第77話 自責と贖罪

ふらふらしながらマンションの部屋に帰ると、みどりが急いで駆け寄ってきた。


心配そうにしている。


自分はそんなみどりに構わず背広姿のままベッドにつっぷした。


まだ天井がぐるぐるする。


「・・・はぁ・・はぁ・・」


自分でも息づかいが少し荒いのがわかる。


吐き気がするが、もう胃に吐くものはなにもない。


暗い部屋の中、天井を見上げながら今の自分を天罰だと思う。


さらに自分の心を暗くしているのは、みどりのやさしさである。


自分を恨んでいるのなら、その言葉を吐けばいい。


自分を蔑んでいるなら、この家を出て行くといい。


まだ正式な籍はいれていなし、みどりの歳は21か22だろう、何よりあれだけの美貌と教養だ、何を好きこのんでこの銀次郎といる必要がある。


自分が暗い部屋であおむけに寝ていると、みどりが入ってきた。


「・・背広、とるから・・」


彼女は自分を起こして背広をやさしくとった。


そのあと彼女は、冷たくゆすいだタオルで、自分の顔を丹念に拭った。


自分はみどりを抱きしめて、押し倒した。


以前みどりは言った


”銀次郎はみどりを否定しない、いつもやさしく見守ってくれる”


じゃあその正反対をやればいい。


自分はみどりの両腕をつかみ上半身をベッドに押さえつけた。


次に出た言葉はこうだった


「・・みどり・・今日も俺がY子を抱いたの・・知ってるんだろ・・」


彼女は、自分から目を背け、暗がりで横を向いている。


「・・・。」


「・・・言えばいいんだよ、唾を吐いたらいいんだよ、『お前は最低な男だ!』って。」


「・・・。」


自分は彼女のシャツを広げ、下着を上に強引にあげた。


その瞬間、形のいい白い肌の二つの丘が揺れながら表れた。


そのときにみどりは何かいった。


「・・え?」


と聞いてみた。


「・・・嫌いになろうとしてる・・でも無理・・。」


その声はか細く、下唇を噛んでいた。


「・・・嫌いになれたほうが、どれだけ幸せかわからない・・でもダメ。」


「・・俺に同情してるのか?」


彼女の双眸に涙があふれた


「・・同情なんかじゃない・・あなたが大好き・・・」


彼女は震えながら、下唇を噛みながらそういった。


「・・大好きなの・・大好きなの・・。」


自分はその言葉を聞いたとたん、彼女とベッドから離れて、ドスンとベッドを背にして尻餅をついた。


ただ闇を見て呆然としていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る