大学編 第20話


 背を向けた格好で俺に寄りかかって足を伸ばし座っている恋人の蛍の頭を撫でる、普段は頭を撫でると整えた髪が崩れるのでやらないが、今は思う存分に蛍のさらさらな髪を触り、小さな頭を撫でられて嬉しい。


 「そういえば、この前、つばめちゃんが……」


 蛍がこちらを向かずに、友人の水無瀬さんとどんなことがあったか嬉しそうに教えてくれる。俺は仕事と学校の二足のわらじで蛍といつも一緒に過ごせるというわけではないので必然的に蛍と水無瀬さんが一緒に過ごす時間が増える。


 「……蛍は水無瀬さんのこと好きだなぁ」


 「ふふっ、大好きですよ。大切なお友達です」


 「そうだな、明るくて、可愛らしくて良い子だよな」


 ギュッ


 俺がそう水無瀬さんのことを褒めた途端に蛍が嫉妬したのか俺の身体の一部を掴む。


 「ほ、蛍、友人としてそう思っているだけだからな?勘違いするな!」


 「本当ですか?」


 「当たり前だ!もう、蛍は……」


 そう言って、蛍を背中から抱き締め


 「一人の女性として愛しているのは蛍だけだよ、本当だからな」


 「はい……」


 抱き締めた蛍の肌の滑らかさを感じていたら


 「先輩、そろそろ先に上がりますね」


 明かりを消した浴室の中では窓から届く微かな月明かりしか光源がない、そんな浴室の狭い湯船から蛍が立ち上がると、目の前には蛍の可愛いお尻が現れる、それに触れたい気持ちを我慢して蛍が湯船から上がるのを見送る。


 「……それじゃ、準備しますね。ちょっと恥ずかしいですけど」


 「あぁ、蛍なら絶対に似合うと思う」


 「……もう、先輩ったら……」


 蛍が浴室から出ると脱衣所の明かりがつき、曇りガラスの向こうに蛍の裸体が浮かぶ、これはこれでエロい。さて、俺も湯船から出るかなと立ち上がると、扉が開き、バスタオルを身に纏った蛍が


 「先輩のお願いを聞いてあげるんですから、私のお願いも……」


 そう途中まで言った蛍の視線はどんどん下に向かう。ある所まで視線が下がったらそこで止まり、少し顔を赤らめた蛍が


 「先輩ったら、もう……エッチ」


 そんなことを笑顔で言う。仕方ないだろ、蛍が握るからだ。


 ☆☆☆☆☆


 浴室から出て、腰にタオルを巻き、だて眼鏡をかけてベッドに寝転がる。


 「……む、睦月さん、お加減はいかがですか?」


 この休憩所兼宿泊施設にたまたまあったナース服を身に纏った蛍が役になりきって尋ねてくるので


 「大丈夫ですよ、鳴海さん」


 俺もいつもと異なり蛍の事を名字で呼ぶ、そういうお約束なのだ。今日は蛍がナース服を着る代わりに俺はだて眼鏡をかける、そんなことになった。どうやら蛍は俺がナース好きだと思い込んでいるようで、俺がナース相手に浮気しないように恥ずかしそうにしながらも一生懸命に頑張ってくれている。それにしても、ナース服なのにスカートが短くて、誠にけしからん!本当にありがとうございます!!


 「……それじゃ、睦月さん、お世話しますね」


 横たわる俺の身体に蛍が股がるよう乗ってくるので、太ももを触ろうとしたらつねられた。


 「もう、駄目ですよ!今日は私がお世話するんですから……」


 蛍が恥ずかしそうに、でも笑顔でそんなことを言った。


 あぁ、あの純真無垢な少女を随分と艶っぽい眼ができる女にしてしまった。俺のせいだな、蛍のご両親に申し訳ない、これは一生かけて責任を取らなくちゃ。


 今夜はまるで蛍に抱かれるような心持ちで、その感触を味わいながらそんなことを頭に浮かべた。


 


 

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