第3章 入学 第3話

 編入学式が終了して、教室に戻ると、さっそくお互いの共通の関心事項で話がはじまった。


「なぁ、この中じゃ俺が一番早く鉄砲のライセンスを所持したわけだな。ということで、お前たちより、ちょっとは先輩ってわけだ。しかも、獲物も撃ったことがあるしな」


「そうだな。でも、その差はほんのちょっとだよ」


「柴田と後田は、アウトドアサークルのある大学でも同級生だったんだろ。柴田は、なんでサークルに入ってライセンスを取らなかったんだよ」


「う~ん、なんとなくというか、今考えると食わず嫌いだったかな。今年は間にあわなかったけれど、後田と一緒に巻き狩りも見学したし、自分でももっと早く取得しておけば良かったとは思っている。そうすれば、こいつに先輩面されなかったしなぁ」


「なんだよ。ちょっと言ってみただけじゃんか。俺の経験なんて、どうせペラペラだよ」


「松山は、親父さんと狩猟に行ったことがあるんだろう」


「あぁ、小さい頃から何度も連れて行ってもらった。だけど、あまり獲物が獲れたっていう記憶がない・・・。


 前は南関東の県に狩猟者登録して猟に行ってたけれど、最近は北関東の県に狩猟者登録していて、そこの大物グループでイノシシ撃ちをしている。


 でも、どちらかというと自分で撃って仕留めるっていうよりも、肉をもらって帰ってくるって感じかな。それでも、最近は射撃に入れ込んでいて、毎月練習しているらしい」


「そっかぁ。親父さんも練習しないとダメだってわかったんだろうな」


「そうかもな。元々職人だから、そのあたりのことは俺なんかよりも良くわかっていると思う。


 これまで、しっかり教えてもらえる人がいなかったらしいけれど、今度の大物グループに射撃が上手い人がいるらしく、その人に教わっているらしい。俺にも一緒にこないかって最近では言ってる」


「そうかぁ。俺たちも練習しないとだな。だけど、俺たちの練習を指導してくれる先生ってこの学校にいるのかなぁ」


「一、二年生の授業では、射撃をやっているっていう先生は、いなかった。でも、「野生鳥獣管理コース」は別名「ハンター養成コース」っていうくらいだから、そのあたりは手配しているんじゃないかなぁ」


「みんな良いなぁ・・・。私、まだ銃を所持できていないからなぁ。置いてきぼりになっちゃいそう」


「そんなの直ぐだよ。俺も柴山も銃は銃砲店保管だし、あまり練習もしてないよ」


「その点、松山は親父さんも狩猟者だし、この学校の学生だったのだから、俺たちよりずっと進んでいるんじゃね」


「いや、俺だって免許取り立てのペーパーだよ」

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