キャンプの始まり
今日は前に約束したキャンプの日、持ち物は着替えとタオル、ゴミ袋と財布と携帯だけでいいと言われ、土曜日の朝から家を出て、キャンプ場行きのバスに乗った。
「林太郎くんも荷物少ないね」
「うん。瑠奈はなにを持ってんだ?」
瑠奈はリュックを背負い、細長いケースを4個も持っていて、なにが入っているか謎すぎる。
「分からないけど、キャプに必要な物でしょ」
「そうだろうけど」
瑠奈と乃愛先輩は、バスの1番後ろの席で楽しそうに話し、僕と林太郎くんは前の方でたわいもない会話をしながらキャンプ場に向かった。
「到着致しました。お気をつけて前の方へどうぞ」
着いた場所は、パッと見る限り山しかない場所だったが、キャンプの方はこちらと書かれた看板はあった。
「少し登ったところにあるから、とりあえず登ろう!」
乃愛先輩を先頭に山登りが始まり、意外とあっという間に目的地に着いた。
山を登るとかなり広い草原が広がっていて、今日来たのか、前からキャンプをしていたのか分からないが、既に四組のグループがキャンプをしていた。
「広ーい!」
「俺、キャンプとか初めてだわ」
「僕も」
「私はお父さんと結愛と一緒に何回か来てるから、困ったことがあったらすぐ言って!」
「分かりました!」
「とりあえず、あの建物で道具とか借りるから、四人で行こう!」
四人でキャンプ場に唯一ある建物に行き、割り勘でお金を払い、4人用テントと、バーベキューセットを借りた。
「どこにテント張ります?」
「真ん中!」
「瑠奈はバカだなー、真ん中は目立つよ」
「バカって言ったのが蓮じゃなかったら、この山に埋めてるところだった」
「よかった。僕が僕で」
「なに深そうで空っぽな台詞言ってんだ」
「バレた?」
「おう」
「乃愛先輩、どこに張るのがいいんですか?」
「キャンプ場によるんだけど、あのコンクリートの建物は手を洗ったり、料理できる場所なのね、意外と使うんだけど、あの近くに張ると人通りが多くなっちゃうから、あれから遠すぎなくて近すぎない場所かな!」
「さすが乃愛先輩!」
「まぁねー!」
「私にはバカって言ったくせに」
「瑠奈、せっかくのキャンプなんだからそんなに頬膨らまさないの」
「今日は我慢する」
それから四人で、木で日陰になる場所に協力しながらテントを貼り終わったが、1時間もかかってしまった。
「蓮!入ってみよ!」
「はい!」
乃愛先輩とテントに入ると、外から見た感じより中は広く、かなり居心地が良い。
「いい感じですね!」
「ね!」
「おー、広いじゃん」
「四人寝るだけなら充分だね!」
「あー、蓮と私だけのテント借りようかな」
「それもありですね」
林太郎くんが瑠奈と付き合うチャンスかもしれないと思って言った発言だったが、瑠奈は目を見開いて四つん這いで近づいてきた。
「蓮?私とは寝たくないの?私達は特別なんでしょ?違うの?」
「ち、違くないよ?」
「チビ瑠奈、蓮と特別ってなに?」
「特別は特別、乃愛先輩にはなれない特別」
修羅場の予感......テントから出よう。
「蓮」
「は、はい......」
「待って」
乃愛先輩は僕の服を引っ張り、僕を押し倒すと、欲求不満が爆発したかのような勢いでキスをしてきた。
「ちょっと!乃愛先輩!」
「私達も特別だもんね?ね‼︎」
「は、はい‼︎」
「チビ瑠奈はキスできなくて可哀想に〜」
拳をグッと握りしめ、今にも殴りかかりそうな瑠奈の服を林太郎は背中から掴み、瑠奈が暴れないようにしていた。
「瑠奈、落ち着こうな」
「......うん」
「みんな、朝ごはん食べてきた?」
「僕は食べた」
「私も」
「乃愛先輩は蓮から降りてください」
「しょうがないな〜」
「瑠奈は食べたか?」
「食べた」
「んじゃ、お昼まで散歩でもしません?」
