第35話 能力者の視点から
事務所はビルの一室にあった。翔さんは奥にある部屋に案内してくれた。どうやら、事務所には部屋が2つあるようだ。1つは依頼を受けるための部屋。もう1つは、資料や手掛かりになりそうな物を保管する部屋。
「よし、いといと頼むよ! 」
保管室には、女性の物が並べられていた。ブランド物のバッグ、財布、ポーチ。俺でも知っているような、有名ブランドの物だ。
「本当に全員、能力者なんだな」
翔さんが呟いた。それに焔が返事をする。
「えぇ。ここにいる6人全員、先天性の能力者ですよ」
「あ、でも何の能力を持っているかは、聞かないでおくよ。もし、俺が犯人に捕まっても話せないように、な」
流石は瞬の兄だ。慎重で、多分だけど頭の回転も速いんだろう。
一静が1つ1つの物を見て、見えたものを彩予に伝えて、彩予が紙にメモを取る。性格も能力も正反対の2人だが、相性が良い。むしろ、正反対だからだろうか。
「見終わりました」
一静と彩予がこちらに来て言う。
「どうやら、女性を連れていったのは男性3人。彼らと女性は知り合いだったようです。海での事件の前にも、連絡を取ったり、何度も会っているのが見えました。そして4人は、海から駐車場の方に行っていました。僕が得た情報は以上です」
「凄いな、そこまで分かるのか。でも、駐車場に行ったってことは、車で移動したってことだな」
ただの物でも、一静が見れば多くの情報が出てくる。でも、車で移動したとなると、どこまで追えるか分からないな。
「んー、女性の顔が分かれば、僕の能力も使えるんだけどね」
彩予の予知能力は、人か場所を絞ってからじゃないと、正確にできないらしい。できたとしても、大量の未来から女性のものを選ばないといけない。そんなことをすると、情報で頭がパンクするんだと。
「男性からもらった画像ならあるよ」
そう言い、パソコンに女性の画像を表示する。茶髪で大人しそうな印象の人だ。
「よし、やってみるよ」
彩予が能力を使っている間に、俺らはどうするか話し合う。
「駐車場に行けば、もう少し情報が出ると思うんですけど」
「でも、追っているうちに4人も移動するっすよね……」
一静の情報をもとに追っていっても、追いつけないだろう。今回はそう簡単にいかないか。なんて思っていると、彩予が言った。
「明日の昼、4人があの海に来るよ。多分、依頼人の男性に会いに。それと、3人の男性のうち1人は能力者みたい」
「何の能力を持っているか分かりますか? 」
尋ねると、彩予が呟いた。
「アクアキネシスだね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます