第32話 突発レクリエーション

 ロックタワーを横倒しにして発動して魔力で橋に加工して、戻って家と防壁を用意したら回復しつつあった魔力をまた使い切った。

 今はかつて3メートルだった凶熊が1、6メートルになって地面に横たわってうーうー言ってます。

 ヴェルカさん慣れてるからそこまで辛くないので、頭撫で撫でしないでいいですからね?

 ゼオラさんソワソワしてないで、そこまで撫でたいなら撫でてもいいですよ?

 お姉さん2人の手で(凶熊の体毛をだけど)弄ばれちゃってるぅー、なんで考えながら動く気力もなくタレていた。

 タレ凶熊、危険なのかそうでないのかわからんな。


 しばらくそうしているとレオーナ率いる集団がやって来たのでゼオラ達も含めて全員、男女別の家に入れて家ごと倉庫に収納した。

 ノタノタと休憩所まで帰って中を確認して無人だったからダンジョンへ。

 ダンジョンワープを使い順に上がっていくと7階でエルネシアとネネの反応があった。

 久しぶりに探索者に2人の反応があり嬉しくなって、モンスターを瞬殺殲滅しながら追いかけていった。


「おーい2人共、そろそろ夕方だから帰って飯にするべよな」

「いやもう、その変な口調や語尾にはツッコミませんけどね」

「でも、まだ全然みんなの食べる分は集まってないの、どうしよっか」


 エルネシアとネネ、愛する恋人と合流して軽い冗談を交わす。


「あいつ等は全員倉庫だから食事も住居もまだ不要で大丈夫。今日はな久しぶりに2人の事を抱いて寝たいって思ってな」

「もう、随分積極的なんですね、どうしたんですか?」

「なに、久しぶりで溜まってんのと愛おしさが膨らみまくっててなあーーーちょっ、なに!?」


 話しの途中で2人に詰め寄られ左右の手を握手状態て握られ、顔をギリギリまで近付けられる。


「シバ君一生に1度のお願い、今すぐ私達と家に帰ってレオーナさん達4人と話しをさせて、緊急事態なの!! お願い聞いてくれなきゃなんて言わない、私だって別れたくないもの、でもこのお願いだけはどうしても聞いてもらわなきゃダメなのよ!?」

「そうです、私からもお願いです、お願いします、一生のお願いですから!」

「2人のお願いなら一生のとか使わなくても聞くから、今後のために一生のお願いは取っとけって」


 相変わらずこの2人は俺の夜の相手がハードだっていう冗談が好きなんだな、そんな所も変わってなくていいな。

 だいたいいくら青春真っ盛りの中学生だからって、成人女性と少女の2人を毎晩ノックダウンさせ続けるなんてできるわけがない。

 だからあれは睡眠時間を確保したい2人の演技なんだってはっきりわかんだね。

 それでも俺は彼氏だからな、度量を見せるためにも2人の要求には極力答えようとは思っている。

 ダンジョンワープを使い外に出ると休憩所に入ってレオーナ、アマルディア、ゼオラ、ヴェルカの4人を倉庫から出しす。


「うん? なっ、皆が消えた!」


 レオーナ達が驚愕と困惑し発見した俺へと詰め寄ってくる。


「あーはいはい、話す全部話すから、そっちも離せ、恋人でもない女に迫られて浮気を疑われると困る」


 折れの肩から手を離したレオーナは僅かに視線を下げて落ち込んだように見えた。

 なんだ? まあ、いいか。


「お前は自分が美女だと自覚しろ、美人の恋人が2人も居る少年だとしても、首から下を見ないようにするのも下半身が反応しないように我慢するのも大変なんだからさ」


 倉庫から絹糸を取り出して魔力で布に、布から服へと加工していく。

 エルネシア、ネネ、見た目で測ったレオーナ達4人それぞれのサイズで、半袖ミニスカート丈の白のワンピースを作って順番に渡していく。


「エルネシアとネネには恋人としてプレゼントを、そっちの4人は目に毒だから隠すように渡しとくから着てくれ」


 言い方が悪かったのかエルネシアとネネも着替え始めたので慌てて後ろを向く。

 室内の箱に食料を満たして外へと逃げる。


「ちょっと足りないものがあるからダンジョンで取ってくるわ、その間に状況説明とか料理とか諸々よろしくっ」


 全裸で堂々とされてると平気だけど、脱衣や着衣シーンに入ると急に見てるのが恥ずかしくなってくるっていうあれね。

 勇者は女人達の着替えから逃げ出した。


 △△▽▽◁▷◁▷


 ダンジョンワープで17階に移動してから変身して8つ足で走り出す。


 ドウゾウ 銅の象。


「……相変わらずここのネーミングセンスは……」


 ドロップアイテムは銅、すず、鉛だった。


「これで調理道具なり一部の家具なんかが作れるぞ!!」


 思わぬ良ドロップアイテムに歓喜し、鏖殺しようかと思ったが少し考えた。

 17階でも通常攻撃で一撃なら、もっと上のもっと良いドロップアイテムも狙えるんじゃね?

