-7-
ホームルームの終わりを告げるベルの音が、奈月の意識を思考の世界から覚めさせた。さて、講習会の準備をして、移動しよう。今日は英語だ。得意でも苦手でもないから、眠ってしまわないように気を付けなければ。英語の女教師は酷くヒステリックな一面もあるから、居眠りなどバレれば、彼女の機嫌次第ではお説教だけで講習が終わってしまいかねないのだ。その原因が自分となれば、同学年の人たちからしばらくの間白い目で見られることは間違いがない。それだけは何としてでも避けなければ。そう思いなおした。それでも、席は自由とあれば、後ろのほうに座ってしまうのが高校生というものだ。そして、講習会が始まって、一時間が過ぎたころ、奈月は夢の世界に旅立っていた。幸運なことに、気づかれずに済んだので、白い目で見られることだけは避けることができた。ただ、不幸なことに、英語の選択者に奈月と親しい人がおらず、終業をだれも教えてくれなかった。
「おーい、奈月ー、生きてるかー?」
「んっ、あー、奏か、んっ?」
「もうとっくに講習終わったよ?」
「まーじか、誰も起こしてくれなかった、悲しい。」
「んふふ、私が起こしたじゃない」
「なるほど、確かに。」
「まぁ、慣れましたけど、奈月の寝坊助さんには。」
「あはは、ごめんて。」
乾いた笑いで、そう返した。
「それで、どうしよっか、奈月は一回帰るの?」
そう言われて教室の時計に目を移す。時間は午後の十九時を回った位だ。
「そう思ってたんだけど、一回帰ると家から出るの大変なんだよね。」
「わかるー、それは何処も変わんないよね。」
「奏が残るなら残ろうかな、二十時半位までなら居残って勉強してましたって言えばなんとかなるもんね。」
「そうだね、それから移動すればちょうどいいかもね、そうと決まればとりあえず教室に戻ろうか。」
そう言って奏はややふざけた足取りで出ていった。奈月も教科書類をまとめてそのあとを追う。
「あ、お母さんに念のためメール入れとくわ、奈月もその辺忘れちゃダメだよ?」
「バレるとあとが大変だもんね、わかった」
どう口裏を合わせるかを話ながら教室に戻った。そこから先は当然、勉強などするはずもなく、他愛もない話が続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます