第2章 迷走 第39話

 まずは、どの部署に行ったら良いのかすら分からないし、何を聞きに行けば良いのかも分からない。


 何しろ、図書館や本屋に行っても銃砲所持許可証の取得方法を説明したものなどまったく手に入らないのだ。


 インターネットで検索すると、いくつかのサイトがヒットするが、文字で書かれたものからだけでは、微妙なニュアンスがつかめなかった。


 後田のアドバイスは、文字にはかかれていない部分であり、経験者が語る内容はインターネット上でみる情報以上に役立った。


「最初にさぁ、俺が警察の生活安全課に行ったら、『少年課はとなりだよ』なんて言われてさ、『銃砲の初心者講習の申し込みに来たんですが』って言ったら、『えぇ~、銃なんか取ってどうするの。やめといたら』なんて言われてさ、すげぇ気分悪かった。


 まぁ、俺も先輩から、『警察からは諦めなさいみたいなことを言われるかも知れないけど、キレたりせずにきちんと申し込むように』って言われていたから大丈夫だったけれど、知らなかったらまじキレてたかも」


 後田の話は、柴田の場合にも大いに役立った。


「若いのに危ないよ」なんて言われた時には、思わず「何が危ないんですか。俺が銀行強盗でもするっていうのですか」って突っ込みを入れたくなってしまったが、グッと飲み込むことができた。


 こうして初心者講習の申し込みを無事に済ませた段階で、「猟銃の取り扱いの知識と実際」というテキストを渡された。それを見た第一印象は、「これが本屋に置いてあればいいのに」というものだった。


 狩猟免許試験の時もそうだった。狩猟免許試験を申し込んだら「狩猟読本」というテキストをもらったが、「これがなんで本屋に置いてないんだ」という思いがあった。


 狩猟にしろ銃砲の所持許可にしろ、その入り口で参考となる資料が容易に入手できないことは、狩猟で後継者育成が上手くいかなかった一因かも知れない。


 警察本部で開催された初心者講習では、十五人の受講者がいた。最初に担当者からの講義があって、その後に試験を行うということで、狩猟免許の出前試験と同じだなと思ったが、終わってみると半分に近い七人が不合格となっていた。


 四者択一式の試験(最近では、○×式に変更となっている)であったが、『失効』と『取り消し』など、法律の部分で悩む問題が多かった。


 ここでも、後田のアドバイスが効いた。こんな問題が出たという情報は、まさに試験対策には特効薬だろう。

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