パンツ貰うしかない‼︎


結局、美桜先輩は髪を黒くすることはなく、雫先輩に毎日注意されている。

そして月日は経ち12月1日の通学路。


「今日、雪降りそうだね」

「だねー」

「てか、瑠奈のマフラー長すぎない?」 

「そうかな」

「どう考えても長いよ!マフラー引きずってる人初めて見たよ!」

「気にしない気にしない!」


瑠奈は赤くて長いマフラーをつけて暖かそうだ。


「それよりさ、たまに授業に出ないけどなにしてるの?」

「僕が授業に出ない時は、だいたい何かの事件が起きてる時かな」

「そうなんだ。蓮はテストの点数微妙なのに、なんで生徒会にいられるんだろうね」

「失礼な!生徒会として頑張って働いてるの!」

「そうだ!私が勉強教えてあげようか!」

「んー」


瑠奈は何故か成績上位の天才ちゃんだしなー......


「んじゃ教えてもらおうかな」

「んじゃ、今日私の家来てよ!」

「瑠奈の家?部屋にヒーターある?」

「あるよ!コタツも!」

「行く!」

「やった!約束ね!」

「うん!」


その時、目の前で白くて大きな車が止まり、窓が開くと顔を覗かせたのは結愛先輩だった。


「乗る?」

「結愛先輩!」


すると運転席の窓が開き、結愛先輩と乃愛先輩のお父さんが挨拶してきた。


「おはよう!久しぶりだね蓮くん」

「お久しぶりです!」

「よかったら乗っていきな!」

「ありがとうございます!」

「一緒にいる女の子も乗りな!」

「は、はい!」


車に乗ると、もちろん乃愛先輩も乗っていた。


「蓮!おはよう!」

「おはようございます!」

「チビ瑠奈も乗るの?」

「悪い?」

「うん」

「は?」

「瑠奈、2人のお父さんの前でやめなよ」


2人のお父さんは笑顔で受け止めてくれた。


「4人は仲良しなのかい?」

「チビ瑠奈は友達じゃない」

「なんでだ?愛しの蓮くんを取られたからか?」

「なっ!なに言ってるの⁉︎」

「結愛も蓮くんの話をする時はニコニコしてるし、好きなんだろ?」

「はっ、は⁉︎」


親にそういうこと言われると恥ずかしいよねー。てか、結愛先輩がニコニコしてるのって見たことないかも。


「瑠奈ちゃんでいいのかな?」

「は、はい」

「蓮くんと付き合ってるのかい?」

「い、いや、まだです」

「まだ?」

「い、いつか付き合うので!」

「蓮くんモテモテだねー!」

「あはは......」


僕は助手席に座り、瑠奈は空いていた2人の間に座った。


「いやー、蓮くんには感謝してるんだ」

「僕ですか?」

「2人を守ってくれたのもそうだけど、蓮くんは心まで救ってくれた」

「そんな、僕はなにもしてないです。2人が強かったんですよ」

「ありがとう。それに尽きるよ」

「ど、どういたしまして」


この時の僕はまだ知らなかった。後ろで瑠奈が、2人に長いマフラーを引っ張られて首を絞められていたことを。


「着いたよ」

「ありがとうございました!ほら、瑠奈もお礼言って」

「ありがとうございました......」


車椅子を降し、乃愛先輩が座るのを見届けると2人のお父さんは帰って行った。


「こらぁー‼︎死ぬかと思ったわ‼︎」

「どうしたチビ瑠奈」 

「お前らがマフラーで首絞めたんだろうが‼︎親の前だから我慢したけど、後1秒で死ぬとこだったよ‼︎」

「ふーん」

「ふーんってなんだー‼︎」

「はいはい瑠奈、教室行こ」


今にも暴れ出しそうな瑠奈を無理矢理教室に連れて行くと、なにやらクラスメイトが黒板の前に集まって盛り上がっていた。


「林太郎くん、なんの騒ぎ?」

「心霊だよ心霊」

「心霊?」

「新聞部が校内で幽霊を撮ったんだってさ。写真見てみろよ」

「心霊写真ねー」

「見てみようよ!」


瑠奈に手を引かれて黒板前に行くと、新聞が張り出されていた。


「え?幽霊なんてどこに写ってる?」

「ここだよここ!」


瑠奈が指差した場所を見ると、確かにぼんやり人影のようなものが写っていた。


「これ理科室だよね」

「うん!見に行こうよ!」

「理科室の人体模型の影だよ」

「いいから行こ!」

「分かった分かった」


瑠奈は怖がりだが、人が多い明るいうちは意外と平気で、むしろ不思議なものに興味が湧くタイプだ。


2人で理科室へ行くと、理科室には千華先輩と結愛先輩がいた。


「蓮じゃん!」

「2人もお化け探しですか?」

「違う違う、雫からの指令があってね」

「なにがあったんですか?」


結愛先輩は人体模型の目をツンツンしながら説明してくれた。


「幽霊の謎を解いてほしいって」 

「そんなの、本当に幽霊だったら無茶じゃないですか」

「うん。ちなみにこれが新聞部から借りたカラーの心霊写真」

「見せて見せて!」


瑠奈が写真を奪い、食い入るように写真を見つめた。


「僕にも見せて」


