残り80日
「その、先週はありがと」
「別に俺がしたいことを勝手にしただけだ。気にすんな」
あれから週が明けて今は月曜日の昼だ。
あの日、三島美香が去ってから何となく二人で下校した。俺は歩いて帰れる距離の家に住んでおり駅やバスなど使う必要はないのだが、どうやら柏木花蓮は電車で帰るようなので駅まで送ってやった。しかし何となく気まずい雰囲気になってしまったので特に会話をすることなく、その駅で解散して帰った。
そんなこんなで、屋上に再び二人で揃って飯を食う日が訪れたのだ。なんだか久しぶりな気がするし、今となってはお互いに「昼に屋上へ集合する」という暗黙の了解が生まれている。こんな関係性を友達と呼ばないのも今更ながらおかしな話だったのだ。
「凄い今更なんだけど、ほんとあんたって嫌われてるのね」
「言ったろ? 俺と関わらないほうがいいて。こういうことになるんだよ、なぜか」
まあ実際は避けられている理由は知ってるし、だからと言って原因を治す気もない。というか治せないのが現実だ。これは俺の性格とか精神の問題とかそういうのではなくて、何というか、呪いみたいなものかもしれない。いずれ柏木花蓮にも知られる時が来るだろうが、それはその時で何とかしよう。
「どうせ喧嘩とかレイプとか不良らしいことでもしたんでしょうけど、詳しく聞く気はないわ」
「いやいや、人聞きの悪いこと言うな。さすがに犯罪に手を染めてないぞ」
すると――ふふっと柏木花蓮が俯きながら笑った。
……思えば笑った姿なんて初めて見たかもしれない。
「お前、まともに笑えるんだな」
「……あのね、せっかくいい気分だったのに失礼なこと言うのやめてくれる? そういうところよ友達ができないの、たぶん。」
はあ、とため息をつきながら食事の準備を始めた。友達ができないのは性格にも問題があったと認識できたところで、俺も飯を食べることにした。
その時に聞いたことだが、どうやら三島美香は俺に執着するくらい気があったらしい。「何か思い当たりはないの?」と言われたが何の記憶もないので勝手にあっちが思っていたのだろう。正直、憎まれることはあるだろうと覚悟はしていたが、好かれるとは全く想像もしていなかったので驚いている。自分で言うのも何だが、俺の何が良いのか分からない。……今度、姫乃にでも聞いてみようか。きっと参考にならないだろうけど。
「そういや、お前も過去に何かあったらしいが、聞かないことにするよ」
「ええ……そうしてくれると助かるわ」
「どうせその減らず口で誰かの恨みでも買ってしまって学校中が大騒ぎになるくらいの喧嘩でもしたんだろうな」
「貴方じゃないんだから喧嘩なんてしないわよ。喧嘩をする前に沈めるわ、精神的に」
「精神的に……」
ま、まあ、誰にでも秘密はある。いつか腹を割って話す関係になればお互いに伝え合う日が来るだろう。
そしてそのまま何事もなく昼休みは終わったのだが……俺はこのまま三島美香が引き下がるとは思えなかった。直感だけど、この嫌な直感は昔から良く当ってしまう。今回ばかりは外れてほしいと心から願った。
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