大学編 第22話
「つばめちゃん、本当に三人で遊園地に行くの?」
「うん!三人で行こう!」
先輩が帰った後も、つばめちゃんは私の家に残り、一緒に作業をしながらお話をしている。
「蛍ちゃん、これでいい?」
「うん、ありがとう。つばめちゃん上手だね」
「ふふっ、ありがとう」
つばめちゃんは私が描いている漫画を手伝ってくれている。消しゴムをかけたり、黒く塗りつぶすベタ塗りという作業だ。何気に、つばめちゃんは器用で助かっている。
「蛍ちゃん、本当に睦月君に言わなくて良いの?」
因みに漫画を描いていることは先輩には内緒である。何故ならちょっと恥ずかしいからだ。
「……うん、まだ内緒でお願い」
「ふふっ、彼氏に内緒で私と愛の共同作業!これは私の方が睦月君よりポイントがリードだね!やっぱりハンカチを噛み締めて泣くのは睦月君だな!」
「もう、つばめちゃんはまたそんなことを言って……」
「そうだねぇ、遊園地に行くときは私と蛍ちゃんでお揃いのコーディネートでもする?姉妹みたいで可愛いかも!」
「姉妹かぁ」
つばめちゃんを見る。長い髪の美人、背も高い、……胸も大きい。うん、端から見れば、つばめちゃんが姉に見られるんだろうな。
「……やっぱりお揃いは止めよう?」
「えーっ!?なんでさ!」
もしも、私とつばめちゃんが姉妹みたいに見られたら、一緒にいる先輩の相手役はどう見てもつばめちゃんだと知らない人は見てしまう気がする……それは嫌だ。
「ふむ、じゃあ、ちょっとしたものだけでもお揃いにしようよ」
「ちょっとだけなら良いよ」
「ふふっ、言質とったナリ!」
……なんだろう、少し嫌な気がする。まぁ、同じものをつばめちゃんも身に付けるなら変なものは選ばないだろうと思いたい。
「でも、つばめちゃんは彼氏とか欲しくないの?」
先程、先輩とつばめちゃんが話していたことだけど、先輩が帰った今なら話してくれるかもと尋ねてみた、それでもやっぱり話したくないならもう聞かないよと伝えたら
「うーん……彼氏かぁ。本当はね、蛍ちゃんと睦月君と仲良くなる前は考えなくもなかった」
つばめちゃんは大学で講義の時に席に座っているだけでもチラチラ見てくる男子が多い、モテるのは明らかなので望めばいつでも彼氏はできるだろう。
「今は彼氏とか興味ないの?」
「うん、蛍ちゃんと睦月君がいるからね」
友達と恋人は別だと思うんだけどなぁと思っていたら
「……睦月君には内緒ね?実は私には婚約者がいたんだ」
「婚約者!?」
「うん、正確には許嫁ってやつ」
驚いた、そんなのは漫画の中の話だけだと思っていたが、本当にそんなことあるんだ。つばめちゃんはどこか良いお家のお嬢様だとは薄々気づいていた、だって、5食セットで売っている袋のラーメンを食べたことないって珍しそうに食べていたから。それでもそんな許嫁がいる程のお嬢様だとは思ってもみなかった。
「婚約者がいるから彼氏はいらないってこと?あっ、婚約者がいたって過去形で言ったってことは……」
「うん、そう……婚約の話は白紙になったんだ」
「……なんで?って聞いていいのかわからないけど」
「へへへ、私に原因があるんだけど、それは内緒。あっ、でも気にしてないからね?」
「その人が忘れられないから、まだ彼氏はいらないってことじゃなくて?」
「え?違う、違うよ!だってその人とは二回しか会ったことないし!どんな人だかよく知らないもん」
そう否定するつばめちゃんは強がっている感じもしないので、本当に気にしていないのだろう。
「ふふっ、遊園地かぁー楽しみだなぁ。蛍ちゃん、今度お揃いのもの買いに行こうね!」
つばめちゃんは楽しそうに私に微笑みかけてくる。私もそんな様子のつばめちゃんを見たら自然と笑みが浮かんだ。
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