大学編 第29話
「先輩、お風呂が壊れたなら遠慮なくうちのを使ってくだされば良いのに」
蛍のありがたい提案に素直に従うことにした、近くに銭湯はあるがとある理由で行きたくないと伝えたらそう提案してくれたのだ。因みに「とある理由」は伝えていない。
「ありがとう。ありがたく借りるよ」
「へぇー、睦月君のアパートのお風呂壊れちゃったんだー」
お風呂を借りに来たら、蛍の友人の水無瀬も遊びに来ていたようだ。
「遊びに来ているときにごめんな、俺のことは気にしなくて良いから」
「そっちこそ気にしないで!いつもの風呂上がりみたいに全裸でナニかをぶらぶらさせながら出てきても私は構わないからね!」
「……人を何だと思っているんだ、俺は裸で歩き回ったりしないから!」
「えー、そうなの?ふふふ、じゃあ、背中流してあげよっか?」
「……なぁ、まさか水無瀬さんは神宮寺流の武術習ってないよな?」
「何それ?知らないけど」
「そうか、良かった。とりあえず背中を流す必要はないからな?」
「えー、ケチ!」
「つばめちゃん、駄目ですよ」
「蛍ちゃん、単純に学術的興味だよ?睦月君のってどうなんかなー、面白いのかなーって」
「面白いってなんだよ、普通だ普通」
「蛍ちゃん、本当?」
水無瀬さんが蛍を覗きこんだら「し、知らないです」と顔を赤らめて答えたが、知らないことはないだろう。
「……でも、子供の頃に見たお父さんのとは形が違うなって思いました。それぞれ個性があるんだなって……」
蛍がそんなことを恥ずかしそうに発言するが、お義父様の名誉を守るために俺は何も答えることはなく黙っていた。そうしたら水無瀬さんは「えー、やっぱり普通じゃないんじゃないのー?」と騒いでいたので
「普通じゃないってのは龍崎さんのみたいに真珠が入ってるやつじゃないか?」
と、本当は言いたかったが、さすがに蛍や水無瀬さんには刺激が強すぎるだろうとこれも黙っていた、沈黙は金なのだ。
「仕方ない、睦月君!勝負だよ!脱衣を賭けた闇のゲームを開催しよう!私が勝ったら睦月君がすっぽんぽんでぶらぶら!睦月君が勝ったらこっちもちゃんと脱ぐ!すっぽんぽんだよ!……蛍ちゃんが!!」
「つばめちゃん!何を言ってるんですか!?」
「水無瀬さん何を言ってるんだか……蛍は優しいから、きっと俺が誠心誠意、土下座をすれば脱いでくれるぞ?」
「先輩も何を言ってるんですか!!」
「睦月君、想像してみてよ!私と睦月君はきちんと服を着ていて、真ん中にいる蛍ちゃんはすっぽんぽんで恥ずかしそうに両腕で身体を隠しながら顔を赤らめている……なんて萌えるっ!そんな一輪の華のような蛍ちゃんを眺めながら杯を傾ける、お酒がめちゃくちゃ進むよ!」
「水無瀬さん、さては天才だな!?」
「二人とも馬鹿なこと言わないでくださいっ!本当に怒りますよ!」
「「ごめんなさい」」
拗ねる蛍を宥める為に、俺と水無瀬さんは床に膝をつき謝罪する。結局、この三人の中では蛍が一番強いのだ。
「先輩も馬鹿なこと言ってないで早くお風呂に入ってきてください!」
「はい、それじゃ借りるよ」
そうしてお風呂から出たら、また風呂を覗こうとしていたらしい水無瀬さんにしがみついて防いでくれていた蛍の姿を見た。どうしてこの街の女性たちは俺の風呂を覗きたがるのか、さっぱりわからない……
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