 欲望に取り憑かれた俺が正気に戻って休憩所に帰らなきゃと戦慄したのは、疲労度から考えて4日も経ってからだった。


 △△▽▽◁▷◁▷


「お帰りなさいシバさん、何か弁明があればお聞きしますが」

「ありませんが、お詫びの印にこちらをお納めください」


 帰ったらエルネシアがやって来て仁王立ちして怒ってますアピールしてきたので、素直に土下座して倉庫からミスリルの騎士甲冑一式と盾と剣の騎士セットを目前に出した。


「こっ、これは!」

「ダンジョンでドロップしたミスリルから作った装備でございます、ネネさんにはこちらを」


 ネネにはミスリルロッドとローブ、もしかしたらローブじゃなくてワンピースとマントかもしれないと、ワンピースとマントも差し出した。

 ミスリルを糸にするのにかなり苦労したし、失敗したりで純正ミスリルの在庫はなくなってしまった。


「この装備に免じて今回の、久々に会えた恋人を放置してダンジョンに浮気してるんじゃ疑惑はなかった事にします」

「エルちゃんが良いなら私もそれで良いわよ。元々ほっとかれたってスネでのもエルちゃんだけだったし、私は貰い特ね」

「ネネさん、内緒にしてくださいって言ったじゃないですか!」

「この事については言われてないわよ? あの事は言われたから黙ってるけどね」

「えっ?」


 エルネシアが歴戦の勇士達の方へ振り向くと、アマルディア以外の3人が頷いている。

 アマルディアは興味なさそうにボーッっとしていた。


 許されたので立ち上がってみると箱の中の食料は8割方消費しているようなので、結構ギリギリまでダンジョンでの冒険に夢中になっていたらしい。

 お詫びにダンジョンの幸をふんだんに使った料理を提供しよう。


 背後に女性陣の姦しい会話を聞きながら、1人寂しく麺棒を振るうのだった。


 △△▽▽◁▷◁▷


 作ったのはカレーうどん。

 浄化があるから汁跳ねも気にしなくていいが、絹の食事用エプロンも用意してある。

 6階の稲ん天が落とす小麦を魔力で加工して粉にするところから始まって。


「お手伝いします」


 隣を見るとヴェルカが声をかけてきていた。

 それに気付いたエルネシア達も参加すると言い始めたので。


「わかった、じゃあみんなでやろうか」


 居岩で部屋の中央に広いテーブルを作り材料を出して一緒にうどんを作っていく。

 1番の見どころは革の水袋に入れたうどんを踏む行程で、揺れる……いや弾ける果実や、翻る裾から見えるハムストリングスや縦のラインに目が釘付けになってしまった。


 42階のゴリラッキョウからドロップするカレールウを使用して鶏肉で取った出汁に混ぜてうどんつゆを完成させる。

 熱操作も使い寝かせていたうどんを麺棒で伸ばして切ってとワイワイしながら作っていく。


 エルネシアは生地作りから不器用全開で(うん知ってた)、ネネに後ろから抱きつかれるような形で協力してもらっている。


 レオーナ、アマルディアは料理をした経験がないようでヴェルカに見本を見せてもらいながら作っている。


「料理というのも楽しいものだな、このような経験は初めてでなかなかに興味深い」

「作るより食べる方が楽しみ、だけどみんなと一緒にするの楽しい」

「ふふふ、このような催し里を出て以来か、忘れていたが確かに共同作業というのは楽しいものだったのだな」


 当のヴェルカは3人の手伝いを優先して自分のうどん作りが疎かになっている。

 ネネを見ても付きっきりで手が空いてないので、ヴェルカの作業を少し代わりに進めておく。

 粉振って伸ばしてー……続きを教えておくれよ職業料理人。

 そうか、シュレッダーみたいな製麺機を作れば良いのか。

 手早く自分のうどんを作り終えると、道具職人と料理人の導く感覚に従い手回し製麺機を作っていった。


 △△▽▽◁▷◁▷


 俺を含めて全員がうどん作りが初めてなので、うどんのできあがりば散々だった。

 それはもう、途中でブツブツと切れる切れる。

 なのにカレースープは美味いとあって、食卓は大盛り上がりを見せた。


「スープはおいしいのに麺は……」

「エルちゃん半分交換しよっか」


「美味い、これは香辛料を複雑に配合したものを贅沢にもスープにしたのか」

「美味しい、それで十分」

「エルフは香辛料が苦手な者が多いが、これは辛さが押さえられ、まろやかに仕上げられているゆえ、我等からも好んで食す者が出てくるであろうな」

「みんなで作ったお料理は、やっぱり美味しいですね」


 食事は調理から後片付けまで、終始和やかな雰囲気だった。

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