風が呼び 14
「条件?」
メリーは首をかしげて、ペルゥの小さな顔を見た。
「そう。それは、ボクと友達になることだよ」
「友達に?」
「友達に!」
ペルゥは、メリーの顔を見て、にっこりと笑ってみせた。
思いもしなかった条件に、メリーは不思議なものを見るような表情で呆けた。また、小さく首をかしげる。
「それだけでいいの……?」
「もちろん!」
メリーの肩の上にふわりと飛び乗って、ペルゥはまたにっこりと笑ってみせた。
つられて、メリーも表情をくずした。口の端を持ちあげて、笑い返す。そして、肩の上に乗っているペルゥの小さな前足を指先でつつくと、満面の笑顔でうなずいた。
「やったね!」
ペルゥはメリーの指先を、小さな前足で何度も叩いた。嬉しそうに跳ね上がり、くるくると彼女の周りを飛び回りはじめる。
その様子を隣で見ていたラトスは、心中複雑だった。
友達になったということは、ペルゥが、ラトスとメリーを身近で監視できる権利を得たということだ。ペルゥが最初に主張した、「早く帰ってほしい」ということに変わりはない。帰るまではずっと傍で見ているからねと、言っているに等しいのだ。
だが、メリーは、そう思っていない。一人、友達が増えただけだ。
そう思って、害がないのなら、わざわざ真意を教える必要はないだろう。気分が良いまま終われば、それに越したことはない。
「じゃあ、ボクが道案内をしてあげるよ。いいかい?」
ペルゥは、二人の周りを飛び回りながら言った。
やはりずっと付いてくるのだなと、ラトスは思った。だが、表情には出さなかった。それはペルゥの提案を喜んだメリーが、ラトスの顔をのぞいてきたからだ。彼は、少し眉をひそめたが、うなずくしかなかった。
「よろしくね! ペルゥ!」
「やったね! よろしくねー!」
メリーは、ペルゥの小さな前足を何度もつついて喜んでいた。
ラトスはそれを横目に、ペルゥの顔をのぞき込んだ。そして、先に聞きたいことがあると、にらむような目で言う。
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