大学編 第66話
出会いがあれば別れもある、楽しい祭りの時間もいつかは終わりが訪れるのだ。
「穂積さん、これはどうしますか?」
「それをすてるなんてとんでもない!」
「……捨てましょう。きりがないです」
「そんな!俺がひとりで泣きたくなるような寂しい夜にも優しく慰めてくれた可愛い女の子なんだぞ!?」
「どのビデオもひとりの時に慰めたものでしょう?本当に大事なものだけ持っていってください」
「睦月の鬼っ!悪魔っ!」
「……この魔境の片付けを手伝ってあげてるっていうのに悪魔呼ばわりとは、ひとりで片付けますか?」
「ああっ、すまん!お願いだから手伝ってくれ!いや、ください」
「本当にもう……」
渡貫さんは用があるからと穂積さんの部屋の片付けから逃げたようだ。宇佐川さんは……そういえば最近見てないな。
「穂積さん、そういえば最近、宇佐川さんを見てませんね」
「ああ、宇佐川の奴は旅に出たぞ」
「旅行ですか?いいなぁ、羨ましい話ですね」
「いや、傷心旅行だ」
「傷心旅行!?とうとう例の借金取りの女性に告白したんですか?」
「……いや、彼女がお付き合いしていた男性と再婚したらしい。それで宇佐川の奴は告白する前に撃沈だ」
「……それで傷心旅行ですか、いつ帰ってくるんですかね?」
「おそらく一、二年は帰ってこないんじゃないかな?」
「そんなにですか!?大学はどうするんですか?」
「まぁ、自由人だから、いつものことだよ」
「……そういう問題なのかなぁ」
「なんだかんだで宇佐川は逞しいから大丈夫だろ?」
「はぁ」
まぁ、男だしなんとか生きてはいけるのだろう。そんな話をしながら穂積さんの大人のお宝を仕分けする、何故こんなことをしてるかといえば
「とうとう穂積さんも卒業かぁ。地元の病院に勤務するんですか?」
「実家の隣の町の病院に勤務して、いずれは独立したいな」
話を聞いたら穂積さんの実家は相当な田舎らしく、今はお年寄りの医師が一人いるだけで他には病院もないような所らしい。だから穂積さんはいつかは地元で診療所を開業したいと以前から言っていた。
「ああ、睦月もいつか遊びに来てくれ。何もないところだがな」
「いつか遊びに行きますよ」
穂積さんの地元は温泉地も近くにあるようで、蛍と一緒に行くのは魅力的な考えだった。
「俺も嫁さん探さないとな」
穂積さんがガハハと笑いながらそんなことを言う。容姿は熊みたいだが面倒見も良いし、職業もお医者さんならきっと良い女性との出会いがあるだろう。
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