残り24日


「ねえ、花蓮さんって空門君と仲良いの?」


「最近一緒に居ることよく見るよね」


 午前の授業が終わってすぐ、近くの女子達がアゲハについて話しかけてきた。確かこの子達は大人しい子たちなので、何かイチャモンをつけてくる様子ではなさそうだが……。どうしても先日の三島美香事件のことが頭に浮かんでしまう。


「まあ確かに一緒に居る機会は多いわ。それがどうかした?」


 すると女子生徒二人はヒソヒソと話し合いを始める。


「明里が聞いてよ」「嫌だよ~。華月が聞いてってば」「わ、わかった」


 どうやら緊急会議は終わったらしい。どうせ付き合ってるの?とか聞いてくるに決まって――


「あの噂……本当だった?」


「噂……? それってなに?」


 質問を質問で返すようなことになったが、その噂にまったく心当たりがないので仕方がない。彼に関しては悪い噂は絶えないくらい飛び交っている。上級生をシメて学校の支配権を握っているだとか、生徒会長をあの手この手で仲間に無理やり引きずりこんで校則違反を逃れているとか、いつかこの学校の全女子生徒を犯し尽くすとか、もう訳のわからないことばっかだ。


「あ……知らないんだ。だから一緒にいられるのね」


 そこまで言われたら気になってしまう。しかし、なぜか胸がざわざわして不安を覚える。まだ私の知らない噂があるっていうの?


「空門君は……すぐに友達と絶縁するって話」


「だからいつも一人なんでしょ?」


 私の知らない、アゲハについて根も葉もない噂が広まっていた。

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