魔王からは逃げられない


 「……姉さん、何のお話でしょうか?」


 燕 姉さんが俺の部屋に訪れ、床に正座するように言った。俺は逆らうこと無く素直に正座した。

 黙って俺を睨む姉さんに一体何のお話なのか……とりあえず聞いてみた。


 「……創、自分の胸に手を当てて考えてごらんなさい……」


 と冷たい眼で俺を見ながらそんな事を言う、手を当てて考えてみた……さっぱりだ。思い当たる事がないと姉さんに言ったら


 「……クズが!」


 クズ呼ばわりされた!?何故だ!!とりあえず暴言を訂正するように求めたら


 「……創、貴方は三人の女の子の優しさに甘え、答えを待たせているのよ?」


 と姉さんが言った、それを聞いては俺も返す言葉が無かった。


 「……この前は海水浴に行ったわね……」


 姉さんの言うとおり海水浴に行った。詳しく言うと、俺と玲楓、月香さん、二階堂さんに加え、保護者兼、運転手の父さんに、燕姉さんで行った。母さんはお仕事があって残念ながら行けないとなったときに姉さんが


 「……お母さん、お父さんに変な虫が寄ってこないように私がきちんと監視してるから!」


 と姉さんが嬉しそうに言っていたのは流石の母さんも困り顔だった。普通は逆だろうと……


 そんな訳で海水浴では父さんには姉さんがマンツーマンでくっつき、俺は……


 意外と立派な胸部をもっていた玲楓の谷間から目が離せなかったり、


 ミニスカートを堂々と履ける太腿からのラインが素敵な二階堂さんのお尻をチラチラ見たり、


 もう、とある格ゲーの女性キャラかってくらい腹筋が割れていた月香さん、本人はそれを恥ずかしそうにしていて……恥ずかしがる姿が寧ろ有りだなと思えた


 そんな三人と水辺で遊んだ……水着なんてもう裸みたいなものだろう?しばらくはその眩しい水着姿が頭から離れなかった。


 「……変態が!貴方が彼女達の水着姿を舐めるように眺めていたのはみんな知ってるのよ!」


 変態呼ばわりされた!?……そ、そんなにじろじろ見ていたつもりはないんだけどな……


 「それに比べてお父さんは紳士だったわ……私の水着姿を貴方みたいにじろじろ眺めずにチラリと見たら、後は目を反らして……ふふっ、可愛いお父さん」


 と、うっとりしながら言うが……普通は娘の水着姿をじろじろ見ないだろう?後は、とある部分が可哀想だから目も当てられなかったのでは?……とは言えず黙って聞いていた。


 「……そして最近は週末ごとに三人の女の子達と交互にお出かけしてるわね?」


 ……そうなのだ、最近は先週が玲楓とお出かけしたら、今週は月香さんと、そして来週は二階堂さんと出かける……予定になっている、どうやら三人の女の子達が話し合って決めたようなのだ……


 「……この、ハーレム野郎がっ……!」


 ……やはり、三人の女の子はどうやら俺のことを好きらしい、お互いにそれを知っていて……交代でアプローチすることにしているみたいだ。


 「……創、私の妹分たちを泣かせたらただじゃおかないからね!」


 どうやら神宮寺家で護身術を習い始めた玲楓と二階堂さん、そして神宮寺家の月香さんは、俺の姉の鳴海 燕と出会い、桃園の誓いがなされたらしい。そこで義姉妹が誕生したようだ。


 ……それにしても、俺という本当の弟のことは泣かしても構わないと思っているのは如何なものか……


 「……創、みんな良い子よ?学生時代はあっという間、自分の気持ちに素直になって……二人だけの思い出を作るのは大事なことよ?」


 と姉さんは急に優しく話し掛けてきた。


 「……きちんとなさい、誰を選ぼうと責めないから。選ばれなかった子達が次に進めるように……」


 と、それだけ言って姉さんは俺の部屋から出ていった、俺は一人の女性のことを思い浮かべていた。

 

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