Across the sea
「……ふふ、本当に可愛いなぁ」
大学の授業前にノートに挟んである写真を見る、少し前に帰国した際に燕ちゃんが撮影した「創くんとのツーショット」の写真だ。
この写真を撮影した後に、創君から愛の告白をされた。創君とはお母さんぐらいの年の差がある私のことを本当に好きだと言ってくれた。創君が子どもの頃に一緒にお風呂に入ったり、ベッドで寝たりしていた男の子が……
勿論、私は今でも旦那様のことを愛しているし、一生、旦那様の妻として生きていきたいと思っているので御断りした。ましてや、創君には未来があるのだから私のような女よりもっと素敵な女性が必ず現れるから断るのが当然だと思っているが……
「……でも、少し、ときめいちゃったな」
と口許が緩む。旦那様には私が一目惚れして付きまとって恋人になった、大きくなって旦那様にも甥っ子にもどこか似ている創君から告白されたのは……若い頃の旦那様に告白されたみたいで嬉しかった。
そんな風に物思いに耽っていたら、大学で知り合った日本人の女性が近寄ってきた。
「お久しぶりです、瞳さん。こちらに戻ってきていたんですね」
彼女は長い髪を靡かせながら私の隣に座り、私の手元を覗く。
「……写真ですか?」
と聞いてくるので「ふふ、親戚の子なの、可愛いでしょ?」と見せてあげたら
彼女はその写真を見て、目を見開いた。
「……どうかした?」
と私が聞いたら彼女は慌てて鞄の中からしっかりとカバーされた写真を取り出して私に見せてくる。
「え?これって……?」
彼女が見せてきたのは……多分、旦那様の甥っ子と、隣の彼女の若い頃の写真。何故か、彼女はメイド服姿だが……
「……文化祭の時に撮影して貰った写真なんです」
と彼女は恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうに言う。こんな風に持ち歩いているってことは好きだったのだろう、いや、今でも好きなのかもしれない。
「……私の写真はこの甥っ子の息子さんの写真なの」
と話したら、彼女も
「私は睦月先輩や鳴海先輩と同じ高校の後輩なんです……」
と話してきた、地元が一緒だとは聞いていたが……こんな共通の知り合いがいるとは……世間は狭いなと驚いた。
「ふふ、それじゃ、授業が終わったらお茶でもしましょう?学生の頃の二人の話を聞きたいわ」
と私が言ったら
「……はい、私も先輩達の近況が聞きたいです」
と隣に座るシオン イチイが笑顔で言った。
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