第71話


 ……ヤバい、朝起きたら身体が怠い……熱もありそうだ。これは風邪引いたかな……今日が休日で助かった……あれ?でも今日は蛍が来るはずじゃなかったかな……ぼんやりした頭でとりとめもなく考えていたら……呼び鈴が鳴った。


 怠い身体を引きずって扉を開けると蛍がちょこんと立っている。


 「……おはようございます。……先輩?大丈夫ですか?」


 俺の様子を見て蛍はすぐに体調が悪いと気付いたようだ。


 「……どうやら風邪を引いたみたいだ。蛍、来てもらって悪いが……今日は帰ってくれないか?」


 そう言ったのだが


 「……先輩、その様子じゃ買い物も料理も辛いですよね?それだけでもお手伝いしてから帰りますから……」


 蛍がどうしてもと言ってくるので上がってもらう。


 「……先輩、横になっていてください……」


 お言葉に甘えて布団に横になると


 「……ちょっとスポーツドリンクとか買ってきます」


 蛍が出掛けてくると言うので鍵を持っていってくれと渡し、少し眠る……


 「……ん?」


 額に冷たさを感じて意識が覚醒する。


 「……すみません、起こしてしまいましたか?」


 蛍が額に冷たいタオルを当てていてくれたみたいだ。


 「……先輩、少しでもお粥食べられますか?」


 「……あぁ、食べられると思う……」


 蛍が飲み物とお粥を用意してくれて……


 「……あーん」


 蛍が匙に掬ったお粥をふうふうしてから俺に食べさせようとしている……


 「……蛍、一人で食べられるから……」


 「……あーん」


 ……蛍はどうしても譲る気は無いようで……大人しく頂くことにした。


 「……先輩、召し上がったらお薬を飲んでまた寝てくださいね」


 「……あぁ、ありがとう」


 ……目を覚ますと枕元に蛍が座っている。体調は……駄目だまだ悪い。頭もぼんやりする……それでも窓の外の景色から何時くらいかはわかるので……


 「……蛍、お願いだから暗くなる前に帰ってくれ……」


 「……でも先輩……」


 「……暗くなったら蛍を一人では帰らせないからな、這ってでも蛍を家まで送るから……」


 蛍になんかあったら俺が耐えられないからと半ば脅すように訴えると蛍も「……わかりました」と納得してくれたようだ。


 「……蛍、鍵は郵便受けに入れておいてくれたら良いから……今日はありがとうな」


 ぼんやりした頭でお礼を言ったら最後に蛍が汗をかいた服だけでも取り替えたいと言うのが聞こえて……


 ……目を覚ます。時計を見ると随分寝ていたようだ。体調も随分回復した。これは蛍にお礼をしなくちゃならないな……と身体を起こすと


 「……そう言えば汗をかいた服を替えたいって言ってたな……」


 着替えさせられている服を見てふと気付いたのでズボンを下ろすと……


 「……流石にこれは変えなかったよな……」


 蛍は流石に俺の下着までは替えなかったようだ……いや、勿論、一線を越えた二人ではあるが……明るいところで普段の状態を一方的に見られたら……少しどころじゃなく恥ずかしいからな。


 本当に蛍には頭が上がらなくなってきたな、今度何かお礼しなくちゃと考えながらもう一眠りしようと目を瞑った。


 


 

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