残り10日


「さあ、今日は待ちに待った弁当交換イベントよ!!」


「気合が入ってんな。楽しみだ」


 以前に今後の予定を話したとき『週明けにお互い準備して弁当を作りましょ。そして交換だわ』という司令を受けてきたので、俺もそれなりに準備をして作ってきた。


「ありがたく受け取りなさい。私が弁当を人に作るなんて明日に地球が滅ぶくらい珍しいことだわ」


「逆に受け取るのが怖いがな。はいよ」


 花蓮がいつも食べている弁当箱を大事に受け取る。いったい何を作ってきたんだろう。


「……空けていいか?」


「ええ……。なんか緊張するわね」


 決して手を滑らせてこぼさないよう慎重に蓋へ手をかける。


 その中に入っていたのは――




「ハンバーグか!!」


「そうよ、真心込めて煮込んだわ」


 花蓮はドヤ顔でこちらを見返す。そういえば先程チラっと指先が見えたのだが、その綺麗だった手には絆創膏がよく目立っていた。……何の傷かは聞かないでおこう。


「私の弁当箱はっと……これはまたオシャレな具材ね」


 俺が作ったのは和食を中心としたヘルシー弁当だ。主に緑が映えるような具材をたくさん選んだので、見た目も栄養も十分な構成だ。


「さっそく食べようぜ。もうお腹が空いて死にそうだ」


「そうね、私も早く食べたいわ」


 二人でいただきますと言ってそれぞれ弁当に箸をつける。

 俺は勿体がらずにさっそくメインのハンバーグを食べることにした。形はしっかりと丸みを帯びて煮崩れしておらず、中心に鮮やかなケチャップが塗られていて実に食欲を唆る。



「ではまず一口。いただきまーす」



 ――ガチンッ。ボリボリ。グシャグシャ。



 んー、実にゴリゴリとした食感で歯ごたえが素晴らしい。味も甘酸っぱさと苦さがミックスして混沌としている。さして最後にケチャップだと思っていた存在が唐辛子ソースだと気づいたが、ここまできたらもはや関係ない。


「その……どうだった?」


 普段は絶対にしない上目使いでこちらを見つめてくる。だめだ、こんなに可愛かったっけコイツ。


「マズいわけがないだろ。めっちゃ美味いぞ」


「ほんと!? 良かった~」


 花蓮はホッとした表情で胸を撫で下ろす。


 ……たぶんいつも食べている弁当は親が作っているな。


 ちなみに俺が作った弁当は満面の笑みで頬張っていたので大満足だった。……また作ってやろうかな。

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