第3章 入学 第8話
「どうして、その人はスキートの練習をしろっていうのでしょう」
「そうだな、俺も最初はどうせシカを撃つのだからスラッグ射撃で十分だろうって思っていた。でも、その人の話を聞くと、やはりスキート射撃しかないなぁとも思える。
まず、走っているシカを撃つときには、リードといって、シカの前を撃つ、『見越し』をとらないと当たらないっていうのは、お前たちもわかるよな」
「はい。教習射撃の時に射撃指導員の人から説明してもらいました。弾が獲物に命中するまでには若干の時間が必要で、その間にも獲物は走っているわけだから、その前を狙わないと当たらないって」
「そうだよな。それからトラップでは、銃を肩につけてからコールしてクレーを撃つだろう。
スキートは、ガンポジションっていって銃を肩から下に下げたところからクレーにあわせて銃を構えるだろ。
山では、トラップのような射撃ってあまりすることはないし、銃を構える動作を練習できるスキートの方が実際の猟野に向いているっていうところかな」
「そうか。銃を構える動作の違いがトラップとスキートにはあるんだな。教習射撃はトラップだったから、最初から銃を肩に付けていたから、あまり深く考えたことはなかったな」
「俺も。確かに最初にシカを撃って外したとき、銃をしっかり構えられなかったのが原因だったから、大事だよな」
「そうだな。その銃を構える動作のことを『拳銃(けんじゅう)』って書いて、挙銃(きょじゅう)って言うんだけれど、昔鳥撃ちをしていた人たちは、それが上手なんだ。
それに、見越しをとった射撃にも慣れているから、シカを撃たせても上手いんだよ。俺みたいに、大物猟からはじめた狩猟者は、なかなか獲物の前を撃てなくて、悔しい思いばかりさ」
「そうなんですか。鳥撃ちの経験者って、大物猟をやっても上手なんですね」
「あぁ、山もよく知っているし、年齢の割には脚も強い。それに射撃が上手いとくれば、獲物は獲れるよ」
「そうですね。俺たちも練習して上手くなりたいなぁ・・・」
「そうだな。ほぼスタートラインは一緒だから、誰が早く上手くなるか競うのもいいかも」
「まぁ、お金は掛かるから、その覚悟はしておいた方がいいな。でも、スラッグ射撃で練習することを考えれば、スキートの方が安いし、合理的な練習ができるわけだから、早く上手くなるにもスキートの方が優れているだろうな」
「えっ、どういうことですか」
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