第2章 迷走 第38話
柴山の銃砲所持許可取得は、後田のアドバイスもあって順調に進んだ。
アパートの大家さんの了解が必要だというアドバイスは、重要だった。アウトドアサークルの学生が、銃砲所持許可を取得しようとしたところ、アパートの賃貸契約書の中に「銃を置くことを禁ずる」という一文があって、結局アパートそのものを引っ越すことになったということがあったらしい。
思い返せば、後田が銃を所持する時の警察官の質問に答えたのは柴山自身だった。その後、大家さんとのやりとりもあって、銃は銃砲店に預けることで所持することになったわけであるが、今度は柴山がそれを経験することになるのだ。
そもそも銃の保管には専用のロッカーが必要であり、盗難を防止するために、警察庁でその基準を定めている。
例えば、
イ 堅固な金属製ロッカーその他これと同等程度に堅固な構造を有するものであること。
ロ 確実に施錠できる錠を備えていること。
ハ 管理上支障のない場所にあること。
ニ 容易に持ち運びができないこと。
などである。
容易に持ち運びができないように、壁や柱などにネジ留めするように指導されているが、賃貸契約のアパートでは経年劣化とは異なり、そもそも目的を持って穴を作るなんて、確かに大家側としては断りたくもなる。
事情を説明に行くと、最初は渋い顔をされたが、後田の件もあり、普段は銃砲店に保管を依託するということで、了解を得ることができた。
住所変更の手続きを区役所で済ませ、住所地となった警察署に行く段階になったときにも、後田のアドバイスはありがたかった。
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