第20話 初仕事の終わり
「今回は大変だったな」
夜、ベランダでぼんやりとしていたら、焔に声をかけられた。美術館の事件、もとい初仕事が終わって、1日が経った。
「えぇ。そうですね」
あの後、誠は政府の人というか警察に捕まった。まぁ、当然といえば当然だ。そして、情報屋こと俺の実の父親も、誠の証言により拘束されたらしい。
これで、一件落着といったところか。
「でも、あの時の奏、かっこよかったぞ」
「何の話ですか」
焔の言う、あの時とは多分、誠が引き渡される時のことだろう。
俺は、警察の1人を呼び止めて言った。
「あの、彼……誠の話をきちんと聞いてください。誠は俺の為にしたんです。だから、きちんと声を聞いてください。俺にボイコットされたくなければ」
警察は少し驚いたようだったが、返事はしてくれた。まぁ、こんなもんだろう。誠が車に乗る前に言った。
「兄さん、ありがとう」
「別に、兄として当然のことをしただけです」
心がむず痒い。何だ、これ。誠はにっこりと笑っていた。同じ遺伝子を持っていても、育った環境でこんなに性格は変わるものなのか。
飴を咥えたまま、ため息を吐く。瞬は「誠くんには、執行猶予が与えられると思うよ」と励ましてくれた。だといいんだけど。
「そういや、何で情報屋が奏を狙っていたか分かったのか? 」
「まだ、はっきりとは分かっていませんよ。中々口を割らないようで」
少し不機嫌そうに「へぇ」と焔が呟いた。
「でも、叩いたらかなりの埃が出たらしく、色々な犯罪を犯していたみたいですよ。おそらくは、それに俺を利用しようとしていたのかと」
「うげ……なんか闇が深いな」
でも、もし捕まったとしても俺は全力で逃げただろう。それに、5人も助けに来てくれただろう。今なら、そう思える。俺の帰る場所なんて、ここしかないんだから。
「また、誠くんと会えるといいな」
炎の光に照らされた焔が、ニッと笑う。
「ま、連絡先も交換しましたし」
「ちゃっかりしてんな……」
俺の唯一の弟だしな。あぁ、でも双子なのに能力は全く違うんだよな。テレパシーとアクアキネシス。誠は1度、交通事故に遭ったらしい。それで、生死をさまよった結果、能力が宿ったと。本当によく分からない。
「何にせよ、これで初仕事も終わりってことだよな」
「そうですね」
初仕事にしては大変すぎたけど。さて、次はどうなることやら。でも、このチームなら大丈夫だと思う。きっと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます