麗華
「お前のためでもあるんだ」
病室の中、黒いスーツを着て茶色の髪を後ろに結んでいる男性。
「大丈夫か
ベットに寝ている女性は、
「音禰が
音禰の頬に手を添え、魔蛭は顔を近づけた。
「相思を始末したあと、必ず目を覚まさせてやるからな。それまで大人しく待っててくれ」
哀しく、掠れたような声で呟き。魔蛭は目を伏せ手を離し、その場から立ち上がった。影が差し、氷のように冷たい瞳を彼女に落とし病室から姿を消した。
病室に残った女性。音禰はずっと眠ったままの目から、透明な雫が一粒、頬を伝って流れた。
☆
「貴方達って、本当に双子?」
「「えっ?」」
学校の教室。昼休みの時間、女子生徒三人は机をくっつけ話しながらご飯を食べていた。
最初に口を開いた人は
双子なのか聞かれた二人のうち一人の名前は
もう一人は
「私達は双子だよ。何聞いてるの静空」
「私達見た目同じって言われ続けてきたんだよぉ? だから、わかりやすいように眼鏡だけ違う色にしたんだよ静空ちゃん」
最初に口を開いたのは姉の麗羅。それに便乗するように話したのは妹の麗華だ。
二人は麗華が言うように見た目はほとんど一緒。後ろから見たらどっちがどっちなのか分からないほど似ていた。そのため、先生や友達は何回か間違えて名前を呼んでいる。親でさえ時々間違えていた。
「確かに見た目は同じで、私も見分けがつきにくいけどさぁ、能力値というか……。見た目以外は全然似てないよね」
「そこは、まぁ。得意不得意があるから…………」
苦笑いを浮かべ、麗羅は隣に座る麗華をちらっと見た。
頭の良さでは姉の麗羅の方が良い。それに比べ、麗華は頭が悪くテストはいつも赤点ギリギリ。
逆に、運動能力は麗華の方が良い。麗羅は足が遅く、速く走ろうとするとすぐに転んでしまう。
「確かに見た目以外は正反対だよねぇ〜。私達」
「確かにね。でも、別にいいじゃない。それで見分けつけてよ」
マイペースな話し方をする麗華は、机に置いてあったチョコクッキーを一つ口の中に放り込んだ。同じく、麗羅もチョコクッキーを口の中に入れサクサクト音を鳴らしながら食べる。
「でも、双子でこんなに違うものなんだって思ってさ」
静空も二人と同じく、チョコクッキーを零さないように食べた。
「でもさぁ〜」
口の中の物を飲みこみ、静空が口を開こうとしたら、麗華の後ろに近づいてきた数人の男性が彼女に声をかけた。
「麗華ちゃん、俺達と一緒にバスケしねぇか?」
「あ、ほんとぉ〜? やるやる!! それじゃ麗羅、静空ちゃん。私行くねぇ〜」
男子生徒の誘いに乗り、一緒に教室を出ていった。これはいつもの事であるため、残された二人は何も言わずに見送った。
麗華は男子に人気がありモテていた。でも、誰とも付き合わず、友達関係で終わっている。
麗羅は男子生徒とはあまり話さずに、いつも静空と話していた。他の女子生徒とも話しはするが、すごく仲が良い訳ではない。空気を悪くしないように話す程度の関係だ。
「こんな事結構あるけど、麗羅はなんにも思わないの?」
「いつもの事だし、気にしないよ」
麗羅はチョコクッキーを食べながら言う。
「頭良い方がお得だと思うけどねぇ〜」
「その言い方はやめて……」
静空の言葉に顔を歪め、そんな麗羅に笑いながら。二人はいつも通り、たわいない話をして昼休みが終わった。
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