うるさいうるさいうるさい‼︎
「誰も......居ないの?」
「蓮⁉︎」
雫の呼ぶ声でやって来たのは、瑠奈と美桜だった。
「蓮くんを保健室に運んでちょうだい」
「何があったの?」
「......」
「雫?なんで答えないの?」
「早く運んでちょうだい」
(理由を言えば、この二人は必ず花梨さんと衝突する.....あの子は想像以上に危ない......)
結局二人は心配そうに蓮を運び、雫は昇降口に向かった。
「あれー?死んでなかったんだ」
「逃げずに待っていたのね。私達がなんとかしてあげれるうちに、こんなことはやめなさい。本当に捕まるわよ」
「どっちかって言うと捕まりたいね」
「なぜ?」
「親が再婚して、いきなり知らないお姉ちゃんができてさ、私は寄り添おうと必死だったんだよ?だけどあの千華とかいう女、全然私と距離を縮めようとしなかった。あんな環境で生きていくなら、捕まって一人でいた方がマシ」
「要するに貴方は寂しいのね」
「は?そんなわけないでしょ」
「本当は新しい環境で頑張っていこうとしたのよね」
「......」
雫は花梨をなだめながら、ゆっくり近づいていった。
「花梨さんは間違っていなかった。周りが貴方の頑張りを理解していなかっただけよ。私なら理解してあげられるわ」
「嘘つくな‼︎」
花梨は雫に殴りかかったが、雫は抵抗しないで殴られた。
「大丈夫、私なら貴方を救える。貴方を孤独になんてさせないわ」
「うるさいうるさいうるさい‼︎」
雫は何度殴られてもガードすらせず、やり返すこともなかった。
「分かったようなこと言うな‼︎本当の孤独なんて知らないくせい‼︎」
「私が貴方の人生に手を差し伸べているの......握らないなら孤独なんて語る資格ないわ」
花梨は一歩下がり、少し涙を浮かべて言った。
「アンタなんか信用できない‼︎アンタの噂は聞いてる‼︎人の心を踏みにじる、鬼みたいなな人間だって‼︎」
「私を信じなさい」
「騙されるわけないだろ‼︎」
花梨は走って学校を飛び出して行き、雫は下駄箱に手をついて、ゆっくり呼吸した。
「雫!いた!」
「千華さん」
「どうしたの⁉︎口元切れてる!て、てか大変!生徒会室のガラスが割れてる!」
「私が片付けるわ。怪我するといけないから触らないで」
「手伝うよ」
「千華さん、貴方は花梨さんのお姉さんになる自信がなかった。違うかしら」
「なんでそんなこと聞くの?」
「さっきまで花梨さんと話していたわ」
「......何を話したの?」
「最初は、千華さんにも寄り添おうとしたはずよ。でも千華さんがそれを拒んだ」
「拒んでなんて......私も仲良くしなきゃと思って頑張ったんだけど......」
「けど?」
「ずっと一人っ子だったから、どうしたらいいか分からなくて......自然と距離が出来ちゃった。友達みたいに接していいのか、妹扱いすべきなのか分からなかったの」
「友達扱いでいいのよ」
「でも、今更無理だよ。花梨もあんな感じだし」
「その無理だって考えが花梨さんには伝わっているわ」
「......」
「袋に氷を入れて持って来てくれるかしら。私は生徒会室の片付けをするわ」
「分かった......」
雫が生徒会室に行くと、梨央奈と結愛がガラスを掃除していた。
「雫?その顔どうしたの?」
「なんでもないわ」
「あの花梨って奴にやられた?私がやり返すよ」
「二人とも心配しなくていいわ。花梨さんは捕まりたいと言っていたの。次なにをやるか分からない......貴方達はなにもしなくていい。しばらく生徒会室に来ることを禁じるわ」
「雫、また一人で抱え込むの?そんな怪我して......」
「命令よ。私がいいと言うまで生徒会室には来ないこと」
「......了解。結愛、行こ」
「う、うん」
その頃保健室では、瑠奈と美桜と乃愛が蓮を心配しながら、千華に話を聞いていた。
「んじゃ、蓮がこうなったのは花梨のせいってわけ?」
「多分......」
「乃愛先輩」
「ん?」
「ちょっと来て」
瑠奈は乃愛を連れて保健室を出ていき、昇降口で話をした。
「どうする?」
「私は花梨を許さない。明日......潰す」
「私もやる」
「明日、学校に来たら校舎裏に来て。私が花梨を呼び出しておく」
「分かった。乃愛先輩となら倒せる気がする」
「頑張ろう、蓮のために」
「うん」