「賛成!」
四人でキャンプ場を散歩し始め、このキャンプ場には釣りができる川があるのを見つけた。
「乃愛先輩、川の存在知ってました?」
「知らなかった!」
「私は知ってたけどね!」
そう瑠奈がドヤ顔で言うと、乃愛先輩は呆れた表情で瑠奈を見た。
「はいはい」
「なにその反応!ちゃんと調べたんだもん!」
「証拠は?」
「私が持ってた細長いケースの中身は釣竿でーす!」
一度、自分で釣った魚を食べてみたいと思っていた僕はテンションが上がった。
「本当⁉︎釣りできるってこと⁉︎」
「うん!みんなの分持ってきた!」
「瑠奈〜!天才じゃ〜ん!」
「わーい!褒められたー!」
「蓮」
「ん?」
「乃愛先輩を見てみろ、嫉妬の悪魔が乗り移ったみたいな顔してるぞ」
「あ......」
「誰が悪魔だ‼︎」
「ぐはっ‼︎」
林太郎くんは真っ直ぐ腹に蹴りを入れられてもがいているが、僕はそんなことより釣りがしたい。
だが、キャンプ場は広く、まだまだ見てない場所があり、散歩を続けた。
「自然の中を散歩するのって気持ちいいですね!」
「うん!梅雨入りだけど、晴れてよかったね!そういえば、6月1日って花梨の誕生日だったらしいよ!」
「そうなんですか⁉︎」
「ちなみに梨央奈は5月9日」
「どっちも終わってるじゃないですか」
「雫は6月3日」
「3日前⁉︎てか、よく知ってますね」
「私も最近知った!」
「教えてもらったんですか?」
「SNSのプロフィールに書いてあった!」
あー、なんで今まで気づかなかったんだろう。それを見ればみんなの誕生日分かるじゃん。
「雫先輩の誕生日、祝ったりしたんですか?」
「おめでとうって言ったら無視された」
「雫先輩らしいと言うかなんと言うか......」
僕はみんなの誕生日が気になり、SNSを開いた。
「美桜先輩の誕生日、6月6日で今日ですよ!」
「そうなの?」
「おめでとうございますとだけ送っておきますか」
「私も送ろ」
「乃愛先輩はなんて送るんですか?」
「52歳の誕生日おめでとう」
「嫌がらせですよ。あれ?瑠奈と林太郎くんは?」
「瑠奈は9月5日」
「へー、初めて知りました。って、そうじゃなくて、二人が居ないんですけど」
「あれ?本当だ。てか、幼馴染みの誕生日知らないとか正気⁉︎」
「はい」
「まぁ、知らないパターンもあるのかな?幼馴染みとかいないから知らないけど。とりあえず、瑠奈に電話してみる」
「お願いします」
乃愛先輩が周りを見渡しながら瑠奈に電話をかけると、瑠奈はすぐに電話に出た。
「あ、もしもし?今どこ?」
「喉乾いたから自販機探してる」
「......あるわけないじゃん‼︎」
「え⁉︎そうなの⁉︎」
「テントの中に置いたクーラーボックスに飲み物あるから、それ飲みな」
「分かった!」
「瑠奈、なにしてました?」
「自販機探してた。多分林太郎も一緒だから、私達もテントに戻ろうか」
「そうですね」
テントに戻ると、2人はテントの中で水を飲んでいた。
「2人とも、キャンプ場って言っても山なんだからね?勝手に逸れないこと!」
「はーい」
「林太郎、返事!」
「はい!それで、お昼どうします?」
「食材は瑠奈に頼んでたから、瑠奈、なに持ってきてくれた?」
「え?」
「え?」
瑠奈のこの反応、嫌な予感しかしない。
「釣竿持ってきた」
「うん、それで食材は?」
「釣って食べようかなって」
「......釣れなかったらどうするの‼︎昼と夜!明日の朝!三食分釣れると思ってるの⁉︎」
「釣れないの?」
「あー、もう!とりあえずお昼食べれなくなると嫌だから釣りしに行こ」
このキャンプ......大丈夫か?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます