神宮寺家の女たち⑤


 神宮寺家の倉庫のお手伝いのお礼として食事を注文してくれていた。鰻重の特上なんて食べたこと無いから美味しく味わいたいと箸を持つのだが……


 「……創さん、ご立派でしたよ?」と紅花さんが言えば


 「……創さん、可愛いかったです」と月香さんは顔を赤らめて嬉しそうに言う。


 「……創さんは体格がお父様より小柄だから……でも、まだまだ これから成長する可能性を秘めていらっしゃいますからね!本当ですよ!」と紅花さんが更に言う。


 ……お願いだから俺が帰ってからそういう話はしてくれないかな。紅花さんと月香さんは嬉しそうに先程、浴室で見たものについて話す。


 「……創さん、ありがとうございました。嬉しかったです」と紅花さんがお礼を言う。


 「……いえ、お粗末様でした」と抑揚なく言えば


 「ふふ、創さんの裸も眼福でしたが、私に感謝の気持ちを伝えたいと自分が恥をかくことも厭わない創さんのお気持ちが嬉しかったです」と言う。


 「……殿方の中には……女は男にかしずくもの、女は男を悦ばせるだけの存在、そういうことを当然と思って平気で仰る方もいらっしゃいますから……」と悲しそうに言う。もしかしたら、紅花さんの別れた旦那さんはそういう人だったのかもしれない。


 「ふふ、創さんなら喜んで いつでも お背中をお流ししますから」と紅花さんは先程の表情から一転して明るく言うと


 「……お母様、それは私の役目ですわ?ここは若い者に譲る場面ではないですか?」と月香さんが紅花さんに文句を言う。


 ご馳走になり、帰る際に


 「……月香さん。もしも、その『薬』を使わなくてならないくらい困ったときがあれば言ってください。俺は月香さん達ほど強くないけど……なるべくその『薬』を使わなくて済むようにお手伝いしますから」


 と伝えたら、月香さんは目を丸くしてから、本当に嬉しそうに笑って


 「ありがとうございます。その際には創さんを頼りにしますね」


 と、会話をしてから神宮寺家からお暇した。


 とりあえずこれで神宮寺家のお手伝いは完了した、そしてこの女性達に背中を流してもらった出来事が……最初の子どもの頃の夢を見た一因である。


 実は、この時はまだ「赤ちゃんの作り方」を調べる前だった。だから男の証なんてモノは「小便に使うもの」という認識で、人に見られたくないのは「排泄器官で汚いから」だと思っていたのだ……だから、あの時は「何故か、恥ずかしい」けど「きちんと洗えば見られても」大丈夫だった……


 「赤ちゃんの作り方」を調べた後に悶絶した……そんなことに使用するモノを堂々と見せてしまった!?もう紅花さん達と顔を合わせるのも恥ずかしい……


 「性交」を知ったことで俺の身体も変わった、それまでは反応したことのなかった男の証が思い出したかの様に反応することになった。「認識」することで何かの回路が繋がったかの様だった。この前も初めてパンツを汚してしまい、こっそり洗っていたのを母に見られた……母は黙って見てない振りをしてくれたが、俺は食卓で母の顔を見れなかった。


 ……あの時は知らなかったから紅花さん達の前で反応しなかったから良かった。もし、反応している状態を見られたらもっと二人は大騒ぎしていただろう……


 ここで、普通なら美女と美少女の神宮寺家の女性たちを夢に見るのだろうが、俺は子どもの頃の初恋のお姉さんを思い出していた。それぐらい俺には根の深い存在なのだ。


 今ならあの時のお姉さんは父方の亡くなった叔父さんのお嫁さんで、母さんより少し年上の人だと知っていけど、当時は父さんが「叔母さん」と呼ぶのを


 「パパ!おばさんじゃないよ!おねえさんだよ!」


 って俺は注意して「はは、そうだな」って父が笑っていたのを思い出す。


 お姉さんは俺が小2から小4までは近くに住んでいたが、小4の時に「姉が住んでいる外国に行って勉強してくるわ」と旅立ってしまった。その時、俺は凄く泣いたのを覚えている。


 また、お姉さんに会いたい気持ちも強いが、もし年を重ねて「あの時のお姉さん」じゃなくなっていたらという不安もあって複雑だ。両親は叔父の墓参りにこっそり帰国した時に会ったりしてるらしい。


 そんな風に一連の出来事を思い返していたが、一向に朝 起きたときの「反応」はおさまらない……


 「どうしたものかな……」と、朝から元気な自分の分身に問い掛けるも返事は無かった。

 

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