残り78日
「聞いたよ~、アゲハ。美香ちゃんを完膚なきまでに蹂躙したって。あー怖い怖い」
「変な誤解はよせ、健人。普通に追い払っただけだ」
あれから翌日、授業間の休憩中に意味深な笑みを浮かべた健人が話しかけてきた。情報を掴むのが早すぎてびっくりするが、全生徒と関わりがあるコイツなら不思議なことではないかと納得する。
たぶん色んな噂や陰口など嫌になる程に聞くはず。その全てに対して真摯に相談にのって、良い関係を築いている結果が今の健人の人気だ。顔が良いっていう理由もあるが、常人には理解できない人気者の努力っていうのもあるのだろう。
「まぁ僕も散々迷惑かけられたから、アゲハの話を聞いて清々したよ」
でも俺には素の自分を出すそうだ。偽物の仮面を取り付けても俺には全て見通させれるから、ならばいっそのこと本音を言うことにしたらしい。それがどうも健人は気が楽で嬉しいと言っていた。これが俺と健人の仲の良い要因だ。周りからしたら「クラスのはぐれ者を構ってあげている健人君って素敵」と見えるので彼にとってはプラスしかない。俺は別に気にしないのでいいんだけれども。
「どうやら『例の写真』が効いたみたいだね」
「ああ、助かったよ」
あの時に三島美香に見せたスクープ写真は健人から入手したものだったので素直に感謝を述べた。そういう噂を知っていても不思議ではないけれど、なぜそんな決定的な写真を持っていたのかは色々と深い柵が怖いので聞かないことにしよう。
「いえいえ、僕もあの花蓮さんの光景を見ていて良い気はしなかったからね。それに、アゲハには沢山の恩があるし」
「それはお互い様さ。また嫉妬した男に絡まれたらいつでも呼べ、それでチャラだ」
健人は女にモテる分、それが気に食わない男からもよく絡まれるのだ。意図して無くとも『俺の女を誘惑した』とかでイチャモンを付けられるらしい。とんだとばっちりである。そんな時、彼一人ではどうしようもないので護衛役として俺を利用している。良くも悪くも俺には事実無根な悪い噂が流れているので、健人の隣に俺がいるだけで相手は帰っていくそうだ。女も取られて鬱憤もぶつけられなった男には申し訳ないが、人生強く生きてほしい。
「それにしても……ついにアゲハに彼女か。僕は嬉しいよ」
「そんなんじゃねえよ。あれはただの気まぐれだ」
アイツが彼女? 笑わせないでくれ。
確かに友達とは認めた。でもそれだけである。それ以上の関係になることは絶対にあり得ないだろうし、あっちもその気は無い。
「ふーん……まぁアゲハがその気じゃなくても花蓮さんはどうかな」
「どういう意味だ?」
「はいはい、僕は温かい目で見守っておくよ」
訳がわからないまま困惑しているとチャイムが鳴り先生が教室へと入ってきた。仕方なく前を向き自分で考えてみるが、まるで答えが出なかった。
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