28 聖女さん、まさかの来訪者
依頼を報告して報酬を貰う為に、私達は冒険者ギルドへと戻ってきた。
「おう、お疲れさん……っても、お前ら的にはCランクの依頼なんて朝飯前だと……って滅茶苦茶血塗れじゃねえか! どうした!?」
入口付近の喫煙所の前で声を掛けてきた部長さんが、主にステラの風貌を見て驚愕してそう言う。
「あ、あれ? お前ら受けたのって本当にCランクの依頼だったよな? これまさかアレか? どっかで依頼難易度の査定間違ってたか!?」
げっそりとした表情の部長さんは、煙草の火を消してから、頭を下げて言う。
「……慰謝料諸々は別口で用意するんで、この件はご内密で頼む。この通りだ」
「お、大人のガチ謝罪だ……」
「いや、今日みたいに俺が死ぬ程キレられんのは良いんだ。でもこの査定に関わった奴は守ってやんねえと……でも残業代の件で上とモメたばかりだからよ。うまくやれるかどうか分からねえし」
「ああ別に良いって慰謝料とか。第一あんなもん事前の査定とかで読めるかよ。この前の非じゃねえレベルのイレギュラーだったしな。こうして無事に帰ってこられているからそれで良い」
「そうか……悪いな。ありがとう」
改めて礼を言った後、部長さんは私達に聞いて来る。
「それで、一体どんなイレギュラーが有ったんだ。今後の為にも教えてくれねえか?」
「屋敷が幽霊屋敷になってた」
「成程幽霊屋敷……は?」
私がそう答えると部長さんは間の抜けた声を出す。
「幽霊って……あの幽霊か?」
「あの幽霊以外に幽霊なんてないっすよ」
「だ、だよなぁ……ってちょっと待ってくれ。幽霊なんて本当に……いや、でも事実居たからそんな怪我負ってんだよなぁ。居るのかぁ」
私達の誰かが怪我を負っただけで話の信憑性が増すんだ……まあ私も知らない所でステラとかが怪我してたらそうなるかも。
「ちなみに今一人付いて来てるっすよ」
「え……いやいやお前、流石にそれは冗談だろ」
「ふむ、この男には見えておらん様じゃの」
私の隣に立っていたレリアさんがそう呟くけど、部長さんの反応は無い。
「いやいや、いるんすよ。ボクやシルヴィさんも最初は見えて無かったっすけど、色々あって見えるようになったんで、部長もその内見えるようになると思うっすよ!」
「ちなみに色々ってなんだよ」
「取り憑かれたっす」
「その内って、そんな事あってたまるか!」
と、そんなやり取りをしていると、どこかに外出していたのかギルドの方に向かって歩いて来た、受付嬢で多分マフィアのアリアさんが声を掛けてくる。
「あ、お疲れ様です……って何ですかその怪我。これはまた色々イレギュラーが有って……って、現在進行形でイレギュラーが起きてますね。何ですかその……皆さんは見えてます?」
「うん、見えてるし分かってる」
「私達の味方っす」
「ま、そういう訳じゃ。お主が誰なのかは存じ上げんが、警戒はしなくてよいぞ」
「そうですか」
瞬時に僅かな警戒態勢を取っていたアリアさんは、それを解く。
そしてそんな当たり前のように会話を繰り広げたアリアさんに、部長さんは問いかける。
「あの……これ見えていないの俺だけな感じか? それかもしかしてこれドッキリか何か? 俺何か試されてる?」
「さあ、どうでしょうか……それより」
幽霊という明らかな超常現象をそれよりの一言で片づけたアリアさんは、部長さんに問いかける。
「あの事、アンナさん達にお伝えしましたか?」
「いや、これからだ」
「あの事?」
なんだろう……冒険者としての事なら特別話す事なんてもう無さそうだし。
……という事はもう一つの方かな。
そして私の問いかけに部長さんは答える
「実はな、アンナさん。お前に会いたがっている奴がいるんだ」
「私に? 誰だろ……もしかしてしーちゃんがギルドに来てたりした?」
「いや、アイツ絡みではあるが違うな」
しーちゃん絡みではあるんだ。
そしてまた知らない所でしーちゃんが訳の分からない事に巻き込まれてそうで心配になっている私に部長さんは言う。
「驚くと思うが……相手はお前の後任だよ」
「私の後任? ……ってまさか!」
「ああ。国を追放されたお前に変わって新しく聖女の座に就いた若い女だ。ソイツが今、お前を探しにこの国にまで来ている」
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