第5章 危機管理 第5話
与えられた条件の中で、最善を尽くし、その結果を判断して翌年の対策に生かすための捨て石となる覚悟で引き受けるしかない。
しかし、準備を進めていくと、結局最初に懸念した部分が顕在化してくる。
「地元狩猟者から苦情があり、彼らを従事者として加えることになりました」
突然の電話での連絡で、事前の調整などはなにもない。
さらに、次の日には、
「周辺自治体への案内を出すので、その文案を早急に考えて送って欲しい」
「公園利用者用に入り口に掲示する看板は作成してありますが、周辺住民への告知は、必要ないとのことだったのでは」
と言ったところで、
「必要だから」
となる。
またペットの埋葬業者に連絡を入れると、「一頭当たりの処理料は、三万五千円」だという。
担当者に連絡すると、「一頭三千円は、自治体が委託した場合の金額で、業者からの持ち込みは三万五千円です」となる。
予算作りの段階で、確認していただけに、この金額では事業が成り立たなくなってしまう。
そうなると発注者側も困るので、ようやく作戦の見直しが始まる。
しかし、その解決案などはいつになっても出てこない。
「公園内にシカがいないという状況を作るのが目的なら、捕獲の予算をすべて柵に回せば単年度で確実に解決できます」
と現場状況を確認したうえでの再提案をしても、
「できる限りの捕獲を」
となってしまう。
結局は、別の処理業者を受注者側で探し、一ヶ月遅れでようやく捕獲がはじめられる準備して、現地にワナ設置に行くと、その現場で
「処理業者が適切な施設をもっているか確認できていないので、今日の作業は中止してくれ」
という信じられないような対応にあう。
「処理業者の確認が取れたので、作業を開始して構わない」
と連絡がきたのは、年末もクリスマスを過ぎた頃だ。
「年末・年始は、処理業者の都合もあるので、年明けから作業を行います」
と答えれば、
「年末の業者の休業まで二日あるから、ワナの設置を実施してくれ」
と言われる。
「設置しても、直ぐにワナにシカが掛かるものではないし、業者の休みの関係もあるので明日設置しても明後日にはワナの解除をすることになりますから、年明けからの開始させてください」
と提案しても、
「一日でも良いから設置を」
となる。
ようやく諦めてもらったが、発注者側には不満が残ってしまう。
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