大学編 第65話
今日は蛍と遠出をしている。電車を乗り継ぎ、都心から離れた駅に降り立ち、駅から二人並び歩くがいつものような明るい会話もなくただ目的地に向かって歩いていた。
この前、再会した真木さんに教えてもらった水無瀬さんが眠る場所にやって来たのだ。
「随分と自然が多いところなんですね」
「真木さんの話では水無瀬の家のお墓ではなく、実母の実家の方のお墓にいれてもらったらしいぞ」
それがつばめ自身の遺言なのか、それとも水無瀬家の人達の意向なのかはわからないが少しだけ悲しいなと俺達は思った。
辿り着いた場所は幾つかのお墓がぽつんと並ぶ少し寂しげな所だったが荒れ果てた様子もなく、このような場所までどの家族もきちんと墓参りに来ていることが明らかだった。
「寂しいところかと思ったけど悪くないんじゃないか?景色は素晴らしいぞ」
「そうですね、つばめちゃんがゆっくりお昼寝できそうな場所です」
心休まる暇もなかったであろう水無瀬の家のお墓より、実母も眠る場所で安らかに眠って欲しいと思う。
「これだな」
「……つばめちゃん。久しぶり」
俺達はお墓の周りを掃除して花を供えた。墓石に名前が彫ってあったので良く見たら二人で目を疑った。
「ははは、もう時効だよって笑ってそうだな」
「……つばめちゃんったら私に対して時々お姉さんぶったりしていたのに!」
墓石には『水無瀬 つばめ 行年十八才』と彫られていた。
「あの不良娘め、しれっと酒飲んでたぞ!?」
「本当につばめちゃんったら……もう、本当に」
俺達より年下の女の子がこんなに早く天国にいってしまうなんてやりきれない気持ちだ。辛いことも多いけど、同じくらい楽しいことが人生にはいっぱいあるというのに。
線香に火をつけ、二人で手を合わせる。二人で暫くしんみりとしていたが、どちらからともなくそろそろ帰ろうかという話になった。
「水無瀬さん、また来るよ」
「つばめちゃん、またね」
俺と蛍が帰ろうとしたときに突然、風が強く吹いて、蛍のスカートをバサッと捲る、やっほう!蛍の白い下着が丸見えだ!有名な映画のワンシーンのような状態に俺達の他には人影は無いが蛍は顔を赤くして慌ててスカートを押さえる。そんな様子を見ていつかの水無瀬さんのスカートめくりを思い出した。
「ははは、水無瀬さんがまた来いってさ」
「つばめちゃんったら!本当にもう!イタズラばっかりして!ふふふ」
俺達は笑ってその場を後にした。水無瀬さんが笑顔の無い俺達を見て『もう!蛍ちゃんも睦月君も笑ってよ!』って言っている気がしたから。
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