モノクロの写真では気づかなかったが、人影のようなものは白ではなく青白い感じだった。


「人体模型の横だから、この辺かな!」


瑠奈が楽しそうに幽霊が写った人体模型の横に立つと、千華先輩が携帯で瑠奈の写真を撮った。


「なんか写った?」

「か、なにも写ってない」

「つまんないのー」

「なにも写ってないの‼︎」

「分かったよ」

「見て!写真が真っ黒!」


千華先輩が見せてきた写真は真っ黒で、何故か不気味な感じがした。


「千華、他の写真も撮ってみて」

「わ、分かった」


千華先輩は僕に携帯を向けて写真を撮った。


「撮れたー♡」

「なんで嬉しそうなんですか」

「千華先輩、それ消してね」

「なんで瑠奈ちゃんがそんなこと決めるの」

「千華先輩の携帯に蓮がいるのが許せない」

「待ち受けにしちゃった♡」

「消せー‼︎じゃなきゃお前を消す‼︎」


瑠奈と千華先輩がプロレスを始めたのを見て、僕は結愛先輩と話をした。


「僕も写真撮ってみますね」

「うん」

「真っ黒です......」

「んじゃ、たまたまじゃないってこと?」

「はい......本当に幽霊いるかもしれないです」

「雫に報告してくる」

「分かりました」


2人はほっといて、僕も教室に戻ろう。

お化けがいるかもしれない理科室に長居したくないし。


雫は報告を受けて、理科室に24時間録画できる監視カメラを設置することにした。


「雫、怖いの?」

「怖くないわよ」

「ならお化けぐらい無視しなよ。たまたまの出来事が重なっただけかもしれないし」

「とにかくカメラは置くわ。なんかの事件かもしれないじゃない」

「なんの事件?」

「分からないけれど」

「まぁ、明るいうちは大丈夫だよ」

「でも、冬に幽霊って不思議ね」

「夏ってイメージあるだけで冬も出るよ。雪女とか、イエティとか」

「イエティはゴリラに雪がついただけよ。それに幽霊じゃなくて未確認生命体じゃない」

「そうなの?」

「とにかく報告ありがとう。またなにかあれば教えてちょうだい」

「了解」


その頃僕は、林太郎くんと話をしていた。


「理科室どうだった?」

「写真を撮っても、写真が黒くなる怪奇現象が起きたよ」

「マジかよ」

「今のところ、幽霊は本物ってことになってる」

「それで瑠奈は?」

「千華先輩とプロレスしてた」

「瑠奈も頑張るなー」

「でも最近は、みんな本気出して瑠奈を気絶させたりしなくなったんだよね」

「遊ばれてるだけだろ」

「多分そうかも」

「蓮ー‼︎‼︎」


瑠奈が大声で僕の名前を叫びながら教室に入ってくると、震えながら僕の腕にしがみついた。


「どうしたの?」

「男の声がした!ねぇ......って低い声で!」

「気のせいじゃないの?」

「絶対聞こえた!」


その日は学校中が幽霊の話題で持ちきりになり、普段注目を浴びない新聞部は満足気だった。


「瑠奈、一人で待てる?」

「んー、怖いから部活でも見学しとく」

「分かった。終わったら連絡するね」

「うん!」


放課後になり生徒会室に行くと、そこには誰も居なく、理科室に居ますと書かれた紙がテーブルに置かれていた。

理科室に向かうと、生徒会メンバーと新聞部が集まっていた。


「蓮くん」


梨央奈先輩に手招きされて話の輪の中に入ると、雫先輩が幽霊について聞いてる最中だった。


「それで、これを撮ったのは何時頃?」

「最終下校時間ギリギリだったから、19時ぐらいです」

「だから暗いのね」

「はい」

「何故人体模型を撮ろうと思ったのかしら」

「元々、心霊写真が撮れたら盛り上がるねって話になって、いろんな写真を撮っていたんです」

「なんで撮ってしまったのよ。新聞部を廃部にするわよ」

「なんでですか⁉︎」


雫先輩は怖がり。学園祭のお化け屋敷の時にビックリしてたから絶対怖がり。間違いない。


「とにかく、今日からカメラを仕掛けるから、貴方達もなにか情報があったら教えてちょうだい」

「分かりました」 

「科学的に証明できるまで、この問題は終わらないわよ」


その日は、雫先輩が取り寄せたカメラをセットするだけで終わり、瑠奈に連絡して校門前で瑠奈を待った。


「お待たせ!帰ろ!」

「瑠奈のお母さん、僕のこと覚えてるかな」

「覚えてるよ!」

「ならよかった。久しぶりに会うから緊張するなー」

「大丈夫!早く行こ!」


なんだか嬉しそうな瑠奈と一緒に瑠奈の家に向かった。


「ただいまー!」

「お邪魔します」


僕の声を聞いた瑠奈のお母さんは、驚いた様子でリビングから出てきた。


「蓮くんじゃない!久しぶりね!」

「お久しぶりです!」


瑠奈のお母さん変わらないなー。


「蓮くんを連れてくるなんて、ついにやったのね!」

「二人で勉強するの!」

「本当に勉強だけかなー?お母さん、二階には上がらないから安心してね」

「うん!」


う、うん⁉︎本当に勉強するだけだよね......


