第51話


 その日は朝から何故か筋トレをしていた。理由は落ち着かなかったからだ。


 「……蛍、遅いな……」


 約束の時間を過ぎても現れない蛍のことが心配になって外を見に行こうと思って扉を開けたら……不安そうな顔をした蛍が立っていた。


 「……あっ!先輩……」


 「……蛍」


 蛍も今日は呼び鈴を鳴らすのに躊躇いがあったのだろう。


 「……蛍、無理しなくて良いぞ、今日じゃなくてもいいんだ」


 「……いえ、大丈夫です……」


 「……そうか、それじゃ先にシャワーを浴びておいで」


 心臓の鼓動が蛍に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい激しかった。

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