れた。重圧に耐えられなかったか? いや、向こうの意識が飛んだのか。
「終わった、か」
目を開けると、目の前がぐにゃりと歪んで見えた。疲れた。
「大丈夫か!? 」
焔が大きな声で、俺に聞いた。
「大丈夫です。かなり疲れて、それで、頭が痛いだけで」
視界がぼんやりとして、上手くピントが合わない。誰かが警察を呼んだ後、瞬の能力で先に帰らされた。やっぱり、テレパシーをこんな風に使うと、かなり疲れるな。……罰、だろうか。
俺の部屋に着いた途端、安心して眠ってしまった。
「お疲れ様。助かったよ、ありがとな」
そんな、優しい瞬の声が聞こえたような気がした。
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