二階に上がり瑠奈の部屋に入ると、可愛いアザラシのぬいぐるみが置いてあり、いい匂いがして理想の女の子の部屋って感じだった。

そんな中、小さな水槽が目を引いた。


「水槽?」

「うん!」


その水槽は、ガラスにハートのシールが大量に貼ってあり、中が見えなく、なにを飼っているのか分からなかった。


「な、なに飼ってるの?」

「グッピーっていう熱帯魚!たくさん子供産むんだよ!オスが蓮で、メスが瑠奈って名前!」

「は⁉︎」

「この水槽は私達の愛の巣なの♡私達の赤ちゃんもいっぱい!」


怖い‼︎なにこの子、怖いよ‼︎


「み、見えないの嫌じゃないの?」

「ハートは愛の証だから♡」

「わー凄い。愛で見えないよー」

「さっそく勉強しよ!コタツ入っていいよ!」

「ありがとう」


コタツに入った瞬間、すべてのやる気を削がれた僕は、思わずそのまま横になってしまった。


「起きてー」

「やっぱり今日は勉強やめない?」

「いいけど、なにする?」

「瑠奈の部屋の物を漁りまくる!」

「そこまで堂々とそれ言う人初めて見たよ。ちなみに漁ってもなにもないよ?」

「ここは?」


白いタンスの引き出しを開けると、そこにはビッシリと下着が入れられていた。


「ご、ごめん!」

「い、いいよ!蓮は特別!どれが欲しい?」

「はい⁉︎」

「蓮だって一人でするでしょ?男の子だもんね。他のでされるなら、私の使ってしてほしい」

「そんな恥ずかしいこと堂々と言う人初めて見たよ‼︎」

「な、なんなら今履いてるやつ......」

「ぬ、脱がない脱がない!」


瑠奈は目の前で顔を真っ赤にしながらストッキングとパンツを同時に半分下ろし、黄色いパンツが見えてしまった。


「もっと恥じらいもってよ!」

「は、恥ずかしいに決まってるじゃん!でも、蓮が喜ぶことはなんだってしたい!」


パンツとストッキングを履き直し、瑠奈は正面から僕に抱きついてきた。


「蓮が我慢できなくなったら、いつでも私を使っていいからね」

「る、瑠奈ってそういう経験あるの?」

「ない。初めても、死ぬまでずっと蓮とだけって決めてるから」

「......」


混乱する感情と、男の本能的な衝動で瑠奈を抱き寄せた瞬間、僕の携帯が鳴った。


「ご、ごめん、電話だ」

「う、うん」

(今、電話来なかったらどうなってたの⁉︎♡) 

「もしもし」


電話に出ると、美桜先輩の慌てたうるさい声が聞こえてきた。


「蓮‼︎蓮‼︎」

「え、美桜先輩、なんで僕の番号知ってるんですか」

「助けて‼︎幽霊が出た‼︎」

「はい?」

「り、理科室の幽霊!」

「切りますね」

「蓮、ちょっと変わって」


瑠奈は僕の携帯を奪って不機嫌そうに言った。


「美桜先輩?」

「瑠奈?助けて!」

「私、今からエッチするから邪魔ないで」

「瑠奈⁉︎」

「エッチ⁉︎お前ら付き合ってたの⁉︎」

「これから付き合うの」

「体からスタートかよ‼︎とにかく助けて‼︎理科室の幽霊が理科室を出ていくのを見たの!」

「見たって人影?」

「そう!青白い人影!」

「助けてってなに。早く帰りなよ」

「腰抜かして動けないんだよ!」

「叫べば誰か来るでしょ」

「雫が来たらどうするの!」

「よしよしって慰めてもらいなよ。じゃあね」


瑠奈は電話を切ると、再び僕に抱きついてきた。


「蓮♡」

「ご、ごめん。美桜先輩からの電話で我に返っちゃった......イタタタタタ!」


瑠奈は僕を強く抱き寄せ、背中に爪を立てた。


「学校戻ろう。美桜先輩と幽霊ぶっ飛ばす」

「なに考えてるの⁉︎」

「美桜先輩と幽霊に邪魔されたの。行くよ」


あー......めんどくせー‼︎‼︎‼︎やっぱり学校まで付き合ったらパンツ貰うしかない‼︎

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