千華は生徒会室に氷を運び、美桜は蓮のオデコを冷やしてあげていた。
「痛っ......」
「あ、起きた?」
「美桜先輩?」
「大丈夫?オデコにたんこぶできてるよ」
「めちゃくちゃ痛いです。僕、雫先輩と話してた時からの記憶がないんですけど」
「雫の覇気にやられたんじゃね?知らないけど。ほら、起きたなら自分で冷やして。私は帰るから」
「ありがとうございます」
氷でオデコを冷やしながら生徒会室に行くと、雫先輩は窓ガラスにダンボールを貼っていた。
「なにしてるんですか?」
「あら、起きたのね」
「口どうしたんです⁉︎カサブタになってますよ⁉︎」
「気にしなくていいわ。それよりちょっと手伝ってくれるかしら」
「は、はい」
それから雫先輩と二人で学校中の窓を外し、変わりにダンボールを貼っていった。
「なんか、窓がないだけで薄暗くて不気味ですね」
「そうね」
「なんのためにこんなことしてるんですか?」
「花梨さんに生徒会室のガラスを割られたわ。その時投げ込まれた石が蓮くんに当たったのよ」
「それで僕は倒れたんですね」
「そう。またガラスを割られたら、他の生徒が怪我をするかもしれない。しばらくはダンボールにするわ」
「千華先輩、同じ家で大丈夫ですかね」
「家では部屋から出てこないらしいわよ」
「なら安心ですね」
「とにかく、花梨さんと瑠奈さんが衝突したら、最悪どちらかが死んでしまうかもしれないわ。しばらく生徒会室に来なくていいから、ずっと瑠奈さんのそばに居なさい」
「分かりました。でも、雫先輩が怪我する理由はないです!戦力外かもしれないですけど、僕が雫先輩を守るので!なんでも頼ってくださいね!」
「や、やることは終わったわ。帰りなさい」
「はい!」
その日の夜、雫が怪我をして帰ってきて、音海家は大騒ぎになった。
「雫お嬢様‼︎なぜこんな‼︎」
「大丈夫よ」
「大丈夫じゃありません‼︎誰にやられたんですか?私達が今からその人の家に‼︎」
「大丈夫と言ったのが聞こえなかったかしら」
「もっ、申し訳ありませんでした!せめて包帯を変えさせてください。誰が巻いたんですか?こんなデタラメな巻き方ではダメです」
「ダ、ダメよ」
「お嬢様?」
「触ると痛むの」
「そうでしたか。では、なにかありましたらすぐに言ってください」
「ありがとう」
雫は自分の部屋に行き、蓮が巻いてくれた包帯を眺めた後、蓮がくれたオレンジ色のヘアゴムでポニーテールにして鏡の前に立った。
「変......よね」
「お嬢様‼︎」
急に黒服が雫の部屋を開け、雫は驚いてしまった。
「な、なに」
「ポニーテール......ですか?」
「髪が邪魔だっただけよ。ノックぐらいしなさい」
「申し訳ありません。お友達が来ています」
「名前は?」
「蓮さんという方です。クリスマスパーティーに参加なされた方かと」
「す、すぐ行くわ」
雫はヘアゴムを取り、急いでクシを探した。
「クシ......クシがどこにあるから知らないかしら」
「お嬢様のお部屋のことはなにも」
「髪を結んで跡になってしまったわ」
「別に気になりませんよ?気になるなら、ポニーテールに戻してしまわれた方が早いかと」
「しょうがないね」
いつもの黒いヘアゴムでポニーテールにし、黒服と共に玄関へ向かった。
「お待たせ」
「ポニーテール珍しいですね!もしかして、オレンジのヘアゴムですかー?」
「黒よ」
「さっきまでオレンジ色のしてましたよ」
「そうなんですか⁉︎」
雫先輩はいきなり、黒服の人を何処かへ連れていった。
「死にたいのかしら」
「も、申し訳ありません......」
雫先輩はすぐに一人で戻ってきて、鋭い目つきで言った。
「なんの用かしら」
「な、なんか怒ってます?ちょっと近くまで来たので、雫先輩と遊ぼうかなーなんて......」
「帰りなさい」
「は、はーい.....お邪魔しました〜」
絶対怒ってた‼︎怖い‼︎急に勢いで心を開かせる作戦は失敗‼︎
翌朝、乃愛と瑠奈はいつもより早く学校に来て、校舎裏で花梨を待った。
「本当に来るの?」
「来る。昨日家に電話した時は来るって言ってた」
「ビビって来ないんじゃない?」
「ちゃんと来たけど?」
「あ、来た」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます