第78話
「あけましておめでとうございます」
1月2日に蛍が家に新年の挨拶に来てくれた。
「あけましておめでとう、蛍。今年もよろしく」
元日は家族で初詣に行ってきたらしく
「……先輩、合格祈願のお守りです」
お守りとお節料理を持ってきてくれた。
「さぁ、上がってくれ」
と言ったら「お勉強の邪魔にならないようにすぐに帰りますから」と言いつつコートを脱いで
「……先輩、これありがとうございます」
そう言って身に付けているネックレスを手に取る。クリスマスの時に俺があげたものだ。
「……そんな高価なものじゃないんだが」
「……いえ、とても可愛いです」
「蛍こそ手編みのマフラーなんて大変だったんじゃないか?」
「……どうしても一度作ってみたかったんです」
「……手編みって……重い女だと思われましたか?」と蛍は心配そうに聞いてきたが「そんなことはないぞ、俺は嬉しかったよ」と心から思っていると伝えた。
「……それなら良かったです、お節料理も食べてください」
俺が食事は適当に済ませていたことは蛍にはバレバレだったようだ。
「一人暮らしじゃお節料理なんか食べないからなぁ、久しぶりに食べたら美味いもんだな」
「……先輩、どのお節が美味しかったですか?」
「蒲鉾とか好きだぞ」
「……蒲鉾ですか……他には?」
「……昆布巻きとか」
「……栗きんとんと黒豆ではどちらが美味しかったですか?」
蛍はなにがそんなに気になっているのだろう?
「……黒豆かなぁ」
そう答えたら蛍は悔しそうな表情をして
「……黒豆は母が作ったんです……」
そんなことを言う。どうやら栗きんとんは蛍が作ったようで……
「……蛍、栗きんとんも美味しかったぞ、俺は栗きんとんが家で作れるなんて思っても見なかったから!」
「……大丈夫です、修行してきます」
修行ってなんだ?山籠り?
「……それでは勉強の邪魔にならないように帰ります」
玄関で上目遣いになる蛍に軽くキスをして
「……なぁ、蛍。試験に合格したらご褒美くれないか?」
と俺は蛍に唐突にお願いした。
「……ご褒美ですか?ご馳走とか?」と蛍は首を傾げるので耳元で
「……蛍が欲しい」
と囁いたら顔を赤くして俯いて「……はい」と答えた。
途中まで送ろうかと思ったのだが「……大丈夫です、勉強頑張ってください」と言うので玄関でお見送りした。
……試験までもうあと二十日を切った、もうひと頑張り。
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