第28話 風圧による擬似おっぱい


遅めの昼ご飯。

モールのフードコートで食事をする。

由香たちはバーガーのセットを注文。

僕と安藤さんだけカレーを注文。

安藤さんとカレーの列に並んでたときに質問された。


「前川くんはあの3人の中で本命は誰なの?」

「本命も何も誰とも付き合ってないし。告白してもないし、されてもないし」

「そうなの?普通に3股してるんだと思ったけど」


えっ。

僕の驚きの表情に、


「えー、気がついてないの?前川君は3股のハーレム王なんだよ。ブスッと刺されないようにね」

「ひどい。そんな風に思われてるのか。僕たちはただの友達さ。ちょっとだけ仲のいい友達同士だよ。めちゃくちゃ清い関係だよ」


僕は童貞だからセーフ。キスやおっぱいはセーフ。のはず。


「じゃあ、勘違いしているクラスメイトがいたら私が説明しておくよ」

「おぉ、ありがとう。そうだ、カレーのトッピングチーズは僕が驕るよ」


そんな会話があった。

席に戻ってお食事タイム。

味は、まぁ、うん、あれだ。


「午後はどうしますか?もうお店はまわっちゃったよね」


松木さんが午後の予定を聞いてきた。

リーダー遙は、

 

「買い物行きたい人は自由行動で。あとは敷地内にある遊園地みたいなのに行きたいと思います!」


ここのアウトレットモールには、観覧車やジェットコースターが併設されている。

午後は遊園地で遊ぶことになった。




ジェットコースターって面白いよね。

加速するときのGがたまらなく好き。

前に聞いた話だが、時速80キロの車の窓から手をだした時に、感じる空気抵抗がおっぱいの感触と一緒らしい。

つまりだ。ジェットコースターに乗れば、僕は顔面全体でおっぱいを感じることができるってことだ。

何十秒間ずっとおっぱいを感じられるなんてすごい乗り物だ。

この乗り物を最初に考えた人に焼肉をおごりたい。

隣の席に座った由香を見ながらニヤニヤしてたら、


「またくだらないことを考えているんでしょう」

「別に考えてないよ。これから感じる風が楽しみなだけ」

「こないだ没収した本に載っていた、時速80キロってやつでしょ」

  

由香、お前はエロ本を全部読んだのか。

 

「由香と比べてみる」

「本当にバカね。あとで遙と真紀にも報告する。エッチな本のくだらない記事を真に受けるバカがいるって」


自然の力をなめるな。

信じる者は救われるんだ。


ゆっくりコースターが坂を上がる。

けっこう高いところまで上がるんだな。

下にいる人たちがゴミのようだ。

頂上に着いたコースターはゆっくり進む。

そして急降下!


「うおぉぉ、これが擬似おっぱいぃぃ」


全然柔らかくないぞ。

違う、全然違う。


「バカなこと叫ばない!」

 

わき腹にパンチが突き刺さる。


「だまされたぁぁ」


 


コースターが発着所に到着する。

安全バーが上がり、コースターを下りた。

僕は騙されたショックで足元がふらふらだ。


松木さんが安藤さんと話してる。

誰かがおっぱいと叫んでいたと。

なにそれ、こわーいと笑っているが、僕は笑えない。

エロ本の会社にクレームの電話しようかな。

柔らかさを感じないのでおっぱいではありませんと。

由香はさっそく擬似おっぱいの話を遙と真紀にしている


「真尋くんはバカだね。知ってたけどやっぱりバかだね。風圧なんておっぱいになるわけないじゃん。由香と真紀のおっぱいをよく知る私は騙されないよ」


遙のおっぱいは持てないからな。由香や真紀とは勝手が違うだろう。でも好き。


「僕は騙された。ショックでご飯が食べられないレベル」

「くだらない記事に踊らされてちょーうける」

「僕は諦めないぞ。車の免許取ったらもう一度試してみる」


そうだ、一度の失敗で諦められるか。


「真紀のおっぱいでも揉んだら?真尋くんが頼めば揉ましてくれるかも」

「おーい、真紀さんや。ちょっとおっぱい揉んでいいかい?」


本当に頼むなと遥にタックルされた。お前が言い出したのに。

真紀も両手でおっぱいを持ち上げながらニコニコするな。

おあずけくらう僕に謝れ。




コースターの次は、ショッピングモール外縁をまわるミニチュア機関車に乗った。

2人掛けのイスに真紀と並んで乗る。

子供向けのアトラクションだが十分楽しい。

見える景色は買い物してる人たちだ。ちょっとシュールだけどね。

 

機関車の最後部の席だったので隙をみては真紀がキスしてくる。

前にいる由香や遙にばれないようにして。

最後のほうはスマホでキス写真を撮ってたし。

真紀は少し頭がおかしいのかもしれない。

 

「あとでその写真メールして。保存しておく」

「由香にスマホ見られてバレるよ」

「ロックしてあるから平気」

「暗証番号が誕生日だって由香にばれてるよ」

「なん……だと。……ってゆーかなんでそれを真紀が知ってる」

「由香に聞いたから」


僕のプライバシーは何処にいったのだろうか。

あ、由香の寝顔をスマホで撮ったコレクションもばれてるの?

あわててスマホを確認。

アルバムの寝顔フォルダにあった由香の寝顔写真が、なぜか僕の寝顔写真に替わっていた。

自分の寝顔写真なんていらない。そっとフォルダを削除した。

 


 

コーヒーカップの乗り物がある。

子供から大人まで楽しめるあれだ。

ただ、僕は楽しめない。

三半規管が弱い僕がのったら大惨事になる。

そして、こういう乗り物は遙と乗ってはいけない。


「うぎゃぁあぁぁ、もうゆるしてーーーーーーー!」


松木さんの叫び声が響く。

遙が調子に乗って全力でカップを回転させているからだ。

安藤さんも目が逝ってる。

 

「本当に乗らなくてよかったよ。乗ってたら大惨事になってた。遙が笑顔だったから絶対に乗ってはいけないと思ったんだ」

「まーくんの勘を信じてよかった」


安藤さんはすでに死んでる。カップの停止しても、自力で動けない安藤さん。僕が背負いベンチまで移動した

 

「いやー、楽しくて調子にのっちゃったよ。どこまで回せるか自分の限界に挑戦したくなってね。ゴメンちょ」


松木さんと安藤さんに謝れ。

ベンチに座り込む松木さんと、死体のような安藤さん。

そんなの見ると悪戯したくなるじゃないか。


安藤さんのほっぺをつついてみる。

びくってなった。可愛い。

 

「安藤さん、コーラでも飲む?飲ませてあげようか?」


手を両手でそっと握り安藤さんを見つめた。


「ありがとう。でも自分で飲めるよ。あと、後ろを見てね」


ん?ゆっくり振り返る。

あー、蔑んだ目を僕に向ける由香がいた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る