12 聖女さん、帰宅

「生憎ですが、ただいまシングルがお一部屋空いているだけでして」


 フロントで部屋の空き状況を尋ねた所、シングルの部屋が一部屋空いているだけらしい。

 ……なるほど。

 充分。


「いや、大丈夫。駄目なら無理にとは言わないけど、私達二人でその部屋に泊まる事ってできる?」


「あ、アンナさん!?」


「か、可能ですが……ああ成程。そういう……」


「え、今何を察したんですか!?」


 シルヴィが何やら面白い感じに騒いでいたけど軽く流して、部屋の鍵を貰う。

 色々と事態が呑み込めていない様子ではあったけど、ちゃんとシルヴィも後を着いてきた。

 着いてきて……何やら気付いたらしい。


「ず、ずっと良く分からない事言ってましたけど、ま、まさか……す、すみません! い、嫌とかそういうんじゃないですけど、心の……心の準備が!」


「あーいや、シルヴィが考えたような事じゃないから大丈夫。というか私そっちの趣味無いし」


「え、あーそ、そうですか……」


 そう言ってシルヴィは胸を撫で下ろす。

 ……というか嫌じゃないんだ。


 それはさておき。


「そ、それでどうするんですか? 結構小さいですけど、一緒のベットで眠る感じですか?」


「いや、それは無いかな」


 ……というか嫌じゃないとか言い出した時点で、なんかその行為に結構な危険を感じるし。


「じゃ、じゃあどっちか片方が床ですか? そ、それなら別々の宿を取った方が良かったんじゃ……お話なら明日もできる訳ですし」


「それもハズレ」


 言いながら私は部屋の中心にしゃがみこんで魔法陣を展開する。


「え? 何やってるんですか?」


「転移魔術の準備をしてるの……と、できた」


 そう言って私は立ち上がる。


「準備完了」


「転移魔術って……これどこに繋がってるんですか?」


「私の自宅」


「自宅……そういえばそんな意味深な事ずっと言ってましたね……って、まさか」


「そのまさか。私の自宅、カモフラしてまだ元居た国にあるんだ」


「え、ええ!? い、いいんですかそんな事して! 怒られますよ!?」


「そりゃ駄目だけど滅茶苦茶な理由で追放されてるんだからこっちもやりたいようにやるし。というか怒られるような事が有っても返り討ちにできるしね。まあとにかく乗って乗って」


「は、はい」


 そう言ってシルヴィと魔法陣の中心に立って柏手を打つ。

 すると一瞬で視界が見慣れた景色へと変わった。


「いらっしゃいシルヴィ」


「お、お邪魔します?」


 約半日ぶり。

 友達を連れて自宅に帰宅だ。

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