後日談③


 「……先輩、最近こそこそと何を見てるんですか?」


 蛍がジト目で俺を見てくる。


 「……この前、お部屋にご飯ですよと呼びに行ったら何かを慌てて隠してましたよね?」


 「……蛍が心配するような変なものは所持してないぞ?」


 そりゃ蛍と付き合う前はエッチな本など所持していたが、付き合い始めた時に


 「……他の女の子のことを見ないで欲しいし、他の女の子でそういうことを考えるのもしないで欲しいです……」


 と蛍に言われたので全て処分してそれ以来、手にしていない。


 「……変に勘繰られるのも嫌だから……素直に白状するよ」


 そう言って本棚から取り出したものを蛍に渡す。蛍は受け取って開いてみると「あっ!?」と声を出して……赤くなって俯く。


 「ふふっ、綺麗な人だろう?知ってるか?俺のお嫁さんなんだよ」


 そう言って俺は蛍曰くこそこそと眺めていた『蛍のウェディングドレス姿の写真』を蛍から受けとる。


 頭に純白のベールを着け純白のドレスを身に纏った花嫁姿の蛍の写真……これを見て……多分ニヤニヤしていたと思う。


 「……これはプロがメイクしてくれたから綺麗なんですよ……」


 蛍は俺が綺麗と褒めてもすぐに謙遜してしまう。


 「……普段の蛍も綺麗で可愛いと思ってるけど、この日の蛍は特別に綺麗で、写真を見直しても頑張って良かったなと思うんだ……」


 当初、蛍は結婚式を挙げなくても良いと言ったのだが結婚式は必ずやると俺の方が譲らなかった。蛍のウェディングドレス姿を見たかったし、蛍のご両親にも見せたかった。蛍を背中から抱き締め


 「……蛍がいなかったら俺はろくでもない生き方をして、ろくでもない死に方をしていたと思う……」


 時が経ち薄れた違う道を歩んだ記憶のことを思いながら話すと


 「……私も先輩がいなかったら……学校を辞めて……ずっと家に引きこもっていたかもしれません……」


 俺の知る違った道では……蛍は自ら死を選んだ……そう思い出したら自然と蛍を強く抱き締めてしまった。


 「……先輩?」


 「……なんでもないよ、蛍。……そうだな、蛍と結ばれたのは運命だったんだな、そう思うよ」


 宝物の写真を本棚に戻し


 「……それじゃご飯にでもするか?たまには俺が作ろうか?袋のラーメンくらいしか作れないけど」


 「……たまには良いかもしれませんね」


 蛍の手を取って居間へ向かう、蛍の指から金属の感触がした。



 


 



 

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